旧統一教会への献金巡る損害賠償訴訟、最高裁が審理を高裁に差し戻し…教団側勝訴の1・2審判決破棄 読売新聞2024年 7/11 15時27分
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者が違法な勧誘で献金させられたとして、元信者の長女が教団側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、教団と信者に対する原告側の請求を退け、教団側勝訴とした1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。
旧統一教会 “教団に返金求めない”念書は無効 最高裁が初判断 NHK 2024年7月11日 19時30分
旧統一教会の元信者や家族が教団に支払った献金を返すよう求めた裁判で、最高裁判所は11日、高齢の元信者が書いた「教団に返金を求めない」という念書は無効だとする判断を示しました。その上で、献金を勧誘した行為の違法性や教団の責任について、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
献金勧誘の違法性や教団の責任など 高裁で審理やり直し命じる
原告の女性は、長野県に住んでいた元信者の母親が違法な勧誘で高額な献金などをさせられたとして、母親とともに教団と信者に賠償を求める裁判を起こしました。
裁判を起こす2年前の2015年、母親が86歳の時に「教団に返金を求めない」などとする念書を書き、動画にも収められていたことから、1審と2審は訴えを退けました。
母親は裁判中に亡くなり、娘が上告していました。
11日の判決で最高裁判所第1小法廷の堺徹裁判長は、「母親は半年後には認知症と診断され、合理的な判断をすることが困難な状態だった。信者らは念書の締結を終始主導し、判断が難しい母親の状態を利用して一方的に大きな不利益を与えた。念書は無効だ」と指摘しました。
また、母親の献金が1億円を超えているなどの状況について、「異例と評価でき、母親の生活に無視しがたい影響を及ぼすものだ」と述べました。
一方、献金の勧誘が違法かどうかについては、「寄付者の属性や家庭環境、教団との関わり方などについて、多角的な観点から検討することが求められる」などとして、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
旧統一教会の献金をめぐる裁判で最高裁が判決を出したのは初めてで、同様の裁判に影響する可能性があります。
献金の勧誘 違法かどうか判断する基準 初めて示される
判決では、宗教団体や信者が行う献金の勧誘について、違法かどうかを判断する基準が初めて示されました。
最高裁は、
▽献金をするかどうかの判断に支障が生じるような事情があったか、
▽献金により、寄付した人や配偶者の生活の維持に支障が生じるか、などについて考慮し、その上で、社会で一般的に認められる範囲を逸脱している場合は違法だという判断を示しました。
また、
▼勧誘に使われたことばや方法、
▼寄付した人の属性、家庭環境、入信のいきさつ、宗教団体との関わり方、
▼献金のいきさつや目的、金額、
▼本人や配偶者の資産、生活の状況などについて、多角的な観点から検討することが求められるとしました。
原告 “やっと まっとうな判決 ほかの被害者の救済に役立つ”
判決のあと、原告の女性と弁護団は都内で会見を開きました。
原告の女性は、「最高裁が念書が無効だとはっきりと認めてくれた。やっと、まっとうな判決が出てよかった。きょうの判決がほかの被害者の救済の役に立つと思うと、すごくうれしい」と話していました。
木村壮弁護士は、「旧統一教会のような大きな宗教団体と強い心理的な影響を受けた信者との間に作られた契約の有効性を判断する上で大きな指針になる」と話していました。
“念書のために諦めている人は相談を” 弁護団
全国統一教会被害対策弁護団によりますと、7月5日までに寄せられた735件の被害相談のうち、念書や合意書を教団側から書かされたという相談は12件あったということです。
具体的には、献金が高額で、親族が教団への信仰に反対しているケースのほか、教団側から一部の返金を受け、これ以上の返金を求められないようにするために念書などを交わすケースもあるということです。
弁護団長を務める村越進 弁護士は、11日の会見で、「念書を作らされたために被害を訴えることを諦めている人もたくさんいると思う。そうした人たちは弁護団に相談してほしい」と話していました。
旧統一教会 “主張の正しさ 差し戻し審理でも主張する”
最高裁判所の判決について、旧統一教会=世界平和統一家庭連合は、「これまでの地裁、高裁が事実と証拠に基づき出されてきた判決が、差し戻しという結果になったことは残念でなりません。今後も主張の正しさを差し戻しの審理でも主張していく」とコメントしています。
専門家 “法律上の合理性より 実質的状況を判断した妥当な判決”
最高裁判所の判決について、宗教社会学が専門で旧統一教会をめぐる問題に詳しい北海道大学の櫻井義秀教授は、「法律上の形式的な合理性よりも、被害者が勧誘を受け、献金させられた実質的な状況を総合的に判断していて、妥当な判決だ」と評価しました。
この判決の影響について、「念書の作成は教団内で決まったやり方として採用されている方法だ。今回の原告の状況に類似したケースはいくつもあり、念書がハードルになって裁判を起こせなかった人などが名乗り出ることができるようになる」と述べました。
違法な献金かどうかを判断する基準が示されたことについては、「献金して生活が大変になる人もいる。宗教団体への献金は自由な意思によるべきだ。今回の基準は社会常識の範囲内で宗教的な行為として相当かを考慮したもので、極めて重要だ」と述べていました。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者が違法な勧誘で献金させられたとして、元信者の長女が教団側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、教団と信者に対する原告側の請求を退け、教団側勝訴とした1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。
旧統一教会 “教団に返金求めない”念書は無効 最高裁が初判断 NHK 2024年7月11日 19時30分
旧統一教会の元信者や家族が教団に支払った献金を返すよう求めた裁判で、最高裁判所は11日、高齢の元信者が書いた「教団に返金を求めない」という念書は無効だとする判断を示しました。その上で、献金を勧誘した行為の違法性や教団の責任について、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
献金勧誘の違法性や教団の責任など 高裁で審理やり直し命じる
原告の女性は、長野県に住んでいた元信者の母親が違法な勧誘で高額な献金などをさせられたとして、母親とともに教団と信者に賠償を求める裁判を起こしました。
裁判を起こす2年前の2015年、母親が86歳の時に「教団に返金を求めない」などとする念書を書き、動画にも収められていたことから、1審と2審は訴えを退けました。
母親は裁判中に亡くなり、娘が上告していました。
11日の判決で最高裁判所第1小法廷の堺徹裁判長は、「母親は半年後には認知症と診断され、合理的な判断をすることが困難な状態だった。信者らは念書の締結を終始主導し、判断が難しい母親の状態を利用して一方的に大きな不利益を与えた。念書は無効だ」と指摘しました。
また、母親の献金が1億円を超えているなどの状況について、「異例と評価でき、母親の生活に無視しがたい影響を及ぼすものだ」と述べました。
一方、献金の勧誘が違法かどうかについては、「寄付者の属性や家庭環境、教団との関わり方などについて、多角的な観点から検討することが求められる」などとして、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
旧統一教会の献金をめぐる裁判で最高裁が判決を出したのは初めてで、同様の裁判に影響する可能性があります。
献金の勧誘 違法かどうか判断する基準 初めて示される
判決では、宗教団体や信者が行う献金の勧誘について、違法かどうかを判断する基準が初めて示されました。
最高裁は、
▽献金をするかどうかの判断に支障が生じるような事情があったか、
▽献金により、寄付した人や配偶者の生活の維持に支障が生じるか、などについて考慮し、その上で、社会で一般的に認められる範囲を逸脱している場合は違法だという判断を示しました。
また、
▼勧誘に使われたことばや方法、
▼寄付した人の属性、家庭環境、入信のいきさつ、宗教団体との関わり方、
▼献金のいきさつや目的、金額、
▼本人や配偶者の資産、生活の状況などについて、多角的な観点から検討することが求められるとしました。
原告 “やっと まっとうな判決 ほかの被害者の救済に役立つ”
判決のあと、原告の女性と弁護団は都内で会見を開きました。
原告の女性は、「最高裁が念書が無効だとはっきりと認めてくれた。やっと、まっとうな判決が出てよかった。きょうの判決がほかの被害者の救済の役に立つと思うと、すごくうれしい」と話していました。
木村壮弁護士は、「旧統一教会のような大きな宗教団体と強い心理的な影響を受けた信者との間に作られた契約の有効性を判断する上で大きな指針になる」と話していました。
“念書のために諦めている人は相談を” 弁護団
全国統一教会被害対策弁護団によりますと、7月5日までに寄せられた735件の被害相談のうち、念書や合意書を教団側から書かされたという相談は12件あったということです。
具体的には、献金が高額で、親族が教団への信仰に反対しているケースのほか、教団側から一部の返金を受け、これ以上の返金を求められないようにするために念書などを交わすケースもあるということです。
弁護団長を務める村越進 弁護士は、11日の会見で、「念書を作らされたために被害を訴えることを諦めている人もたくさんいると思う。そうした人たちは弁護団に相談してほしい」と話していました。
旧統一教会 “主張の正しさ 差し戻し審理でも主張する”
最高裁判所の判決について、旧統一教会=世界平和統一家庭連合は、「これまでの地裁、高裁が事実と証拠に基づき出されてきた判決が、差し戻しという結果になったことは残念でなりません。今後も主張の正しさを差し戻しの審理でも主張していく」とコメントしています。
専門家 “法律上の合理性より 実質的状況を判断した妥当な判決”
最高裁判所の判決について、宗教社会学が専門で旧統一教会をめぐる問題に詳しい北海道大学の櫻井義秀教授は、「法律上の形式的な合理性よりも、被害者が勧誘を受け、献金させられた実質的な状況を総合的に判断していて、妥当な判決だ」と評価しました。
この判決の影響について、「念書の作成は教団内で決まったやり方として採用されている方法だ。今回の原告の状況に類似したケースはいくつもあり、念書がハードルになって裁判を起こせなかった人などが名乗り出ることができるようになる」と述べました。
違法な献金かどうかを判断する基準が示されたことについては、「献金して生活が大変になる人もいる。宗教団体への献金は自由な意思によるべきだ。今回の基準は社会常識の範囲内で宗教的な行為として相当かを考慮したもので、極めて重要だ」と述べていました。