漫画家アシスタント 第４章 その１７

　(　この写真は、東京の雨あがりの目白通りである。遠くにＪプロのあるマンションの一部が見え
　　る。《 2006年9月 撮影 》　）
　　　　
　
【　はじめての方は、どうぞ 「第１章　改訂版」 よりご覧ください。 】　
　
　
　

　　　　　　　　　　　　　　　　　その１７
　
　
漫画家志望者が二人以上集まれば、自然と漫画の話題で盛り上がるものな
のですが・・・・　5年10年20年とあまりに長く「 志望者 」のままでいる
と漫画の話より、お互いに好きな事( テレビや男女交際 )や趣味( プロレス、
パチンコ、温泉旅行 )などに話題が変わってきます。

中には意識して漫画の話を避け「 酒の席で漫画の話はよそうぜェ・・・ 」
などと言う人まで出てきます。
　
漫画家志望を志しているのに、気が付けばただの月給鳥のボンヤリとした
日常の中で年を取っていくのです・・・・。
　
アシスタントの仕事を終えて、アパートに帰ってテレビを見ながら一服し、
夜は近所の飲み屋で一杯。そして、常連客とひいきの野球チームの話で盛
り上がる。
　
赤ら顔でアパートに帰っても何も手に付かない・・・・　『 明日やればい
いさ・・・ 』がいつも自分を励ます( 危ない )特効薬・・・・。
　
結局、漫画家に成るには、日々、「 漫画 」に向かう事しかありあせん。
漫画原稿を描くか、描くために何かをするか・・・・。そして、それ以外
の事は最小限度にとどめる・・・・。それが、「 まんが道 」の王道なので
はないかと思うのですが・・・・・。
　
前回まで、10回分ほどを「 男女交際と感性( 本とエッチ ) 」について書い
てきたつもりなのですが、そろそろ話題を変えてアシスタントの実生活と
漫画について書いていきたいと思います・・・・・。
　
　
1980年( 昭和55年 )、Ｊ・Ａプロに勤めるアシスタントの中に最初の子供が
誕生しました・・・・。
　
Ｊ・Ａプロで唯一結婚していたカンさん( 仮名：菅原 浩二、神戸出身、27歳
)に子供ができたのです。アシスタントで結婚し、子供が生まれる・・・・。
しかし・・・私は正直言っておめでたい気分にはなれませんでした・・・・。
( 元気な赤ちゃんが生まれる事はめでたい事に決まっているのですが・・・ )
　
まず、思った事は『 漫画家アシスタントをしているのは、仕事だからやって
いるのではなく、あくまで漫画家になるためにやっているのではないのか・
・・・ 』結婚して、子供を作って「 幸せ 」になってしまったら・・・・
　
その後、いったいどうなるのか・・・・・・　ハングリー精神はどこへ行っ
てしまうのだろうか・・・・・・・・
　
私には漫画家アシスタントが一つ幸せになる事で漫画家への道が一歩遠ざか
る様に思われてならなかったのです・・・・。
　
1981年( 昭和56年、)。私( 26歳 )やマツさん( 仮名：松村 祐樹、広島出身、27
歳 )、リョウさん( 仮名：内海遼一、岡山出身、27歳 )などスタッフの中でも
Ｊプロでのアシスタント歴が5年以内の若手は、漫画制作をコツコツと進めて
いました。不思議と「30歳」を目前にすると、急に焦り出すのです・・・・。　
まるで冬眠からさめた熊の様に・・・・・。
　　　
　　　
　　　
　　　　　　　　　　「 漫画家アシスタント　第４章　その１８ 」　へつづく・・・
　


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