ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
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十二月大歌舞伎 昼の部感想

2007-12-04 23:42:19 | 歌舞伎
久々に、昼夜歌舞伎座!
・・・と云っても、合間合間に所用もあったりして、
昼夜とも序幕は観れませんでした。残念。
特に、海老蔵さんの寺子屋は浅草以来!!なので、観たかったけど。

歌舞伎久しぶりなのに、いきなり昼夜はしんどいかな~と心配していたけど
しっかり楽しめました!!鬼揃もふるあめりか~も、再観劇したい!
昼はなかなか時間を取るのが難しいけれど、
夜は、幕見かなにかで、もう一回くらい行けないかな~。

<昼の部>
二、信濃路紅葉鬼揃

藤間 勘吉郎 振付
杵屋 巳 吉 作曲
田中傳左衛門 作調
池田 智 哉 照明
前田   剛 美術

鬼女 玉三郎
山神 勘太郎
鬼女 門之助
同   吉 弥
同   笑 也
同   笑三郎
同   春 猿
太刀持 弘太郎
従者 右 近
同   猿 弥
平維茂 海老像

ほとんど予習もしておらず、演目も大雑把にしか把握してなかったので、
幕が上がって、松羽目の舞台が飛び込んで来て、まずビックリ!!
いつもの紅葉狩ではなく、今回新作の松羽目舞踊でした。

花道から、玉三郎さんを筆頭に鬼女たち(この段階では上臈と侍女)が
上記名前の配列順に(!)登場。
能装束のようないでたちで、お能のすり足のように静かに
また、ほんの僅かに前傾と思える姿勢で、
本舞台へと進んでいく。抑制された動き。
常のように、道具で紅葉を飾り立てられないので
(所謂「紅葉狩」の時の大道具、ホント豪華ですよね~!
いつも、歓声が上がってた。)
侍女たちの唐織の衣装が紅葉の見立て。老松にも幾枚かの紅葉。

維茂の海老像さんも、白塗りが凛と映えて綺麗。
従者に右近さん、猿弥さん。

まあ、序盤は、静々と始まったのですが、
そこは、ほれ(←ほれって…。^_^;)歌舞伎。
宴たけなわとなり、侍女たちの舞が始まると、
なかなか斬新な手がついていて、
いくつかのフォーメイション(!)、いや、ホント、
フォーメイションと云うに相応しい、
テンポと音楽変えれば、普通に洋舞でもつけられるような振りもあり。

山神の勘太郎さんも気持ちの良い踊りで、
やっぱり勘三郎さんを彷彿させる。

猿之助さん、玉三郎さん、勘三郎さん(当時勘九郎)の紅葉狩が甦る。

そして、後シテ。
玉三郎さんの、本舞台センターからのセリ上がりに、ビックリ!!
侍女たちは赤の獅子毛で、もしや~と思ったら、毛振りあり。
これは、正直ちょっと揃ってなかったけど、
澤瀉女形三人衆(笑)が、並んで毛振りする場面なんて、
そうそう観る機会はないので、そういう意味では、見物でした。


三.水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)
  筆屋幸兵衛
  浄瑠璃「風狂川辺の芽柳」

船津幸兵衛   勘三郎
車夫三五郎   橋之助
巡査民尾保守  獅 童
金貸金兵衛   猿 弥
娘お雪      鶴 松
差配人与兵衛   市 蔵
代言人茂栗安蔵 彌十郎
萩原妻おむら   福 助

初見は猿之助さんの春秋会、通しで。
たぶん「散切物」を、その時代背景も含め意識的に観たのは初めてだったし
当時の現代劇ということで、歌舞伎の芝居の中で
「僕」という一人称が役者の口から発せられるのも初めて聴いた!
新鮮というか驚いたというか・・・なので、とても印象に残っているお芝居です。
(ちなみに、この時の幸兵衛さんがブチ投げた筆、ウチにあります~・笑)
その後、一度、歌舞伎座で、他の役者さんはどういう造形なのかしら?
との興味から観た記憶があるのだけど、何方だったか失念。

今回、幕が開いてから、あれ?もしかして、一幕だと
幸兵衛さんちの場(貧家)だけ!?
くら~い気持ちで昼の部を終えるのかしら・・・
と心配してしまったけれど、そんなことはなくて、ちゃんと二場
身投(←ってタイトルだけだとナンですが)もついておりました。
そうでないと救いがないものねー。
ホント、今回、観劇前に、全然余裕がなくて
「紅葉狩」(『新歌舞伎十八番の内』の方と思い込み)と「ふるあめりか~」
に、おもだかの役者さんが出演、程度の予備知識だったので、
幕が開いてから、いろいろびっくりしておりました。

筆幸は、通しで大詰までつくと
お雪ちゃんの眼も開いて、子供たちもそれぞれ幸せになり
更に、ハッピーエンドで良いのだけど。
猿弥さんが、春秋会と同じ、金貸。相変わらずの因業ぶりです。
憎たらしいったらありゃしない。のちにお縄になったと聞いて
「ざまぁみやがれ」と思いました(笑)
↑と思わせるほどの良い出来、ということですね。

お雪の鶴松くん、そしてお霜の子役のコも健気でね~
私はじめ、周囲のおじさんおばさん涙腺決壊。
たぶん、斜め前でボロボロ零れる涙を拭いていたおじいちゃまは
ちょうど、このくらいの年のお孫さまでもいらっしゃるのではないかしら?
と、勝手に想像(妄想)しながら、共に、この劇空間で涙する様子に
親しみを覚えました。

子供たち、お父さん以上に、元士族の家の子という行儀の良さ
心映えの美しさも感じられ、上手い、というより同調させられる芝居。

勘三郎さんの幸兵衛については、申し訳けないけど
(これは個人の好悪だからお許しを~)
芸達者だな~とは思いつつも、あまり、狂態に至るまでの
精神が追い詰められていくギリギリ感を共有することは出来なかった。
どちらかと言うと子供たちの方に、より感情移入して観ていたかな、今回。

福助さんのおむら、良かったです。
ワリと福助さんも、主張の強いお芝居をするタイプと思うことがあるけれど
すっと自然で出すぎず、でも、この家の子供たちが幸せになるための
大切な存在であることも、充分、伝わってきた。

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