東京新聞:銀行「預金いらない」 自治体の預入先入札、辞退次々:経済(TOKYO Web) 2020年3月2日 07時06分 https://t.co/LGKs2ZM47u
— 佐野 直哉 (@pxbrqnaZJT1917W) March 1, 2020
地方自治体が保有するお金(公金)の預入先を選ぶ手続きに対して、銀行など金融機関の参加辞退が相次いでいることが分かった。こうした事例は東京都や埼玉県でみられ、神奈川県では本年度、参加ゼロがすでに八回あった。日銀のマイナス金利などで「預金を預かっても借り手はおらず、管理コストが膨らんでいる」(大手銀幹部)ことが要因。これまで銀行経営を支えてきた預金を敬遠する姿勢が鮮明になった。 (森本智之、桐山純平)
東京都財政部門の関係者は「参加を辞退した金融機関は『預金はもういらない』と話している」と困惑する。各都県とも具体的な悪影響は起きていないが、こうした状況が続けば公金の運用に支障が出かねない。
税金などが原資の公金は目減りしないよう安全運用するのが原則。そのため、定期預金を運用の主軸としている。預入先を決める際には自治体がまず預金の金額や期間を示し、最も高い金利を見積もった金融機関から選ぶ競争入札のような手続きを取ることが多い。
神奈川県では昨年四月から一月末までに四十四回行い、八回は預金の引き受けを希望する金融機関が現れず、預け入れを延期するなどして対応した。担当者は「マイナス金利の影響と推察はできる」と指摘した。埼玉県の担当者は「大手銀行は見積もり合わせにほぼ参加しなくなった」と銀行の態度が一変したことに驚きを隠せない。
金融機関は預金として集めたお金を企業や人に貸して利息をもうけるのが収益の柱だったが、低金利で利ざやは激減している。その半面、マネーロンダリング(資金洗浄)対策などで預金の管理費が増加した。いまでは「預金が重荷」(大手行関係者)と、銀行が預金に尻込みするようなありさまで、費用を無視してでも預金集めに奔走した従来のビジネスモデルは曲がり角を迎えている。
大手の三菱UFJ銀行の広報担当者は「一般論として顧客の預金の預け入れについては、申し出事情も踏まえた上で個別に相談している」と話した。神奈川県の大手地銀である横浜銀行の担当者も「その時々の資金需要から判断して、公金の預け入れ入札に参加している」と説明した。
◆日銀マイナス金利4年 目立つ副作用、点検を
アベノミクスをけん引する異次元の金融緩和の拡大策として日銀がマイナス金利を導入して2月で4年。「2%の物価上昇」の実現にめどはつかず、副作用がむしろ目立ってきた。
マイナス金利は、銀行などが日銀に預ける「当座預金」の一部に、利子ではなく0.1%の手数料を課す政策だ。銀行は当座預金に資金を眠らせたままだと損をするので、貸し出しを増やせると日銀はもくろんだ。全体的な金利水準の低下は確かに進んだが、企業への貸し出しは想定通りに増えていない。貸出収益が改善しない中で、管理費用が増す預金の存在は金融機関の重荷となった。
金融機関の中には自治体に対し「個人の預金は断れないので、ボリュームの大きな(自治体のような)法人客の預金を減らしている」と説明するケースもあるという。
自治体の預金への影響だけではなく、金融機関の収益低下は、顧客の負担増につながる懸念がある。各銀行は預金口座に手数料を課す口座維持手数料の検討を始めている。こうした副作用の点検を求める意見は日銀の審議委員からも出ており、マイナス金利が必要かどうかの議論が日銀には必要だ。
新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済の失速が懸念される中、日銀が追加の金融緩和に踏み込めば、副作用はさらに強まりかねない。難しい判断を迫られる日銀に残された手は少ない。
(東京新聞)