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おしかくさま 谷川直子

時々しか行けない大きな本屋さんで見つけたサイン本。著者の名前も書名も知らなかったが、たまたまその時、買う本が文庫本ばかりになってしまいそうでだったので、何となくという感じで入手。そんな偶然で読むことにしたのだが、読む前に、本書を大変好意的に紹介した書評をみつけたりしたので、期待しながら読んだ。話は、5人の登場人物の視点で交互に語られる。よくあるパターンだが、上手くそれぞれの名前が話の序盤に出てきて固有名詞を特定できるような工夫がされているのと、それぞれの一人称が使い分けられていたりして、話の中にスムーズに入っていけた。話自体は、大きな事件もなく、どちらかといえば「日常を描いた作品」ということになるのだろう。最初のうちは、こちらも身構えて、特定の社会的な事件のパロディだろうかとか、著者は何かを訴えたいのだろうか、などと考えていたのだが、やがて単純に話のなかに入り込み、登場人物と同じ目線でものを考えたり、他の登場人物を心配したりしている自分に気づく。重たい話なのか軽い話なのかも「自分で決めて」と言われているような気がして面白かった。(「おしかくさま」 谷川直子、河出書房新社)

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