goo

夢印 浦沢直樹

たまたま本屋さんで見つけた一冊。「21世紀少年」や「モンスター」に熱中した頃のことや、「慢勉」を愛聴したことなどを思い出しながら、やっぱり浦沢直樹は別格に面白いことを再確認。ストーリーのテンポも良いし、あっと驚く展開も最後の後味も良い。少しだけ残る謎も絶妙だ。ベタ褒めになってしまったが、大長編スペクタクルでなくても良いので、これからもコンスタントにこうした著者の中編を読むことができたら幸せだと思った。(「夢印」  浦沢直樹、小学館)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ダークツーリズム 井出明

近年、戦争や差別といった人間のダークな歴史、あるいは悲惨な自然災害などに焦点をあてたいわゆる「ダークツーリズム」が注目されているという。そうした負の遺産を観光に結びつけることを不謹慎とする批判もあるが、著者は、実際の著者による「ダークツーリズム」の体験を通じて、そうした負の遺産に接することで得られる貴重な体験や学びがあり、教訓を風化させない力もあると言う。個人的には、大半の観光スポットには何らかしらのダークな部分があり、ダークとそうでないとものの線引きを強調しすぎる必要はないのではないかと思うが、それを意識しないまま漫然と観光するのとそうでないのとでは大きな違いがあることを再認識させられた気がした。(「ダークツーリズム」 井出明、幻冬舎新書)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

13・67 陳浩基

本屋大賞の翻訳小説部門で2位にランクインするなど、色々なところで絶賛された1冊。最近では珍しい海外作家による短編ミステリーということなので、どんなものかと思って買ってそのまま積読になっていた。久し振りにまとまった時間が取れそうなので読んでみることにした。読み終わって、帯に書かれた「オールタイムベスト級の傑作」という謳い文句が決して誇張ではないと感じた。本格ミステリーと社会派ミステリーの融合という賛辞も全くその通りで、重厚さとエンターテイメント要素を兼ね備えた見事な一冊だ。主人公が植物人間状態という幕開けも衝撃的だが、主人公のキャリアと香港の歴史を逆に遡っていく構成の妙、ひとつひとつのエピソードの面白さなど、人に伝えたくなるような要素が全開だ。なお、本書に関しては、訳者の功績が非常に大きいと思う。翻訳小説にとって非常に厳しい環境下、本書を翻訳してくれただけでも有難いことだが、日本の読者に読みやすいような工夫が全編に感じられて、本書が日本語で読めることの有難さを痛感しながら読み終えた。(「13・67」 陳浩基、文芸春秋)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »