![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/b1/c642d9cabd744b5c9d680ce2abacb72a.jpg)
A大経営学科四年の学生達が、授業を終えたところだった。
ザワザワと騒がしい教室内に、一際大きな声が響く。
「じゃあお前来週から出勤すんのか?単位はどーなんの?」
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柳瀬健太は青田淳から、来週からZ企業にインターンに行くことを聞き出したところだった。
単位も取得出来るインターンらしく、淳は余裕の表情だ。健太は羨むように言う。
「Z企業はインターンの審査基準も高かったのにすげーな!そのまま社員になれんのか?」
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健太は淳にZ企業のインターンについて聞きながらも、
教室を出て行こうとする他の四年生達に声を掛けるのも忘れない。
「お?!お前ら就活セミナー行く?俺も一緒に行くからよ!」
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柳瀬健太は大きな仕草と憂うような声で、淳に話しかけ続けた。
自分も含むまだ就職が決まらない四年生は、教室の半分になってしまったと。
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「淳はセミナー行かねーんだろ?
Z企業のインターンなら行く必要ねーもんなぁ!いいよな~!」
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柳瀬健太の声は大きかった。そのため教室中の学生が、淳の進路を知ることになる。
Z企業だって‥羨ましー‥うちの学科から何人行ったっけ?‥、囁くようなヒソヒソ声が聴こえていた。
「それじゃーな!」 「はい」
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淳は健太の挨拶に頷き、同じように別れを告げた。
すると教室の入口から、明るい声が聞こえてくる。
「先輩方、終わりました~?お疲れの先輩方を、僕がオモテナシしちゃいますよぉ~!」
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ワッと横山翔を囲んで声が上がる。横山が先輩達にご馳走すると言うのだ。
そしてそのまま、その場にいた四年生の大半は横山について行った。柳瀬健太もだ。
「うははコイツめ!優しいじゃねーか!直美も良い奴捕まえたなぁ~?」
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そしてその輪の中に、ケラケラと笑いながら横山を囲む男子二人が居た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/1f/d670d04127ea66d359bbee1c3fcd5bb3.jpg)
淳の脳裏に、ついこの間まで同じような笑顔を浮かべ、
自分に寄って来ていた彼らの姿が思い浮かぶ‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/4c/1a8a13a20871c9ffee6cf6c248d28c0a.jpg)
淳は呆れたように息を吐くと、じっと彼らの姿を眺めていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/24/ea610363e4b38a25ecc7edf3c44a4ab6.jpg)
「あ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/c9/05468825a381835b1c36a8b83798636c.jpg)
そんな視線に気がついたのは、横山だった。パッと笑顔を浮かべると、淳に向かって言葉を掛ける。
「先輩!インターン内定おめでとうございます~!
これからはなかなか会えないんでしょーねー?」
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横山はそう言った後、淳に背を向けて教室を後にした。男子学生達が、賑やかに笑い声を上げて彼に続く。
大きな目を見開きながら、淳は彼らを見送った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/8c/2fa9619aa8f80570d750cd467410d6be.jpg)
不意にポケットに入った携帯電話が震えた。メッセージが入っている。
先輩、今後空き時間は図書館でバイトをすることになりました。
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雪からだった。
彼女からのメッセージを受け取った後、淳は一人空を見つめる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/16/4084230a57904ebaa1b1c74f9d17375b.jpg)
頭の中に、先日目にしたあの場面が思い浮かんだ。
親しげに家へ帰っていく雪と亮、そして雨の中で渡せなかった傘‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/f7/e492b2b0593d0af41d7c93c557b53830.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/9b/9e6993a48f7a29918c3b43e3784f9413.jpg)
喧騒が去って行く。
今まで自分の周りに居た人々がごっそりと、横山翔に連れられて去って行った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/73/e0c506ae12a5e11b3632efd85c15e7b5.jpg)
淳は一人教室に取り残され、その場に立ち尽くしていた‥。
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外に出た横山ら一行は、何を食べようかと言ってワイワイと歩いていた。
後方に横山と健太が並び、含みのある表情でニヤリと笑い合う。
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夏休み初旬から、横山が布石を打っておいた健太との繋がり‥。
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それがここに生きている。
地道な活動は実を結び、全てが彼に味方しているように思えた。
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横山の脳裏には、先ほど一人教室に取り残された青田淳の姿が浮かんでいた。
横山は口元に笑みを浮かべながら、始まったばかりの作戦の行く先を思う‥。
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<取り残された彼>でした。
短い記事ですいません~!
最後、教室に一人残された先輩のカット。
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皆さんこの画をよく覚えておいて下さいね。先のストーリーで重要になってきますヨ^^
次回は<亡霊>です。
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