出産やがん治療で使用の麻酔薬が不足 影響広がる NHK 2024年10月2日 18時38分
出産やがんの治療などで使われている麻酔薬の出荷が制限され全国の医療現場で不足する事態となっています。通常に戻るめどは立っていないということで、厚生労働省や学会は薬の使用に優先順位をつけたり使用量を減らしたりするよう呼びかけています。
薬の販売会社「サンド」によりますと、この会社が扱っている局所麻酔薬「アナペイン」の出荷をことし6月から制限しています。
製造を行っている関連会社が製造所を海外から国内に移そうとしましたが、ことし4月に技術移転に時間がかかることが明らかになり国内での製造が延期されたためだということです。
海外の製造所とはすでに契約が切れ、元の状態に戻すこともできないということです。
会社は在庫を取り崩して対応していますが、出荷できる量は限られ「極めて厳しい状況だ」としています。
「アナペイン」は出産やがんの治療などで広く使われていて、全国の医療現場で不足する事態となっています。
厚生労働省や日本麻酔科学会などは「アナペイン」の不足でほかの麻酔薬の供給も不安定になっているとして全国の医療機関に対して治療が必要な患者の優先順位を策定することや薬の使用量を減らす工夫をすることなどを呼びかけています。
会社はNHKの取材に対して「医療関係者や患者の皆様にご迷惑をおかけし、申し訳ございません。1日も早く通常出荷を再開できるよう、鋭意取り組んでおります」と話していて、国内で製造を始めるめどは立っていないということです。
別の麻酔を小分け 必要な分を確保する医療機関も
「アナペイン」が不足している影響で、都内の医療機関では別の麻酔を調達したうえで小分けして必要な分を確保するなど対応に追われています。
東京・中央区にある国立がん研究センター中央病院では、がんの手術に「アナペイン」を使っています。
ところが出荷制限でことし6月ごろから減少し始め、8月になってからはほとんど入荷しなくなりました。
このため臨床試験や大腸がんの手術に使用を限定しているということです。
「アナペイン」を使っていたほかの手術については別の麻酔で代替することにしましたが、その麻酔も需要が増え入荷量が少なくなっているということです。
このため衛生上の理由で1回使用したあとに余った分を廃棄していた手順を見直し、薬剤師が毎朝、使用する前のパックから無菌状態で注射器に小分けし、むだが出ないようにしています。
こうした努力を続けていても早ければ12月には在庫が底をつき、手術の延期などを検討せざるを得なくなる可能性があるとして不安を抱えています。
橋本浩伸薬剤部長は「このままだと医療が続かなくなるおそれもある。1日も早く安定した供給が再開することを心から願っています」と話しています。
産婦人科では無痛分べんを制限する可能性
「アナペイン」が不足している影響で、産婦人科の中には出産の際に麻酔で陣痛を抑える無痛分べんに応じきれなくなることを心配する声も聞かれます。
東京・世田谷区の産婦人科クリニックでは、毎年およそ500件の分べんを扱っていて、このうち出産時の痛みを抑える無痛分べんは9割以上にのぼっています。
無痛分べんには「アナペイン」を使用していて、これまでは注文から数日以内に納入されていましたが、ことし5月ごろから滞りはじめ1週間ほど遅れることもあるということです。
また、代替の麻酔薬も仕入れが難しい状況が続いているということです。
このためクリニックでは、患者ごとに使用する麻酔の量を予想してむだを無くすようにしていますが入荷の状況がさらに悪化した場合、無痛分べんを制限せざるを得なくなる可能性があるとしています。
東京マザーズクリニックの林聡院長は「いつまでこの状況が続くのか心配だ。今使っている薬剤がなくなれば妊婦に迷惑をかけてしまうので早く通常通りに戻ってほしい」と話しています。
日本産科麻酔学会「不安にならず待ってほしい」
「アナペイン」が不足していることを受けて、日本産科麻酔学会は産婦人科に対応策を周知するとともに妊婦に対して不安にならないよう呼びかけています。
日本産科麻酔学会の照井克生理事長によりますと「アナペイン」は胎児への影響が少ないことから、無痛分べんに使用されることが多いということです。
代替薬もありますが、需要が増え入手が難しくなっているということです。
このため麻酔薬を使用する手術などに優先順位をつけるよう呼びかけています。
また、無痛分べんの際に、少量の鎮痛薬と組み合わせることで「アナペイン」を節約するよう求めています。
8月にジェネリック医薬品として承認されたため、今後他の会社が発売するという情報もあるということで、照井理事長は「出産を控えた方はいたずらに不安になることなくお待ちいただきたい」と話しています。
出産やがんの治療などで使われている麻酔薬の出荷が制限され全国の医療現場で不足する事態となっています。通常に戻るめどは立っていないということで、厚生労働省や学会は薬の使用に優先順位をつけたり使用量を減らしたりするよう呼びかけています。
薬の販売会社「サンド」によりますと、この会社が扱っている局所麻酔薬「アナペイン」の出荷をことし6月から制限しています。
製造を行っている関連会社が製造所を海外から国内に移そうとしましたが、ことし4月に技術移転に時間がかかることが明らかになり国内での製造が延期されたためだということです。
海外の製造所とはすでに契約が切れ、元の状態に戻すこともできないということです。
会社は在庫を取り崩して対応していますが、出荷できる量は限られ「極めて厳しい状況だ」としています。
「アナペイン」は出産やがんの治療などで広く使われていて、全国の医療現場で不足する事態となっています。
厚生労働省や日本麻酔科学会などは「アナペイン」の不足でほかの麻酔薬の供給も不安定になっているとして全国の医療機関に対して治療が必要な患者の優先順位を策定することや薬の使用量を減らす工夫をすることなどを呼びかけています。
会社はNHKの取材に対して「医療関係者や患者の皆様にご迷惑をおかけし、申し訳ございません。1日も早く通常出荷を再開できるよう、鋭意取り組んでおります」と話していて、国内で製造を始めるめどは立っていないということです。
別の麻酔を小分け 必要な分を確保する医療機関も
「アナペイン」が不足している影響で、都内の医療機関では別の麻酔を調達したうえで小分けして必要な分を確保するなど対応に追われています。
東京・中央区にある国立がん研究センター中央病院では、がんの手術に「アナペイン」を使っています。
ところが出荷制限でことし6月ごろから減少し始め、8月になってからはほとんど入荷しなくなりました。
このため臨床試験や大腸がんの手術に使用を限定しているということです。
「アナペイン」を使っていたほかの手術については別の麻酔で代替することにしましたが、その麻酔も需要が増え入荷量が少なくなっているということです。
このため衛生上の理由で1回使用したあとに余った分を廃棄していた手順を見直し、薬剤師が毎朝、使用する前のパックから無菌状態で注射器に小分けし、むだが出ないようにしています。
こうした努力を続けていても早ければ12月には在庫が底をつき、手術の延期などを検討せざるを得なくなる可能性があるとして不安を抱えています。
橋本浩伸薬剤部長は「このままだと医療が続かなくなるおそれもある。1日も早く安定した供給が再開することを心から願っています」と話しています。
産婦人科では無痛分べんを制限する可能性
「アナペイン」が不足している影響で、産婦人科の中には出産の際に麻酔で陣痛を抑える無痛分べんに応じきれなくなることを心配する声も聞かれます。
東京・世田谷区の産婦人科クリニックでは、毎年およそ500件の分べんを扱っていて、このうち出産時の痛みを抑える無痛分べんは9割以上にのぼっています。
無痛分べんには「アナペイン」を使用していて、これまでは注文から数日以内に納入されていましたが、ことし5月ごろから滞りはじめ1週間ほど遅れることもあるということです。
また、代替の麻酔薬も仕入れが難しい状況が続いているということです。
このためクリニックでは、患者ごとに使用する麻酔の量を予想してむだを無くすようにしていますが入荷の状況がさらに悪化した場合、無痛分べんを制限せざるを得なくなる可能性があるとしています。
東京マザーズクリニックの林聡院長は「いつまでこの状況が続くのか心配だ。今使っている薬剤がなくなれば妊婦に迷惑をかけてしまうので早く通常通りに戻ってほしい」と話しています。
日本産科麻酔学会「不安にならず待ってほしい」
「アナペイン」が不足していることを受けて、日本産科麻酔学会は産婦人科に対応策を周知するとともに妊婦に対して不安にならないよう呼びかけています。
日本産科麻酔学会の照井克生理事長によりますと「アナペイン」は胎児への影響が少ないことから、無痛分べんに使用されることが多いということです。
代替薬もありますが、需要が増え入手が難しくなっているということです。
このため麻酔薬を使用する手術などに優先順位をつけるよう呼びかけています。
また、無痛分べんの際に、少量の鎮痛薬と組み合わせることで「アナペイン」を節約するよう求めています。
8月にジェネリック医薬品として承認されたため、今後他の会社が発売するという情報もあるということで、照井理事長は「出産を控えた方はいたずらに不安になることなくお待ちいただきたい」と話しています。