ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

「契約」に不向き

2024-05-12 08:17:52 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「ギャップは埋まるか」5月5日
 心療内科医海原純子氏が、『すぐやめる新入社員』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、『入社してすぐの退職理由は「条件が入社前の説明と違っている」(略)現在の若者は違いが大きいか小さいか、という問題ではなく、事前に提示された条件と「違う」ことが問題なのだ。雇用契約という観点で考えて、説明が違うのは信用できない企業、という捉え方をする』と書かれています。
 理屈としては理解できます。しかし、若者のこうした傾向は、教員の確保という点から見ると、とても難しい時代を迎えていると判断せざるを得ません。教職は、事前にこうした条件で、ということが約束しにくい職だからです。
 担任している子供が校内でけがをします。担任としてはその日のうちに見舞いに行くことが、保護者や子供との信頼関係を維持するために望ましいのです。しかし、それは勤務時間外にならざるを得ないことが多いのです。入院した病院が少し離れていれば、言って保護者等と話しをしてくるだけで1時間や2時間はすぐにたってしまいます。予定していた約束はキャンセルせざるを得ません。しかも、残業代が出るわけでもありません。
 夜中に子供が帰宅しないという連絡が入ります。寝ていたとしても、直ぐに学校なり、子供の自宅なり、最寄りの警察署なりに出向かなければなりません。帰りは終電もなくなりタクシーで帰ることになります。これも「サービス残業」です。
 休日に、子供が万引きで捕まりました。保護者はパートで店には行けないとのこと。店からの連絡が学校に行き、担任が頭を下げに店に向かいます。休日は台無しですが、「警察でもどこにでも突き出してくれ」というわけにはいきません。
 主に突発的な事故の例ばかりをあげましたが、いずれも私が体験したり、見聞きしたりしたことばかりです。もし、担任している子供に上記のような事故があり、自分が対応できなければ、同じ学年の教員や主任、主幹等が対応することになり、「お世話になりました」と頭を下げなければなりません。勤務時間外も常に待機していなければならないのか、とげんなりする若者もいるかもしれません。
 生身の人間を相手にする、一人一人異なる感じ方や価値観に応じて対応することが求められるため、事前に対応マニュアル的なものによって、「雇用契約」を結ぶことは難しいというのが教職なのです。だからといって、さまざまな状況から勤務時間外でも対応することが望ましいと判断されるときには、手当や代替休業等の保証の有無にかかわらず対応すること、などという「雇用条件」では、教員志願者は激減してしまうでしょう。
 「こんなはずではなかった」「こんなことなら教員になどならなかったのに」という事態を防ぐための手立てはあるのか、大きな研究課題です。

 

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