授業が終わった味趣連の三人は、一路話題のステーキ屋さんに繰り出した。
三人はモグモグと口を動かしながら(太一はゲーム機を持った手も動かしながら)、料理に舌鼓を打つ。
お腹も落ち着いて来たところで、雪は聡美に先ほどのことについて切り出した。
「てかさぁ‥さっきどしたの?香織ちゃんにあんなこと‥」
雪が言及したのは、先ほどの授業の前に見せた聡美の態度だった。
清水香織に対して、あからさまな敵意を見せた聡美‥。
雪の言葉に、聡美は心外だと言わんばかりに憤慨して声を荒げた。
「はぁ~?!あの子いつからあたしたちと仲良かったっけ?!ってか突然何なのあの子!」
呆れ顔の雪の前で、聡美は腕を組んで唇を尖らせた。とにかく清水香織が気に食わないようだ。
「それでも同期同士なんだし、そんなに態度に表さなくたって‥」
そんな雪の発言を蹴散らすように、聡美は両手を上げて清水香織が嫌いなことを主張した。
雪も小さく本音を漏らす。
「まぁ‥私もあんまり好きじゃないけどさ‥」
雪の脳裏に、先学期グループワークでDを貰ったことが浮かんで来た。彼女はその一因を担ったのだ‥。
しかしそれとこれとは別、と雪は尚も聡美を説得にかかる。
「けど、そんなに態度に出してたら変にギスギスして‥お互い気まずいじゃない」
聡美はその言葉に、憤慨しながら意義を唱えた。
「気まずいだなんてとんでもない!さっき見たでしょ?あたしのこと完ムシ!幽霊扱い!」
マナーがなってないのは香織の方だ、と言って聡美は譲らなかった。
そして雪に対しても不平を鳴らす。
「てかあんたこそ清水香織だか清水アキラだか知らんあの子の肩をそんなに持つわけ?!
あたしよりあの子の方がいいってこと?!」
「そういうんじゃないって‥あの子のせいで単位落としたんだから‥」
雪が弁解しても、聡美の表情は解れない。
聡美が腹を立てている一番の理由がそこにあったからだ。
依然としてゴゴゴゴ、と音が聞こえて来そうな程の凄みで雪を見つめる。
雪は香織のことをどうこう言いたいわけでは無かった。雪の忠告は、聡美のことを心配している故だからだ。
「まぁ単位のことは過ぎたことだから‥。
てか同期同士でいがみ合ってたら大学生活に支障をきたすからここまで言ってるの!」
「嫌よ!だったらあの子にもそう言ってやってよ。あの子も悪いんだから!」
依然として雪からのアドバイスを突っぱねる聡美に、幾分困り顔で雪は言葉を掛ける。
自分の正直な気持ちを。
「あんたとあの子を同じ土俵に上げてどうするのよ。
聡美は私の友達だから、こうやって話してるんじゃない」
雪の気持ちを聞いて、聡美はキョトンとした表情で口を噤んだ。
怒りが心の奥に引っ込んでいく。
聡美はコホン、と一つ咳払いをすると、香織について気になっていたことを冷静に話し始めた。
「それはそうだけど‥てかあんたも感じなかった‥?あの子、突然服装も雪と瓜二つで‥」
雪は躊躇いがちに頷いた。
先ほど目にした香織の姿は、まるで自分のコピーを見ているみたいだった‥。
しかし雪はそう感じはしたけれど、自分の気のせいかも知れないと聡美に言った。
自分はそんなに個性的な格好をする方ではないし、偶然服装がカブっただけかもしれないと。
「さっき青田先輩と付き合ってるって知った時の反応もオーバーだったし!」
服装や身の回りの物を雪と似せていることといい、先ほどの青田先輩とのことを知った時のオーバーアクションといい、
聡美は香織に対して胡散臭さを感じていた。何か企んでいるのでは、と。
「元々そんな敏感な子じゃないっぽいけど‥」
そんな聡美に対して、雪は正直な自分の気持ちを述べた。
そして特別問題になるようなことが無ければ、あまり気に病みたくないと彼女に告げる。
聡美はしぶしぶ頷いた。
「仲良くしましょうよ~仲良く仲良くネ~」
太一はいい加減な相槌を打ちながら、いい加減にステーキを口に運んだ。
しかし目は画面に釘付けなので、肉は鼻の辺りに運ばれている‥。
「あんたはゲームするか食べるかどっちかにしなさい」
「ダメです。ステーキが焦げてしまいまス」「どんなゲームよ‥」
そんな折、雪の携帯電話が震えた。メッセージボタンが光っている。
雪ちゃん 俺授業終わったんだけど、今どこにいる?
雪は突然の彼からのメッセージに目を丸くした。今日は時間が合わないと思って特に連絡しなかったのだ。
雪はアタフタと出る準備をし、そのまま席を立つ。
「私先行くね!」「うん!」「急げ~」
聡美は、風のように去って行く彼女の後姿を見送った。
感慨深い思いと共に、少し物寂しい気持ちで聡美は息を吐く。
「恋をするとみんなああなるのねぇ。友達も家族もなげうって‥」
「ステーキが焦げました」
太一のゲームも一段落‥。
雪は先輩が待つ場所へと駆け足で移動していた。はっはっと息を切らせながら。
すると前方から歩いてくる、見た顔の男女グループに出くわした。中心に居る男は横山翔だ。
雪は顔を顰め、咄嗟に彼らを避けようと足を止めたが遅かった。
直美さんが雪に気づき声を掛けたのだ。
「雪ちゃん!」 「こんにちは~!」
同じ学科の後輩や同期が、皆雪に挨拶する。
その中には以前雪を敵対視していた、後輩のキノコ頭の姿もある。
しかし今の彼女らといったら、雪を好奇心混じりの羨望の眼差しで見つめていた。
雪は自分の後ろに、彼女らが透かして見ている青田先輩の姿を見る‥。
そんな空気に耐え切れず、雪がその場を後にしようとすると不意に横山が声を掛けて来た。
雪は予想外の彼の行動に目を見開く。
「俺ら今から昼飯食べに行くんだけど、お前も一緒に行く?奢るぜ」
横山はニッコリと笑ってそう言った。
一体どの口がそんなことを言えるのか‥。雪は彼を見て露骨に顔を顰める。
後輩達がそれを聞いてキャイキャイとはしゃぐ中、雪は首を横に振って数歩後退った。
すると横山は大きな声で、さも今気がついたかのように口を開く。
「アッチャ~!青田先輩!やっぱり先輩に会いに行くんだよな?!俺ってばニブチンだな~!」
わざとらしい横山の発言だったが、後輩達は改めて”青田先輩と付き合っている雪”を目の前にして色めき立った。
いいものご馳走してくれるんだろうなぁ、いいなぁいいなぁと黄色い声が響く。
雪は微笑んではいたが、その笑顔は大分引き攣っていた。慣れない状況に耐えながら、余計なことを口にした横山を恨む。
そしてようやく直美さんが雪に別れを告げ、雪も軽く会釈をして彼女らに挨拶をした。
後輩達は先ほど横山が昼食を奢ると言ったことを話題に出し、高いもの頼んでもいいですかと言ってはしゃいでいた。
雪はその場に合わせながら笑顔を浮かべる‥。
すると去り際に横山が雪に近付き、耳元で小さく囁いた。
「すごいねぇ?」
感心するよ、と言い捨てて横山は雪に背を向けた。
雪がその無礼に声を上げようとした時には、もう横山は皆に交じって去って行くところだった。
あの野郎‥と呟く雪の顔が獣になる。
そして雪は横山に向けて中指を立てた。
F◯ck You、昼飯でも何でも勝手に食ってろ!
ケケケと笑いながらも、ふと視線を感じた。
何の気なしに振り返る。
そこには彼が立っていた。
ぼんやりとした視線を彼女に送りながら、いつか見たような彼が息を飲む‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<立腹の理由>でした。
太一のゲーム‥一体何なの?!(笑) ステーキを焼くゲーム‥?気になりますね^^;
そして聡美の雪に対する愛、何だかいじらしいですね。
雪を取られたくない気持ちと、香織の思惑に雪が飲まれやしないかと心配する気持ちと‥。
不器用なほど真っ直ぐな聡美、応援したいですねぇ。
そしてここの聡美のセリフ↓ 本家版ではこう言っています。
「てかあんたこそ何でソンミンスだかソンボムスだか知らんあの子の肩をそんなに持つわけ?!」
ソンボムス氏はフリーのアナウンサーで、司会者としても有名だとか。
名前が似ている、という点で引き合いに出したんでしょうかね‥^^;
記事での清水アキラ‥厳しかったですかね?汗
最後の雪が中指を立てるカット、デジャブですね~!
次回記事の冒頭で以前出てきたカットも貼ろうと思います。
次は<木漏れ日の中で>です。
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三人はモグモグと口を動かしながら(太一はゲーム機を持った手も動かしながら)、料理に舌鼓を打つ。
お腹も落ち着いて来たところで、雪は聡美に先ほどのことについて切り出した。
「てかさぁ‥さっきどしたの?香織ちゃんにあんなこと‥」
雪が言及したのは、先ほどの授業の前に見せた聡美の態度だった。
清水香織に対して、あからさまな敵意を見せた聡美‥。
雪の言葉に、聡美は心外だと言わんばかりに憤慨して声を荒げた。
「はぁ~?!あの子いつからあたしたちと仲良かったっけ?!ってか突然何なのあの子!」
呆れ顔の雪の前で、聡美は腕を組んで唇を尖らせた。とにかく清水香織が気に食わないようだ。
「それでも同期同士なんだし、そんなに態度に表さなくたって‥」
そんな雪の発言を蹴散らすように、聡美は両手を上げて清水香織が嫌いなことを主張した。
雪も小さく本音を漏らす。
「まぁ‥私もあんまり好きじゃないけどさ‥」
雪の脳裏に、先学期グループワークでDを貰ったことが浮かんで来た。彼女はその一因を担ったのだ‥。
しかしそれとこれとは別、と雪は尚も聡美を説得にかかる。
「けど、そんなに態度に出してたら変にギスギスして‥お互い気まずいじゃない」
聡美はその言葉に、憤慨しながら意義を唱えた。
「気まずいだなんてとんでもない!さっき見たでしょ?あたしのこと完ムシ!幽霊扱い!」
マナーがなってないのは香織の方だ、と言って聡美は譲らなかった。
そして雪に対しても不平を鳴らす。
「てかあんたこそ清水香織だか清水アキラだか知らんあの子の肩をそんなに持つわけ?!
あたしよりあの子の方がいいってこと?!」
「そういうんじゃないって‥あの子のせいで単位落としたんだから‥」
雪が弁解しても、聡美の表情は解れない。
聡美が腹を立てている一番の理由がそこにあったからだ。
依然としてゴゴゴゴ、と音が聞こえて来そうな程の凄みで雪を見つめる。
雪は香織のことをどうこう言いたいわけでは無かった。雪の忠告は、聡美のことを心配している故だからだ。
「まぁ単位のことは過ぎたことだから‥。
てか同期同士でいがみ合ってたら大学生活に支障をきたすからここまで言ってるの!」
「嫌よ!だったらあの子にもそう言ってやってよ。あの子も悪いんだから!」
依然として雪からのアドバイスを突っぱねる聡美に、幾分困り顔で雪は言葉を掛ける。
自分の正直な気持ちを。
「あんたとあの子を同じ土俵に上げてどうするのよ。
聡美は私の友達だから、こうやって話してるんじゃない」
雪の気持ちを聞いて、聡美はキョトンとした表情で口を噤んだ。
怒りが心の奥に引っ込んでいく。
聡美はコホン、と一つ咳払いをすると、香織について気になっていたことを冷静に話し始めた。
「それはそうだけど‥てかあんたも感じなかった‥?あの子、突然服装も雪と瓜二つで‥」
雪は躊躇いがちに頷いた。
先ほど目にした香織の姿は、まるで自分のコピーを見ているみたいだった‥。
しかし雪はそう感じはしたけれど、自分の気のせいかも知れないと聡美に言った。
自分はそんなに個性的な格好をする方ではないし、偶然服装がカブっただけかもしれないと。
「さっき青田先輩と付き合ってるって知った時の反応もオーバーだったし!」
服装や身の回りの物を雪と似せていることといい、先ほどの青田先輩とのことを知った時のオーバーアクションといい、
聡美は香織に対して胡散臭さを感じていた。何か企んでいるのでは、と。
「元々そんな敏感な子じゃないっぽいけど‥」
そんな聡美に対して、雪は正直な自分の気持ちを述べた。
そして特別問題になるようなことが無ければ、あまり気に病みたくないと彼女に告げる。
聡美はしぶしぶ頷いた。
「仲良くしましょうよ~仲良く仲良くネ~」
太一はいい加減な相槌を打ちながら、いい加減にステーキを口に運んだ。
しかし目は画面に釘付けなので、肉は鼻の辺りに運ばれている‥。
「あんたはゲームするか食べるかどっちかにしなさい」
「ダメです。ステーキが焦げてしまいまス」「どんなゲームよ‥」
そんな折、雪の携帯電話が震えた。メッセージボタンが光っている。
雪ちゃん 俺授業終わったんだけど、今どこにいる?
雪は突然の彼からのメッセージに目を丸くした。今日は時間が合わないと思って特に連絡しなかったのだ。
雪はアタフタと出る準備をし、そのまま席を立つ。
「私先行くね!」「うん!」「急げ~」
聡美は、風のように去って行く彼女の後姿を見送った。
感慨深い思いと共に、少し物寂しい気持ちで聡美は息を吐く。
「恋をするとみんなああなるのねぇ。友達も家族もなげうって‥」
「ステーキが焦げました」
太一のゲームも一段落‥。
雪は先輩が待つ場所へと駆け足で移動していた。はっはっと息を切らせながら。
すると前方から歩いてくる、見た顔の男女グループに出くわした。中心に居る男は横山翔だ。
雪は顔を顰め、咄嗟に彼らを避けようと足を止めたが遅かった。
直美さんが雪に気づき声を掛けたのだ。
「雪ちゃん!」 「こんにちは~!」
同じ学科の後輩や同期が、皆雪に挨拶する。
その中には以前雪を敵対視していた、後輩のキノコ頭の姿もある。
しかし今の彼女らといったら、雪を好奇心混じりの羨望の眼差しで見つめていた。
雪は自分の後ろに、彼女らが透かして見ている青田先輩の姿を見る‥。
そんな空気に耐え切れず、雪がその場を後にしようとすると不意に横山が声を掛けて来た。
雪は予想外の彼の行動に目を見開く。
「俺ら今から昼飯食べに行くんだけど、お前も一緒に行く?奢るぜ」
横山はニッコリと笑ってそう言った。
一体どの口がそんなことを言えるのか‥。雪は彼を見て露骨に顔を顰める。
後輩達がそれを聞いてキャイキャイとはしゃぐ中、雪は首を横に振って数歩後退った。
すると横山は大きな声で、さも今気がついたかのように口を開く。
「アッチャ~!青田先輩!やっぱり先輩に会いに行くんだよな?!俺ってばニブチンだな~!」
わざとらしい横山の発言だったが、後輩達は改めて”青田先輩と付き合っている雪”を目の前にして色めき立った。
いいものご馳走してくれるんだろうなぁ、いいなぁいいなぁと黄色い声が響く。
雪は微笑んではいたが、その笑顔は大分引き攣っていた。慣れない状況に耐えながら、余計なことを口にした横山を恨む。
そしてようやく直美さんが雪に別れを告げ、雪も軽く会釈をして彼女らに挨拶をした。
後輩達は先ほど横山が昼食を奢ると言ったことを話題に出し、高いもの頼んでもいいですかと言ってはしゃいでいた。
雪はその場に合わせながら笑顔を浮かべる‥。
すると去り際に横山が雪に近付き、耳元で小さく囁いた。
「すごいねぇ?」
感心するよ、と言い捨てて横山は雪に背を向けた。
雪がその無礼に声を上げようとした時には、もう横山は皆に交じって去って行くところだった。
あの野郎‥と呟く雪の顔が獣になる。
そして雪は横山に向けて中指を立てた。
F◯ck You、昼飯でも何でも勝手に食ってろ!
ケケケと笑いながらも、ふと視線を感じた。
何の気なしに振り返る。
そこには彼が立っていた。
ぼんやりとした視線を彼女に送りながら、いつか見たような彼が息を飲む‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<立腹の理由>でした。
太一のゲーム‥一体何なの?!(笑) ステーキを焼くゲーム‥?気になりますね^^;
そして聡美の雪に対する愛、何だかいじらしいですね。
雪を取られたくない気持ちと、香織の思惑に雪が飲まれやしないかと心配する気持ちと‥。
不器用なほど真っ直ぐな聡美、応援したいですねぇ。
そしてここの聡美のセリフ↓ 本家版ではこう言っています。
「てかあんたこそ何でソンミンスだかソンボムスだか知らんあの子の肩をそんなに持つわけ?!」
ソンボムス氏はフリーのアナウンサーで、司会者としても有名だとか。
名前が似ている、という点で引き合いに出したんでしょうかね‥^^;
記事での清水アキラ‥厳しかったですかね?汗
最後の雪が中指を立てるカット、デジャブですね~!
次回記事の冒頭で以前出てきたカットも貼ろうと思います。
次は<木漏れ日の中で>です。
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