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総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

総論 血液培養の重要性と採取手順

2016-08-30 | 勉強会

血液培養の重要性と採取手順

 

 血液培養の採取は菌血症診断のため行う。

 心内膜炎・深部膿瘍・骨髄炎などでは菌血症があっても全身状態は良好のことが多く(敗血症ではない)、敗血症や全身性炎症反応症候群でなくても、菌血症の可能性があれば血液培養を採取する。

 すなわち、診療所でも血液培養セットは準備しておくべきである。

 

 血液培養検体の採取のベストなタイミングは、「熱が上がる前」で、悪寒戦慄時がもっとも検出率が高い。

 必ず、抗菌薬投与前に2セット採取する。

 発熱後であれば、より早期で検出率が高いので、熱発最低 2時間以内には採血する。

 意識障害、低体温など、他の敗血症のサインも見逃さないこと。

 基本的に入院を必要とする細菌感染症(あるいはその疑い)では血液培養は必須だろう。

 一方で、悪寒も無く、感染巣が菌血症の低リスク部位であれば、血培採取は不要かもしれない(気管支炎、腸炎、咽頭炎など)。

 

 血液培養は、セット数は1 セットは「不適切」であり(感度、特異度共に低い)、最低2セット(可能なら 3 セット)を提出する。

 各セットの採血部位は両肘が望ましい。

 大腿静脈は汚染菌と判断しづらい腸球菌や腸内細菌、嫌気性菌がまぎれ込みやすいので、可能な限り避ける。

 静脈と動脈には違いはないが、採血時の痛みの少ない静脈を優先する。

 中心静脈カテーテルからの採血「のみ」では判定困難となるので、末梢からの採血と併用する。

 ただし原因菌の判明している持続性菌血症のフォローの際には1セット提出でもよい。

 採血量は1ボトルに10ccずつ分注する。

 採取手順を表6に示す。

 消毒薬の選択では、ポピドンヨードは必ずしも必要でないが、クロルヘキシジンがベターというデータもあるが、実際には汚染に対する最も重要な因子は術者の清潔な手技スキルらしい。

 

表6:血液培養の採取手順

<必要物品(2セット分)>

10~20ccの注射器2本

注射針又は翼状針

血液培養ボトル2本

滅菌手袋2組

駆血帯

70%エタノール綿(酒精綿)6~8枚以上

防水シーツ1枚

外科用マスク

針廃棄容器(携帯用)

       
 

 

<採血時の留意点>

・原因菌検出率は、採決量に依存する

ため1本のボトルに10 ml注入する

・皮膚消毒を確実にする

・原則2セット(2本)採取

*MGH2セット率採取92%:2012年度

・セットごとに採取部位を替える

・1回目の後直ちに 2セット目の採血をしてもよい。 

・動脈血・静脈血どちらでもよい

 

 

<血液培養採取手順>

1.必要物品を準備する

2.手指衛生を施行、外科用マスクを着用し、トレーに必要物品を入れ、ベットサイドに行く

3.患者様に別々の部位から採血を2回することを説明し同意を得る

4.検体容器の準備

 ①当院(MGH)では嫌気性・好気性共通ボトルを用いており、血液培養ボトル1本=1セットとなるため、血液培養ボトル2本=2セット準備する

 ②血液培養ボトルのボトルキャップを開け、ゴム栓をアルコール綿で消毒する

5.穿刺部位の消毒

 ① 防水シーツを採血部位の下にひく

 ② 駆血帯を巻き、採血部位を決定する

 ③ 駆血帯を外し、採血部位を70%エタノール綿でよく清拭する(皮膚の汚れを落とす)

    *皮膚の汚染がひどい場合は、汚染を除去してから清拭する。

 ④別の70%エタノール綿で広い範囲を消毒する。採血部位を中心に外側に円を描き、70%エタノール綿を変えて2回繰り返す。

6.採血・血液培養ボトルへの注入

 ①注射器を1本出し、注射針又は翼状針を装着する(このとき、滅菌操作を遵守する)

 ② 再度 駆血帯を巻く

 ③ 滅菌手袋を装着する

 ④ 穿刺部位を触らずに採血(10cc)を行う

 ⑤ 採血後駆血帯を外し、抜針後、止血のための固定を行う

 ⑥注射器の血液を10cc血液培養ボトルへ注入する

     *このとき、穿刺を行った針の交換はしない

         *注射器内の空気がボトル内に入るのを防ぐ(嫌気性菌の検出を考慮)

 ⑦注入後は、採血実施者自身が、直ちに注射器及び針を針廃棄容器に廃棄する

 ⑧採血部の止血を確認する

 ⑨血液培養ボトルは速やかに検査室に提出する

 ⑩ すぐに提出できないときは、室温で保管する(冷蔵保管は禁忌)

 

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