燃えるフィジカルアセスメント

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循環器フィジカル ケース2

2016-06-28 | 症例集

循環器フィジカル・ケース2

 

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症例2 

80歳男性

主訴:呼吸困難

最近の健診や病院受診歴なし 喫煙歴+

10日前より労作時呼吸困難

5日前より発作性夜間呼吸困難

昨夜より起座呼吸 今朝救急外来受診

顔色が悪く冷汗をかいていた 

胸痛無し

バイタルサイン:血圧110/85 脈 140  呼吸数40  体温35.5

SpO2 92% (O2 mask 7L)

収縮期駆出性雑音3/6 late-peaking ejection murmur

最強点は第2肋間胸骨右縁で右鎖骨に放散あり

S2減弱+

動脈触診で、遅脈+小脈pulsustardus et parvusあり

四肢末梢冷たい 冷汗+

前脛骨~足背に浮腫pitting edemaあり、slow edemaであった

心電図:左心室肥大LVH strain pattern

胸部X線写真:両側肺野びまん性にうっ血あり

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ピットフォール

 

担当医は、左心不全の診断で、ニトログリセリンの持続静注を開始した。

その数分後、血圧が60/45 mmHgへ急激に低下した。

 

その後の経過と解説

 

心臓診察より重度の大動脈弁狭窄症critical aortic stenosis (critical AS)による左心不全の診断となる。

心エコー検査により、大動脈弁の高度石灰化・開放制限あり、連続波ドップラーエコーによるA-V pressure gradient の推定では100 mmHgであった。

critical ASではニトログリセリンなどの血管拡張薬の投与で「ショック」になることあり、左心不全で肺うっ血をみる場合、フロセマイドなどの利尿剤の使用が安全である。

 

浮腫pitting edemaをきたす疾患の鑑別には、pit recovery timeの測定が有用である。

40秒以内のfast edemaであれば、低アルブミン血症(低膠質浸透圧血症)による浮腫であることが多い。

一方、本症例のように、slow edemaであれば、うっ血性心不全などによる浮腫を考える。

 

 

最終診断:重度大動脈弁狭窄症による左心不全

 

 

症候別“見逃してはならない疾患
徳田安春
医学書院

 

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