( この写真は、私が務めるJプロの仕事場前から写した夕暮れです。久しぶりに仕事が6時頃に終わ
ったので撮影出来ました(いつもは夜に終業します)・・・・。《 2011年1月、撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その50
《 漫画家アシスタントが・・・陽気を装う・・・!? 》
漫画家アシスタントが破産するのは、珍しいのか珍しくないのか・・・・その辺のところは分か
りませんが・・・・
破産か整理( ※参照 )か・・・・・・弁護士からの連絡を待つ陰気な毎日・・・・・・・
その事を私のカミさんもお店( ※参照 )の女の子( ※参照 )たちも知らない・・・・・・・アシス
タントの仕事をするJプロ( ※参照 )の先生( ※参照 )もスタッフも知らない・・・・・・
もちろん、拙ブログの読者も当時のブログ記事( 『 第4章その55 』の頃 )から、その作者が破産
一歩手前で落ち込んでいたとは想像もしなかったと思います。
いつもの様に顔色一つ変えずに仕事をする・・・・・・挨拶、相槌、お愛想、お辞儀、そして、
明るく笑顔・・・・・・
日常を当たり前に振舞う事がこれほど疲れるとは想像もしませんでした。
心の中では土砂降りの雨が降っているのに、顔では初夏の明るい笑顔を演じるているわけです。
2007年6月某日、私が池袋にある弁護士事務所( ※参照 )へ行った時には、「相談無料」という
のを当てにして、まったくお金を持って行きませんでしたので、初期費用は後払いという事にな
っていました。
まず着手金31,500円、そして、借金の元金が減額した場合はその2~3割は手数料として払わな
くてはならないので、その分を加えて毎月3万円ほどは支払わなくてはなりません。
しばらくは、今までとあまり変わらない生活が続きそうだな・・・・・・と。 パロミス( ※参
照 )の元金は減るかもしれないけど、それ以外の350万円の多重債務(銀行、信販、カードローン)
から逃げる事は出来ません。
弁護士事務所へ行った日から数日は陰気な毎日を過ごしました。まるで重たい胃病でも患った様
な日々・・・・・
6月の中旬・・・・私は池袋の西口、昼間の繁華街を歩いていました。駅前の銀行へ寄ってから、
目白の仕事場へ向かおうとしていたのです。
人の少ない、昼間の飲食店街ではパチンコ店だけが目立ちます。私は携帯電話を出して・・・・
「 これから、着手金31,500円を送金しますんで・・・・ 」
・・・・と、下利弁護士に電話をしたのです・・・・・
下利弁護士は、気味が悪いほど明るい声で・・・・・・
「 Yさん、おめでとう! 」
何がおめでたいのかサッパリ分からない私は黙ったまま携帯に耳を押しつけます・・・・
「 まだ大雑把な計算ですが・・・・過払い金が700万あるんですよ! 」
「 ・・・・? 」
「 ですから、もう手数料の送金は必要ありません! 」
「 え~~ッ!? 」
「 着手金も手数料も、払わなくていいんです、後で清算しますから・・・・ 」
「 か・・・過払い金が700万円戻るって事は・・・・つまり、そこからパロミスの200
万円を返せるって事ですか・・・・!? 」
「 違いますよッ! Yさん、最初から200万円の借金なんて無かったンですよッ! 」
「 ・・・・・はぁ・・・・・・・・?? 」
「 Yさんの借金は、最初の3年目で全額返済されていたんです! 」
「 ・・・・3年・・・・で・・・・? 」
「 そう。 だからそれ以降に借りたお金は、余分に支払ったYさん自身のお金だっ
たという事なンですよ!」
私は26年間・・・・・毎月々々、パロミスの現金自動支払機の前に立って、背中を丸めていた事
が走馬灯のように頭の中を巡ります・・・・・・
36%の利息を20%で計算し直すと、私の借入額は3年目でゼロになり、それ以降は、パロミスが私
に借金(?)をしていた事になるのです。( おまけに、その「 借金 」には5%の金利まで付きます! )
私は、地球の自転が急に逆回転を始めたのではないかと思いました。 まったく逆さまな事が起
こったのです。
先月までは550万円の多重債務で破産しそうだった私が、今では破産しそうなパロミスの債権者に
なっているのです。
「 700万円 」と聞いた私は・・・・突然、ド貧乏からリッチに・・・・・・・・!
私の身体がアスファルトから2~3センチほど浮いている様な・・・・そんな気分になったのを覚
えています。
そして・・・・池袋西口の喧騒と6月の日差しの中を歩く私は・・・・・・
笑いをこらえるのに必死だったのです・・・・・・
漫画家アシスタント物語 血豆の教訓
『 みんなで入れば怖くない、お化け屋敷と弁護士事務所。 』
「 漫画家アシスタント 第8章 その51 」 へつづく・・・・
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【 ※参照 】
・整理・・・・・・借金利息分を棒引きにしてもらって、元本のみを分割返済したり、
利息の引き直し計算(高金利を利息制限法に基づいて計算し直す)をして元本
を減らしたり、過払い利息を返還させたりする。
・お店・・・・・・池袋北口に開いたタイ式マッサージ店(04~09年)。2000年頃からの
エスニックブームで、新宿、新橋、池袋などを中心にポツリポツリと開店し始
めた施術院。(風俗店ではありませんが、盛り場辺りには、怪しげなお店も・・・)
・女の子・・・お店には常時3~5人のマッサージ師が待機。1日に1~3人のお客さ
んを施術。全員がタイ人女性でタイマッサージ学校を卒業・・・タイでは、めずら
しくありません。日本人と結婚、就労の出来る在日ビザを持っている。
・Jプロ・・・・・・東京、目白にある漫画家J・Aの仕事場。07年当時、アシスタント
は3人。連載は隔週誌、月刊誌合わせて2~3本。80年代には連載6本、スタッ
フ7人という時代もありました。
・先生・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊
連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。07年当時、64歳。
・弁護士事務所・・・・一見するとスポーツマンタイプで無精髭を生やした下利弁
護士の地味な事務所。この場所や人物、時期などは変更しています。
・パロミス・・・・・・仮名。私の借金人生の中核をなすサラ金会社。「過払金返還」
が始まるまでは、毎年、ここの社長が長者番付トップ5に顔を出していたと思います。
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【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」