ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

ナイフを突き付けられて

2015-03-05 07:54:49 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「その後どうする」3月2日
 『欠席児童の状況把握を』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、川崎市教委は『合同校長会議で、欠席が続いている児童や生徒らの状況を把握するよう指示した』とのことです。そして、『他校を含めた友人関係を11日までに報告するよう求めた』とも書かれていました。
 今回の上村君惨殺事件を受けての対応です。私が教委の幹部であったとしても、こうした指示を出したと思います。あくまでもマスコミ向け、議会向けに、教委も真剣に取り組んでいます、という姿勢をアピールするために、です。本音を言えば、これしかできないということでもあります。実際に問題に対応する学校や教員としては「その後どうするの」という点が一番重要であるにもかかわらず、その点については見て見ぬふりをしている「苦しい指示」なのです。
 たとえば、不登校調査の結果、上村君と同じような状況が判明したとします。そのとき、教員はどうすればよいのでしょうか。めったに家に戻らない生徒に会うために自宅の近くで張り込みをするのでしょうか。会えるまで何日も。何日かしてついにその生徒が不良仲間と帰宅してきました。そのとき、生徒の前に立ち、「こんな奴らと付き合うのはやめて学校に来い」と言えるでしょうか。仲間の手前、生徒は「はい分かりました」とは言わないでしょう。そして、不良たちは「おっさん、どけよ。ウルセエんだよ。死にたいのかよ」と教員を取り囲みます。そして、ポケットからナイフを取り出すのです。そんなとき、まさか「教育者なのだから、自分の命に代えても生徒の前に立ちはだかれ」と言う人はいないはずです(もしかしたらいるかも?)。だからといって、恐怖のあまり「どうもすみません」と頭を下げて引き下がったのでは、「ああ、先生に頼っても無駄なんだ」と、ますます生徒を絶望の淵に追い込むだけです。
 それでは、不良との交友関係を把握したら直ちに警察に連絡し対応を委ねればよいのでしょうか。しかし、「うちの生徒が悪い仲間と付き合っているらしい」という連絡を受けた警察が、「分かりました。後は我々にお任せください」と言うとは思えません。そんなにヒマではないからです。都内を例に言えば、一警察署管内には10校程の中学校があります。各校に対応が必要な不登校生徒が1人しかないとしても、10件に対応しなければなりません。しかも、警察から見て緊急性がある事例ではないのです。児相やSSWも、児童委員も民生委員も、不良たちとの対応力はありません。そして残念ながら、教委にも、です。
 私事ですが、以前もこのブログで書いた、不良中学生同士の手打ち式に参加したとき、暴走族の集会に入り込んだとき、修学旅行先で他県の生徒とのトラブルに立会い「おっさん、どきな、怪我するぜ」とカッターナイフを見せられたとき、何れも逃げ出したい思いでした。女性や高齢の教員も含めてすべての教員にこんな経験をさせるという想定は非現実的です。
 状況把握後にどうするか、現実的なシステム構築が、教育行政全体で取り組むべき緊急の課題なのです。

 

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