今回も賢い選択からお送りします
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沖縄は戦後最も医師数が少なかった地域でした。琉球大学医学部が最初の卒業生を出したのは1987年で、私は1988年卒業の第2期生でした。しかしながら、1960年代からすでに、沖縄県民から選抜された国費医師留学生が、本土の国立大学医学部卒業後に沖縄県立中部病院などで研修し、離島医療や救急医療を支えていました。
急病やけがに対する救急医療の恩恵はとても大きいことは間違いありません。イワンイリッチがその著書「脱病院化時代Medical Nemesis」で述べたような、病院は人々の脅威となる、という完全否定論は間違いです。一次予防(予防接種など)や救急医療、そして高血圧治療などの効果が十分検証された医療介入は間違いなく、人々の健康を増進させています。
しかしながら、最近の先進国において、医療化Medicalizationは共通の課題となってきています。人間ドック健診、PET検診、脳ドック、などには、有効性を示すエビデンスはありません。
BMJに私が掲載した論文には世界から賛同の意見をいただいています。
http://www.bmj.com/content/347/bmj.f4725
これらの健診(検診)で「ひっかかった」健康な人々で病院の外来はあふれかえっています。ほんとうにケアが必要な「症状のある」患者さんがそのために必要以上に待たされているのです。
予防医療のレベル分類では、効果が小さい2次予防(検診)や3次予防(再発予防)が多額の費用を投じて実施されている一方、効果の大きい1次予防(社会政策)はあまり重視されていません。
沖縄の離島で、長く無医村(無医離島)であった竹富島という島があります。とても美しい島です。私が1994年に沖縄県立八重山病院(石垣島)で勤務しているときには、医師の代わりに医介輔さん(無医村で医療活動が認められていた医療技術をもつひと)が医療活動を行って、島民の健康を支えていました。竹富島の患者さんを何人か石垣島にある沖縄県立八重山病院へ紹介してくださったときの紹介状の内容のレベルの高さにはとても驚かされました。
離島では通常、医師1人、看護師1人、事務員1人の3人体制で医療活動が行われており、CTやMRIなどの高度な医療機器はありません。血液検査も限られた項目しかできません。まさに、病歴と身体所見による医療です。
しかしながら、その竹富島の住民の平均寿命は沖縄でも上位であり、他の多くの離島の住民の健康寿命も上位でした。本土並みに医療機関が充実している沖縄本島の那覇市などと比べても良いのです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/ckts10/dl/06.pdf
を参考にしてください。主に、渡嘉敷村から与那国町までが離島です。那覇市のデータをベンチマーキングとして比較するとわかります。必要以上の医療介入は健康アウトカムを改善しないのです。
最近では、夕張市の病院が無くなったあと、住民の健康アウトカムが改善したという話があります。
外国でも「過剰医療の存在」エビデンスを示す研究があります。以前、イスラエルでは、医師のストライキが行われましたが、その際に国全体の死亡率(葬式の数で代用)が低下したのです。この結果はBMJに掲載され大きな反響となりました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1127364/
最近の米国の研究でも興味深い結果があります。全米レベルの循環器学会が開催されて、病院から循環器科医が不在の日には、全米で高リスクの心不全や心停止患者のアウトカムが改善していました。PCI(冠動脈をカテーテル手技で広げる侵襲的治療法であり、循環器科医師によって行われるもの)の施行数は減っていましたが、死亡率は増えていませんでした。ビッグデータによるリアルワールド現象を示しており、Freakonomicsでも取り上げられています。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2038979
繰り返しますが、私は「医療の完全否定論者」ではありません。アリストテレスも孟子も述べたように、人間は何事も「中庸が良い」といっているのです。Choosing wisely キャンペーンは、エビデンスに基づく、科学的な「中庸」を示す世界的な活動なのです。
今回は以上です、話変わって、沖縄は10日梅雨明けしたそうです、実は聞いてみると6日頃からは完全に晴れていたそうです、しかし、連日の真夏日、熱中症には気を付けて下さい、こまめな水分補給も忘れずに、そうそう、お茶やコーヒーは利尿作用があるので水分補給にはなりませんので、ご注意を、では次回に。
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