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冬空トランス 長沢樹

これまで読んだ著者の2作品が面白かったので、どういう作品かよく確かめずに本書を読み始めたところ、以下のようなやや複雑な事情が判明した。本書はシリーズ作品の第3作目だが、これまでの2冊は、時系列的には4番目の事件(消失グラデーション)と2番目の事件(夏服パースペクティブ)を扱っていて、本書はそれらと前後する、1、3、5、6番目の事件を収録した中短編集にあたる。自分はこの中で既に読んだのは4番目の事件のみ。しかもその一冊には、最後にびっくりするようなどんでん返しが用意されていて、それを知った後で読むのと知らずに読むのとでは景色が全く違ってしまう。作者としては、読者が刊行された順番で読むことを前提に、あるいはそれを期待して書いているのだろうが、そうでない読者にはこれは辛いことだ。なんとか最後まで読み終えたが、最後の事件などは全く内容についていけなかった。唯一既読の一冊が大変面白かっただけに、シリーズ全体の面白さが満喫できなかった気がして残念だった。(「冬空トランス」 長沢樹、角川文庫)

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