おはようございます。
9月に入ってすぐだと言うのに、いろいろありますね・・・。
錦織圭くん、負けちゃうし・・・ま、昨日は、お休みしまして、ご迷惑をおかけしました。
さて、その時、僕が事務所に出社してくると、御島さん(31)を始めとしたスタッフ達が大部屋で、
談笑していました。
「あら、ゆるちょくん。今日のブログはお休みにしたの?」
と、御島さん。
「いやいや。昨日、エンブレム問題で、あれだけ、盛り上がって皆で話していて、結局、お酒も大分過ごして」
「・・・あの状況じゃあ、言いたい事があり過ぎて、話を整理しなければいけないと思って・・・」
「それで一日、置くことにしたんですよ。事態の推移も見守りたかったし・・・」
と、僕。
・・・と、そこへ、イケメン貴島くん(29)、若い池澤くん(24)、辛辣姫ユキちゃん(28)が出社してきました。
「昨日は、少し飲み過ぎましたかね・・・にしても、美味しい楽しいお酒でしたけど」
と、貴島くん。
「少し、昨日の話、整理したいところですね」
と、ユキちゃん。
「僕はやっぱり、今回の佐野研二郎氏の対応に不満があったな・・・」
と、池澤くんは話している。
「よーし、その話、わたし達的に整理しちゃおうか」
と、御島さんが立ち上がり、皆を見回した。
「ゆるちょくん。今回の話、わかりやすく結論から、入ってくれる?その方がまず、すっきりするでしょう?」
と、御島さん。
「はい。要はこの話、「オリンピックエンブレムは盗用か?」と言う問題と」
「「佐野研二郎氏とそのデザイン事務所はそもそも信用出来るのか?」と言う二つの疑問が日本国民の間で、盛り上がった」
「と言う話です。そして、今回の話で新たにわかった事は、オリンピックエンブレムは、オリンピック委員会の所有物と言う」
「だけでなく、国民が納得するエンブレムでなければ、そもそも、成り立たない・・・と言う一番大事にしなければいけない」
「条件が新たに見つかったと言う事です」
と、僕。
「なるほど、論点は、3つ、と言う事ね。「エンブレム盗用問題」「佐野デザイン事務所の信用問題」そして、一番大きいのが」
「「オリンピックエンブレムは国民が納得するモノでなければならない・・・と言う条件」ね」
と、御島さん。
「そうです。で、簡単に言えば、「エンブレム盗用問題」はお話にもならない程、相手のデザインの世界観がすっかすっかで」
「佐野研二郎氏のデザインは、魅力に溢れた世界観を持っていた・・・このあたりは、以前問題にした時に考察した通りです」
「ですから、この問題は、すでに解決済みでした」
と、僕。
「で、新たに浮上した疑念・・・「佐野デザイン事務所の信用問題」・・・この件、実は我らが御島さんは当初から指摘していました」
「御島さんは、「外国では、作品とその作者は関係無いとしている。しかし、この日本では作品は作者の分身とも言えるし」
「作者に信用が置けなければ、作品もまた、評価されない」と言うような事を当初から指摘していたんです」
「今回、その件について「作者の「佐野デザイン事務所の信用問題」において、国民の信用が著しく失墜したので」」
「「オリンピックエンブレムを撤回する」と言う結論に至ったんです・・・これが結論です」
と、僕。
「なるほど・・・ゆるちょくんは、相変わらず、わかりやすいわね。盗作問題はクリアしたけど、作者側の信用問題で」
「アウトと指摘され・・・オリンピックエンブレムは、使用禁止となった・・・ま、公式エンブレム発表から一ヶ月と言う」
「この時期をどう見るか・・・なんだけど、まあ、わたしは、その評価はどうでもいい。むしろ、この問題でイニシアティブを」
「取るべき、日本オリンピック委員会が、世論を読み違えた・・・エンブレムを国民の納得出来るモノにすると言う意識が」
「最初から、欠けていた事が問題だったと思うわ」
と、御島さん。
「まあ、その各論に入るのは、経緯を多岐川に説明してもらってからにしましょう」
「多岐川、経緯のトレースは出来ているだろ?」
と、貴島くん。
「ええ。トレースですね。出来てますよ」
と、ユキちゃん。
「まず、ゆるちょさんが説明してくれた「オリンピックエンブレム盗作問題」ですが、佐野研二郎氏が直々に出てきて」
「説明会を開いて、質問にも答えた・・・ここで本来終わっていたはずなんです。ゆるちょさんも、一旦そこで結論を出しています」
「しかし、オリンピックには様々な立場の人間がいます。直接利害関係のある、スポンサーの方たちです」
「聞いた話では、その時点で、オリンピックエンブレムを使うのに難ありと示した会社が当然存在したらしいです」
と、ユキちゃん。
「そりゃあ、当たり前だ。日本人はケチのついたモノをそのまま、使うのを嫌がる。一旦穢れたら・・・禊が必要だと考えるのが」
「日本文化だ。本来、今回のオリンピックエンブレムの穢れは・・・佐野研二郎氏の質疑応答で、禊となるはずだったんだが・・・」
と、僕。
「僕は、ゆるちょさんみたいに、物事の裏側に隠された理由すら、言葉に出来る人間ではありません。正直、ゆるちょさんの」
「解説が無かったら、本件、全然理解出来ていないと思います。つまり、佐野研二郎氏の説明は、自己を守る事に終始し」
「一般の国民の理解を得るには、遠いクオリティのモノだったと僕は、思います」
と、池澤くん。
「ほう。池澤、なかなかいい所を突いているじゃないか。僕もそう思います。だから、国民にとって、禊にはなっていない」
「だから、スポンサーは、このエンブレムを使うのに難ありだったんですよ」
と、貴島くん。
「そういう事だ。だから、スポンサーも当然しっくり行っていない・・・結果、日本文化としては当然の事ながら」
「佐野研二郎氏の素性を洗う事になった。この人間は、実際に信用していい人間なのか、どうか・・・」
「日本国民がそういう意識になった瞬間、佐野研二郎氏の過去の仕事を洗う作業が始まった・・・当然の成り行きだ」
と、僕。
「そこで、問題になったのが、例の「トートバッグ」問題です」
と、ユキちゃん。
「わたしね。この事件が、今回のエンブレム問題の分水嶺になったと思うの。この事件が起きなければ、佐野研二郎氏に対する」
「国民の目はやさしいまま、推移していったはずなのよ・・・」
と、御島さん。
「トートバッグ問題で明らかになったのは、佐野研二郎氏配下のデザイナー達が他のデザイナーの作品をトレースしていたと言う事実。盗用そのものです」
「・・・と、それに対する、佐野研二郎氏の意識があまりに低かったことも、同時に明らかになりました・・・」
と、ユキちゃん。
「そうなの。この事件に対する佐野研二郎氏の意識の低さ・・・配下のデザイナーが他のデザイナーの作品をトレースする」
「つまり完全なる盗用を行っていて・・・それを知らなかったで済ます意識・・・これが日本国民の佐野研二郎氏に対する」
「意識を逆転させる・・・そういう要素になったとわたしは、思う」
と、御島さん。
「わたしだって、これでも、フリーのクリエイター達をまとめる事務所の社長よ。コンプライアンスは、最も重要に考えている」
「ひとつだわ。ここ15年の日本の企業の意識の流れでも、社員の起こす不祥事に対する意識はものすごく高いわ」
「だから、コンプライアンスの強化は、ここ15年、ずーーーっと言われてきている。だからこそ、わたしは」
「「クリエイターだからこそ、クリエイティブな仕事を大事にし、オリジナルである事を絶対に守ってください」と」
「皆に常に言ってきたわよね?」
と、御島さん。
「ええ。そうですね」
と、僕。
「クリエイターがオリジナリティを失ったら、ううん、それ以上にひとの作品をパクったら、その時点で」
「そのクリエイターは、仕事を辞めるべき、廃業すべきだとわたしは、思っている。それはクリエイターだったら」
「誰でもそういう思いを持っているんじゃないかしら?それがクリエイターとしての挟持だし、尊厳でしょ?」
「クリエイターとしての存在価値そのものでしょ?」
と、御島さん。
「はい。そうですね」
と、ユキちゃん。
「・・・そういうクリエイターとしての強い思いをわたしは、あのトレース事件の時に、佐野研二郎氏から感じなかった」
「まるで「間違えました。あ、すいませんでした。だめだった作品、取り下げまーす」くらいの反応でしかなかったんだもの」
「もう、コンプライアンスどころの話じゃなくて・・・なんか、あまりに考えている事のレベルが低すぎて、笑っちゃったわ」
「日本人としての完全なる信用の失墜・・・「あ、この人、本気で対応すべき人間じゃ、なかったんだわ・・・」って」
「あの時、わたしは彼を見放したの・・・」
と、御島さん。
「日本の国民も、御島さんと同じように思ったんでしょうね。あるいは佐野氏が、もうビビっていて、対応を誤ったか」
と、貴島くん。
「僕はあのトレース事件の後にこそ、佐野氏は、謝罪会見及び、質問対応の時間を取るべきだったと思いますよ」
「今回、スタッフを守るためにも・・・エンブレムを取り下げたみたいな話になっていますけど、そういう意味じゃ」
「なんでも、取り下げりゃあ、それでいいと思っているんですかね。トレースして、佐野さんの事務所に迷惑かけたスタッフも」
「同様に守ろうとしているんですかね?彼がカン違いしているのは、日本国民が敵だと認識しているところですよ」
「日本国民を敵に回したのは、何を隠そう、佐野氏及びスタッフの人間のあり方そのものなんだから・・・」
「それを佐野氏は、理解していないと思いますよ・・・僕は」
と、池澤くん。
「まあ、話を戻そう・・・あのトレース事件は、確かに、この一連の流れの中で、確実に分水嶺になったね」
「あの佐野氏の対応を見た、日本の社会人達は、あっけにとられたと思うよね。佐野氏本人が盗用の疑いをかけられている最中に」
「弟子のトレース事件が明るみに出たんだから・・・佐野氏本人に対する疑義が膨らむのは、当たり前の現象だよ」
と、僕。
「その後、佐野研二郎氏の過去の仕事に関して、「模倣ではないか?」と言う指摘が相次ぎました」
「これに関しては、まず、御島さんは、どういう見解ですか?」
と、ユキちゃん。
「前の話の時にも言葉にしたけど、似ている似ていないは、問題じゃないの。そのエンブレムなりロゴが」
「どのようなコンセプトを持ち、どのような世界観をカタチとして、表現しているかが問題なの」
「何かを表現する時、モチーフが限られてくるのは当然だし、結果、似ると言うのも、あり得る事だわ」
「だからこそ、コンセプト及び、表現しようとしている世界観、価値観、そう言ったモノの聞き取りが重要になると」
「わたしは、思っているわ」
と、御島さん。
「ただし・・・「アバタもエクボ」じゃないけど・・・他人を好意的に見ていれば、素敵に見えるけど、佐野研二郎氏は」
「その逆を行ったの。「模倣ではないか?」と言う言葉が上がれば上がるほど」
「・・・その前に彼は、日本人として完全に信用が失墜しているんだから・・・さらに追い打ちをかけるように信用が失われていった」
「それはもう、当たり前の事じゃない?この頃から、日本国民は、佐野研二郎氏がオリンピックエンブレムをデザインするに値しない」
「人間だと言う評価になっていたのよ・・・」
と、御島さん。
「今回、ネットの画像検索能力が高まった事がうんぬん・・・と書いている新聞もありましたけど、そこは本質じゃないんですよね」
「大事な事は、日本人は、同じ日本人の中身を容易に見抜き、その仕事をするに値するか、値しないかをシビアに見抜く」
「・・・その値しない・・・と言う説明の為に、ネットの画像検索機能が利用されたに過ぎないわけですから」
と、ユキちゃん。
「結局、日本文化的に・・・日本では、作品と作者の信用度が密接に関わっていて、信用出来ない作者の作品は、評価されない」
「・・・と言う正に日本文化・・・よくゆるちょくんが指摘してきた・・・が露呈したって事になるのね・・・」
「このからくりについて、説明したテレビのニュース番組、あったかしら?」
と、御島さん。
「まあ、いい。話を戻そう・・・ユキちゃん、続けてくれる?」
と、僕。
「はい。結局、本件にトドメを刺したのは・・・佐野研二郎氏がオリンピック委員会に提出していた空港でのエンブレムの」
「展開図でした。海外のブログの写真を勝手に流用し、その空港の写真に自分のエンブレムを配した・・・」
「それは完全なるパクリ・・・盗用の証拠になるものでしたから・・・それらもあって、佐野研二郎氏は、エンブレムの」
「原作者として、現行のエンブレムの取り下げを申し出て・・・オリンピック委員会側も了承した、と言う流れになりました」
と、ユキちゃん。
「わたしが、思うのは、この佐野研二郎氏って、ものすごく甘いって事なの」
「だって、デザイナーって、まあ、わたし達クリエイターの一部と言ってもいいけど、「盗用」と見られる事を最も恐れて」
「常に対策を打っておくべき職業じゃあないかしら?」
と、御島さん。
「それは僕もそう思います。一番疑われたくない、濡れ衣だからこそ・・・そう疑われない対策を取るのは、必須ですよ」
と、池澤くん。
「僕なんか、まだまだ、仕事が一人前じゃないですから。だからこそ、そういう人間に見られないように仕事がんばっているわけだし」
と、池澤くん。
「でしょう?それなのに、配下のデザイナーは、堂々と盗用しているし、佐野研二郎氏自身も、盗用した空港の写真で」
「エンブレムの展開写真を作って・・・それをオリンピック委員会に提出しているのよ?」
「その意識がまず、わからないわ・・・」
と、御島さん。
「確か、ゆるちょくんは、メーカーの社員だった時に出発便や到着便の表示器を空港内に展開する図を顧客に提出した」
「・・・そういう経験があるのよね?その目から見て・・・今回のこのパクリの展開写真をどう見る?」
と、御島さん。
「え?論外ですよ。うちだったら、一から自分たちで作りますよ。当時はデザイン研究所の人間と仕事をしていたから」
「そのデザイナーに仕事をオファーして、「こんな感じになります」みたいな図を作って・・・まさに、佐野研二郎氏の」
「展開図みたいなモノですけど、当然、金かけて一から作りますよ。だって顧客に納入するものでしょ?」
「顧客だって契約後には、僕らに金払うわけだから・・・契約前の商談の時点でだって、ほかからパクった展開図なんて」
「絶対に納入出来ませんよ」
と、僕。
「そうよね。それが、国民の一般的な理解よね・・・その考え方から言うと、佐野研二郎氏は、殆ど素人的な仕事の仕方なのよね」
「少なくとも、プロじゃないわ・・・」
と、御島さん。
「当然、そんな人間には、オリンピックのエンブレムのデザインなんて、やって貰いたくない・・・」
「ただでさえ・・・数々の問題を露呈した佐野研二郎事務所は・・・もう、穢れそのものになってしまった・・・」
「そんなエンブレム、誰も使いたがらないし・・・見るのも嫌・・・当然、そうなりますね」
と、貴島くん。
「だから、結果、佐野研二郎氏は、取り下げる事になった・・・そういう事よね」
「ま、これ、全部、佐野研二郎氏と事務所・・・そして、オリンピック委員会が悪いと言う事になるわね」
と、御島さん。
「まさに、日本では、作品も大事だけど、その作品を作った作者の信頼性が大事・・・そっちの方が大事・・・と言う事になりますね」
と、貴島くん。
「僕は、今回の事、やっぱり、自分のエンブレムを大事に考えるなら、佐野研二郎氏は、もっとテレビに出まくって」
「自身のエンブレムの正当性や、世界観、その他、エンブレムについての思いなど、日本国民に対して、たくさん話すべきだった」
「と思います。中途半端な説明が一回あっただけで、後は文書での対応だけだったから・・・それも木で鼻をくくるような」
「そんな内容だったから、国民が激怒して、今回の方向へ走ったんだと思います」
と、池澤くん。
「・・・と言う事は、佐野研二郎氏が、日本国民を舐めたから、こういう結果になった・・・そういう事?」
と、僕。
「ええ。彼は被害者ズラしていますけど、日本人はドヤ顔を一番不快な映像と思っているし・・・それを毎日流されたのも」
「彼にとって、不幸だったでしょうね。でも、彼のあり方、事務所の対応こそが、日本国民を怒らせた事は確かです」
と、池澤くん。
「後は日本オリンピック委員会ね。日本オリンピック委員会が決定したから、国民もそれに従うとカン違いしている」
「だいたい日本オリンピック委員会は、「新国立」でポカをしているから・・・日本国民は、この度重なる失態に」
「日本オリンピック委員会を敵視し始めている。特に森氏の対応は、ドンドン酷くなるし・・・ゆるちょくんがいつも指摘してるけど」
「「責任の所在が明確で無い親方日の丸の組織は腐る」・・・なんか、この兆候が見えてきていない?」
と、御島さん。
「ま、いずれにしろ、すべては国民が判断すると言う大事な事を日本オリンピック委員会は、理解していなかった」
「・・・そういう事だと思いますね」
と、僕。
「なんか、日本オリンピック委員会は、専門の女性の報道官を置いたらいいんじゃないですかね?」
「皆を包めるような、笑顔の素敵な女性報道官・・・有森裕子さんとか、Qちゃんとか・・・」
と、池澤くん。
「確かに・・・日本オリンピック委員会は、透明性も必要ですけど、風通し良くしてほしいですね」
と、ユキちゃん。
「そうね。今はそれが出来る事の精一杯かも、しれないわね。とにかく、オールジャパン体制じゃないと」
「東京オリンピック・・・上手くいかないんじゃないかしら」
と、御島さんは、言うと、アイスレモンティーをゆっくり飲み干した。
(おしまい)
9月に入ってすぐだと言うのに、いろいろありますね・・・。
錦織圭くん、負けちゃうし・・・ま、昨日は、お休みしまして、ご迷惑をおかけしました。
さて、その時、僕が事務所に出社してくると、御島さん(31)を始めとしたスタッフ達が大部屋で、
談笑していました。
「あら、ゆるちょくん。今日のブログはお休みにしたの?」
と、御島さん。
「いやいや。昨日、エンブレム問題で、あれだけ、盛り上がって皆で話していて、結局、お酒も大分過ごして」
「・・・あの状況じゃあ、言いたい事があり過ぎて、話を整理しなければいけないと思って・・・」
「それで一日、置くことにしたんですよ。事態の推移も見守りたかったし・・・」
と、僕。
・・・と、そこへ、イケメン貴島くん(29)、若い池澤くん(24)、辛辣姫ユキちゃん(28)が出社してきました。
「昨日は、少し飲み過ぎましたかね・・・にしても、美味しい楽しいお酒でしたけど」
と、貴島くん。
「少し、昨日の話、整理したいところですね」
と、ユキちゃん。
「僕はやっぱり、今回の佐野研二郎氏の対応に不満があったな・・・」
と、池澤くんは話している。
「よーし、その話、わたし達的に整理しちゃおうか」
と、御島さんが立ち上がり、皆を見回した。
「ゆるちょくん。今回の話、わかりやすく結論から、入ってくれる?その方がまず、すっきりするでしょう?」
と、御島さん。
「はい。要はこの話、「オリンピックエンブレムは盗用か?」と言う問題と」
「「佐野研二郎氏とそのデザイン事務所はそもそも信用出来るのか?」と言う二つの疑問が日本国民の間で、盛り上がった」
「と言う話です。そして、今回の話で新たにわかった事は、オリンピックエンブレムは、オリンピック委員会の所有物と言う」
「だけでなく、国民が納得するエンブレムでなければ、そもそも、成り立たない・・・と言う一番大事にしなければいけない」
「条件が新たに見つかったと言う事です」
と、僕。
「なるほど、論点は、3つ、と言う事ね。「エンブレム盗用問題」「佐野デザイン事務所の信用問題」そして、一番大きいのが」
「「オリンピックエンブレムは国民が納得するモノでなければならない・・・と言う条件」ね」
と、御島さん。
「そうです。で、簡単に言えば、「エンブレム盗用問題」はお話にもならない程、相手のデザインの世界観がすっかすっかで」
「佐野研二郎氏のデザインは、魅力に溢れた世界観を持っていた・・・このあたりは、以前問題にした時に考察した通りです」
「ですから、この問題は、すでに解決済みでした」
と、僕。
「で、新たに浮上した疑念・・・「佐野デザイン事務所の信用問題」・・・この件、実は我らが御島さんは当初から指摘していました」
「御島さんは、「外国では、作品とその作者は関係無いとしている。しかし、この日本では作品は作者の分身とも言えるし」
「作者に信用が置けなければ、作品もまた、評価されない」と言うような事を当初から指摘していたんです」
「今回、その件について「作者の「佐野デザイン事務所の信用問題」において、国民の信用が著しく失墜したので」」
「「オリンピックエンブレムを撤回する」と言う結論に至ったんです・・・これが結論です」
と、僕。
「なるほど・・・ゆるちょくんは、相変わらず、わかりやすいわね。盗作問題はクリアしたけど、作者側の信用問題で」
「アウトと指摘され・・・オリンピックエンブレムは、使用禁止となった・・・ま、公式エンブレム発表から一ヶ月と言う」
「この時期をどう見るか・・・なんだけど、まあ、わたしは、その評価はどうでもいい。むしろ、この問題でイニシアティブを」
「取るべき、日本オリンピック委員会が、世論を読み違えた・・・エンブレムを国民の納得出来るモノにすると言う意識が」
「最初から、欠けていた事が問題だったと思うわ」
と、御島さん。
「まあ、その各論に入るのは、経緯を多岐川に説明してもらってからにしましょう」
「多岐川、経緯のトレースは出来ているだろ?」
と、貴島くん。
「ええ。トレースですね。出来てますよ」
と、ユキちゃん。
「まず、ゆるちょさんが説明してくれた「オリンピックエンブレム盗作問題」ですが、佐野研二郎氏が直々に出てきて」
「説明会を開いて、質問にも答えた・・・ここで本来終わっていたはずなんです。ゆるちょさんも、一旦そこで結論を出しています」
「しかし、オリンピックには様々な立場の人間がいます。直接利害関係のある、スポンサーの方たちです」
「聞いた話では、その時点で、オリンピックエンブレムを使うのに難ありと示した会社が当然存在したらしいです」
と、ユキちゃん。
「そりゃあ、当たり前だ。日本人はケチのついたモノをそのまま、使うのを嫌がる。一旦穢れたら・・・禊が必要だと考えるのが」
「日本文化だ。本来、今回のオリンピックエンブレムの穢れは・・・佐野研二郎氏の質疑応答で、禊となるはずだったんだが・・・」
と、僕。
「僕は、ゆるちょさんみたいに、物事の裏側に隠された理由すら、言葉に出来る人間ではありません。正直、ゆるちょさんの」
「解説が無かったら、本件、全然理解出来ていないと思います。つまり、佐野研二郎氏の説明は、自己を守る事に終始し」
「一般の国民の理解を得るには、遠いクオリティのモノだったと僕は、思います」
と、池澤くん。
「ほう。池澤、なかなかいい所を突いているじゃないか。僕もそう思います。だから、国民にとって、禊にはなっていない」
「だから、スポンサーは、このエンブレムを使うのに難ありだったんですよ」
と、貴島くん。
「そういう事だ。だから、スポンサーも当然しっくり行っていない・・・結果、日本文化としては当然の事ながら」
「佐野研二郎氏の素性を洗う事になった。この人間は、実際に信用していい人間なのか、どうか・・・」
「日本国民がそういう意識になった瞬間、佐野研二郎氏の過去の仕事を洗う作業が始まった・・・当然の成り行きだ」
と、僕。
「そこで、問題になったのが、例の「トートバッグ」問題です」
と、ユキちゃん。
「わたしね。この事件が、今回のエンブレム問題の分水嶺になったと思うの。この事件が起きなければ、佐野研二郎氏に対する」
「国民の目はやさしいまま、推移していったはずなのよ・・・」
と、御島さん。
「トートバッグ問題で明らかになったのは、佐野研二郎氏配下のデザイナー達が他のデザイナーの作品をトレースしていたと言う事実。盗用そのものです」
「・・・と、それに対する、佐野研二郎氏の意識があまりに低かったことも、同時に明らかになりました・・・」
と、ユキちゃん。
「そうなの。この事件に対する佐野研二郎氏の意識の低さ・・・配下のデザイナーが他のデザイナーの作品をトレースする」
「つまり完全なる盗用を行っていて・・・それを知らなかったで済ます意識・・・これが日本国民の佐野研二郎氏に対する」
「意識を逆転させる・・・そういう要素になったとわたしは、思う」
と、御島さん。
「わたしだって、これでも、フリーのクリエイター達をまとめる事務所の社長よ。コンプライアンスは、最も重要に考えている」
「ひとつだわ。ここ15年の日本の企業の意識の流れでも、社員の起こす不祥事に対する意識はものすごく高いわ」
「だから、コンプライアンスの強化は、ここ15年、ずーーーっと言われてきている。だからこそ、わたしは」
「「クリエイターだからこそ、クリエイティブな仕事を大事にし、オリジナルである事を絶対に守ってください」と」
「皆に常に言ってきたわよね?」
と、御島さん。
「ええ。そうですね」
と、僕。
「クリエイターがオリジナリティを失ったら、ううん、それ以上にひとの作品をパクったら、その時点で」
「そのクリエイターは、仕事を辞めるべき、廃業すべきだとわたしは、思っている。それはクリエイターだったら」
「誰でもそういう思いを持っているんじゃないかしら?それがクリエイターとしての挟持だし、尊厳でしょ?」
「クリエイターとしての存在価値そのものでしょ?」
と、御島さん。
「はい。そうですね」
と、ユキちゃん。
「・・・そういうクリエイターとしての強い思いをわたしは、あのトレース事件の時に、佐野研二郎氏から感じなかった」
「まるで「間違えました。あ、すいませんでした。だめだった作品、取り下げまーす」くらいの反応でしかなかったんだもの」
「もう、コンプライアンスどころの話じゃなくて・・・なんか、あまりに考えている事のレベルが低すぎて、笑っちゃったわ」
「日本人としての完全なる信用の失墜・・・「あ、この人、本気で対応すべき人間じゃ、なかったんだわ・・・」って」
「あの時、わたしは彼を見放したの・・・」
と、御島さん。
「日本の国民も、御島さんと同じように思ったんでしょうね。あるいは佐野氏が、もうビビっていて、対応を誤ったか」
と、貴島くん。
「僕はあのトレース事件の後にこそ、佐野氏は、謝罪会見及び、質問対応の時間を取るべきだったと思いますよ」
「今回、スタッフを守るためにも・・・エンブレムを取り下げたみたいな話になっていますけど、そういう意味じゃ」
「なんでも、取り下げりゃあ、それでいいと思っているんですかね。トレースして、佐野さんの事務所に迷惑かけたスタッフも」
「同様に守ろうとしているんですかね?彼がカン違いしているのは、日本国民が敵だと認識しているところですよ」
「日本国民を敵に回したのは、何を隠そう、佐野氏及びスタッフの人間のあり方そのものなんだから・・・」
「それを佐野氏は、理解していないと思いますよ・・・僕は」
と、池澤くん。
「まあ、話を戻そう・・・あのトレース事件は、確かに、この一連の流れの中で、確実に分水嶺になったね」
「あの佐野氏の対応を見た、日本の社会人達は、あっけにとられたと思うよね。佐野氏本人が盗用の疑いをかけられている最中に」
「弟子のトレース事件が明るみに出たんだから・・・佐野氏本人に対する疑義が膨らむのは、当たり前の現象だよ」
と、僕。
「その後、佐野研二郎氏の過去の仕事に関して、「模倣ではないか?」と言う指摘が相次ぎました」
「これに関しては、まず、御島さんは、どういう見解ですか?」
と、ユキちゃん。
「前の話の時にも言葉にしたけど、似ている似ていないは、問題じゃないの。そのエンブレムなりロゴが」
「どのようなコンセプトを持ち、どのような世界観をカタチとして、表現しているかが問題なの」
「何かを表現する時、モチーフが限られてくるのは当然だし、結果、似ると言うのも、あり得る事だわ」
「だからこそ、コンセプト及び、表現しようとしている世界観、価値観、そう言ったモノの聞き取りが重要になると」
「わたしは、思っているわ」
と、御島さん。
「ただし・・・「アバタもエクボ」じゃないけど・・・他人を好意的に見ていれば、素敵に見えるけど、佐野研二郎氏は」
「その逆を行ったの。「模倣ではないか?」と言う言葉が上がれば上がるほど」
「・・・その前に彼は、日本人として完全に信用が失墜しているんだから・・・さらに追い打ちをかけるように信用が失われていった」
「それはもう、当たり前の事じゃない?この頃から、日本国民は、佐野研二郎氏がオリンピックエンブレムをデザインするに値しない」
「人間だと言う評価になっていたのよ・・・」
と、御島さん。
「今回、ネットの画像検索能力が高まった事がうんぬん・・・と書いている新聞もありましたけど、そこは本質じゃないんですよね」
「大事な事は、日本人は、同じ日本人の中身を容易に見抜き、その仕事をするに値するか、値しないかをシビアに見抜く」
「・・・その値しない・・・と言う説明の為に、ネットの画像検索機能が利用されたに過ぎないわけですから」
と、ユキちゃん。
「結局、日本文化的に・・・日本では、作品と作者の信用度が密接に関わっていて、信用出来ない作者の作品は、評価されない」
「・・・と言う正に日本文化・・・よくゆるちょくんが指摘してきた・・・が露呈したって事になるのね・・・」
「このからくりについて、説明したテレビのニュース番組、あったかしら?」
と、御島さん。
「まあ、いい。話を戻そう・・・ユキちゃん、続けてくれる?」
と、僕。
「はい。結局、本件にトドメを刺したのは・・・佐野研二郎氏がオリンピック委員会に提出していた空港でのエンブレムの」
「展開図でした。海外のブログの写真を勝手に流用し、その空港の写真に自分のエンブレムを配した・・・」
「それは完全なるパクリ・・・盗用の証拠になるものでしたから・・・それらもあって、佐野研二郎氏は、エンブレムの」
「原作者として、現行のエンブレムの取り下げを申し出て・・・オリンピック委員会側も了承した、と言う流れになりました」
と、ユキちゃん。
「わたしが、思うのは、この佐野研二郎氏って、ものすごく甘いって事なの」
「だって、デザイナーって、まあ、わたし達クリエイターの一部と言ってもいいけど、「盗用」と見られる事を最も恐れて」
「常に対策を打っておくべき職業じゃあないかしら?」
と、御島さん。
「それは僕もそう思います。一番疑われたくない、濡れ衣だからこそ・・・そう疑われない対策を取るのは、必須ですよ」
と、池澤くん。
「僕なんか、まだまだ、仕事が一人前じゃないですから。だからこそ、そういう人間に見られないように仕事がんばっているわけだし」
と、池澤くん。
「でしょう?それなのに、配下のデザイナーは、堂々と盗用しているし、佐野研二郎氏自身も、盗用した空港の写真で」
「エンブレムの展開写真を作って・・・それをオリンピック委員会に提出しているのよ?」
「その意識がまず、わからないわ・・・」
と、御島さん。
「確か、ゆるちょくんは、メーカーの社員だった時に出発便や到着便の表示器を空港内に展開する図を顧客に提出した」
「・・・そういう経験があるのよね?その目から見て・・・今回のこのパクリの展開写真をどう見る?」
と、御島さん。
「え?論外ですよ。うちだったら、一から自分たちで作りますよ。当時はデザイン研究所の人間と仕事をしていたから」
「そのデザイナーに仕事をオファーして、「こんな感じになります」みたいな図を作って・・・まさに、佐野研二郎氏の」
「展開図みたいなモノですけど、当然、金かけて一から作りますよ。だって顧客に納入するものでしょ?」
「顧客だって契約後には、僕らに金払うわけだから・・・契約前の商談の時点でだって、ほかからパクった展開図なんて」
「絶対に納入出来ませんよ」
と、僕。
「そうよね。それが、国民の一般的な理解よね・・・その考え方から言うと、佐野研二郎氏は、殆ど素人的な仕事の仕方なのよね」
「少なくとも、プロじゃないわ・・・」
と、御島さん。
「当然、そんな人間には、オリンピックのエンブレムのデザインなんて、やって貰いたくない・・・」
「ただでさえ・・・数々の問題を露呈した佐野研二郎事務所は・・・もう、穢れそのものになってしまった・・・」
「そんなエンブレム、誰も使いたがらないし・・・見るのも嫌・・・当然、そうなりますね」
と、貴島くん。
「だから、結果、佐野研二郎氏は、取り下げる事になった・・・そういう事よね」
「ま、これ、全部、佐野研二郎氏と事務所・・・そして、オリンピック委員会が悪いと言う事になるわね」
と、御島さん。
「まさに、日本では、作品も大事だけど、その作品を作った作者の信頼性が大事・・・そっちの方が大事・・・と言う事になりますね」
と、貴島くん。
「僕は、今回の事、やっぱり、自分のエンブレムを大事に考えるなら、佐野研二郎氏は、もっとテレビに出まくって」
「自身のエンブレムの正当性や、世界観、その他、エンブレムについての思いなど、日本国民に対して、たくさん話すべきだった」
「と思います。中途半端な説明が一回あっただけで、後は文書での対応だけだったから・・・それも木で鼻をくくるような」
「そんな内容だったから、国民が激怒して、今回の方向へ走ったんだと思います」
と、池澤くん。
「・・・と言う事は、佐野研二郎氏が、日本国民を舐めたから、こういう結果になった・・・そういう事?」
と、僕。
「ええ。彼は被害者ズラしていますけど、日本人はドヤ顔を一番不快な映像と思っているし・・・それを毎日流されたのも」
「彼にとって、不幸だったでしょうね。でも、彼のあり方、事務所の対応こそが、日本国民を怒らせた事は確かです」
と、池澤くん。
「後は日本オリンピック委員会ね。日本オリンピック委員会が決定したから、国民もそれに従うとカン違いしている」
「だいたい日本オリンピック委員会は、「新国立」でポカをしているから・・・日本国民は、この度重なる失態に」
「日本オリンピック委員会を敵視し始めている。特に森氏の対応は、ドンドン酷くなるし・・・ゆるちょくんがいつも指摘してるけど」
「「責任の所在が明確で無い親方日の丸の組織は腐る」・・・なんか、この兆候が見えてきていない?」
と、御島さん。
「ま、いずれにしろ、すべては国民が判断すると言う大事な事を日本オリンピック委員会は、理解していなかった」
「・・・そういう事だと思いますね」
と、僕。
「なんか、日本オリンピック委員会は、専門の女性の報道官を置いたらいいんじゃないですかね?」
「皆を包めるような、笑顔の素敵な女性報道官・・・有森裕子さんとか、Qちゃんとか・・・」
と、池澤くん。
「確かに・・・日本オリンピック委員会は、透明性も必要ですけど、風通し良くしてほしいですね」
と、ユキちゃん。
「そうね。今はそれが出来る事の精一杯かも、しれないわね。とにかく、オールジャパン体制じゃないと」
「東京オリンピック・・・上手くいかないんじゃないかしら」
と、御島さんは、言うと、アイスレモンティーをゆっくり飲み干した。
(おしまい)