表題については、前にも言ったことがあるな。
「遊び」だったら勝て! のコメントより
90年代半ばまで、競輪トップ選手が殆んど世界選手権に出場していたので、他の上位選手も多く参戦していました。
世界選はマスコミがそれなりに扱ってくれた相乗効果もありました。
しかし五輪のプロ解禁で、逆効果が出ました。
十文字、チームスプリント、永井とメダル獲得は対外的には宣伝効果はありましたが、選手の中に五輪だけ出られればよい、後の大会は一生懸命やっても無駄という五輪主義の風潮が出来てしまいました。
五輪で活躍する世界の選手は、寧ろ世界選手権をメインに毎年凌ぎを削っています。
競輪選手は斡旋に追われながら参加し、国際大会で驚くような凡走で平気で帰国します。五輪以外はどうでもよいのでしょう。
基本的に短距離は競輪選手がやはり強いです。しかしナショナルチーム所属に甘えず、本気で取り組んでいる選手に参加してもらいたいものです。
こんな意識だと「困りもの」。
そもそも、世界選手権(世界選)のほうが、4年に1回しかないオリンピックよりもはるかに重要な大会であるということは、今も昔も変わっていない。
ところで、調べていくうちに分かったのだが、戦前は、オリンピックと世界選はほとんど、「異質の大会」という様相を呈していた。
トラックの世界選では長らく、プロ・アマのそれぞれ、スクラッチ(今のスプリント)と、ドミフォンしか種目がなかった。ところがオリンピックではドミフォンがない代わりに、多種多彩な種目が行われており、タンデムスプリントや団体追い抜きといった種目については、オリンピックでは20世紀初頭より種目となっていたのだが、世界選で種目となったのはずっと後。また、1kmタイムトライアルも、オリンピックでは1928年のアムステルダムから採用されたのだが、世界選では1966年が初回であった。
戦後に入って早々、世界選に個人追い抜きがプロ・アマともに採用され、以後増加していき、やがてアマについては、世界選とオリンピックとの種目数にあまり違いがみられなくなったことから、1972年のミュンヘンオリンピックから、1992年のバルセロナオリンピックまでは、オリンピックで実施される種目については、世界選では実施されないことになった。
ま、トラックについては1993年からプロアマオープン化となったわけだが、今度は将来のオリンピック種目化を目指し、世界選のほうから先に種目化するようになった反面、タンデムやドミフォンといった、五輪種目への道がないと考えられる種目については除外されてしまった。
実は、プロアマオープン化にあたり、ケイリンも除外の対象になっていたのだが、日本車連がUCIに多額のカネを拠出(したと噂される)したことで除外を免れ、さらに当時の車連会長の「ドン片折」が、
「こうなったらオリンピックでもやろう!」
と息巻いたことから、当時の「子飼いの」選手会理事を各国に派遣して、普及に努めた結果、シドニー五輪から採用となった。ま、それに加えて、IOCにも大分カネを回していた結果とも言われている(それについてはBBC(英国放送協会のこと、びわこ放送ではありません)が以前すっぱ抜いていたな)。
ところがだ。
どうもIOCの連中というのは、サマランチ体制になってから「拝金主義」の考え方がしみついているせいか、すっかり自転車競技ではマイナーとなってしまったトラックレースに関心がないみたいで、その結果、2008年からはBMXを新種目として加え、代わりに男女タイムトライアルを除外した。
そして2年後のロンドンでは、男女同数種目という姿勢を取ることにより、中長距離系単独種目が相次いで姿を消す羽目になった。
しかし一方で世界選のほうはといえば、今や男女合わせて19種目もある。
つまり戦前同様、五輪と世界選はすっかり「乖離」した大会となってしまった。
ということを踏まえると、五輪しか興味がない、という話じゃ困るというか、それじゃダメだってこと。
さらに、スプリントについては、五輪は出場するのがかなり厳しいが、いざ本選に入ると、比較的勝ち上がりが楽。対して世界選は参加国数はそんなに多くないのに、反対にエントリーが多いため、200mFTTからいきなり勝負に入る。オリンピックだとそんなことにはならない。なぜなら五輪では、世界選B大会といって、レベルが落ちると見られる国に対する救済策の大会から勝ち上がってきた選手も参加しているため、そういった選手は力量が必然的に劣るから。さらにケイリンでも同様にそうした選手が混じっているため、世界選と比較すると、若干勝ち上がりやすい。
だから日本の選手(競輪選手)はというと、世界選のスプリントでは決まって200mFTTで「足切り」されている。
さらに、ワールドカップで好成績を収めても、世界選では違う結果になることが多い。つまり、各国選手の意識が全然違うのだ。
恐らく競輪選手の大半は、W杯でソコソコ頑張れたから、世界選でも、なんて思って挑んでいるのかもしれない。はたまた、コーチ陣にもそうした意識がひょっとするとあるかもしれないが、もしそうだとするならば、短距離についていえば、17年連続で世界選メダルゼロ、という結果は頷けるというもの。
ま、五輪は注目度からすると世界選とは較べものにならないというのは承知の通りだが、一方で4年に1回しか行われないというシステムそのものが今の時代に合わなくなっているのは確か。それと、世界選で勝つと、1年間は同一種目については、アルカンシエルを着用してレースに出れるが、オリンピックを勝っても、そのようなことはできない。
となると、中野さんが以前言っていたと思うけど、世界選は「勝つための大会」である。当然のことながら、他国の選手もそのような意識を持って挑んでくる。競輪選手も、そうした態度をもって挑んでほしいな。やればできると思うんだけど。