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週刊新潮6月11日の記事へのコメント

2015-06-11 | 徳田語録

本題の前にメルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」を宜しくお願いします。

 今回は週刊新潮のミスリード的記事についてコメントします。

「突然ステージ4!今井雅之と今いくよが遺した教訓~健康診断では見落とす超早期がん発見の特別検査ガイド」

週間新潮6月11日号はこちら、について

 予防医療には、1次~3次のレベルがあり、危険因子を防ぐのが1次、病気を症状前に早期発見するのは2次、そして症状が出たあとでさらなる症状がでるのを抑えようとするのが3次です。

 今回の記事は、「がん」の2次予防を「最新の診断機器」で行うことで、がんを早期発見して、がんによる死亡を防ぐことができるという論調である。しかし結論から言って、この記事はミスリードしている。

▼「バーチャル内視鏡」なら痛くて恥ずかしい「大腸内視鏡」をやらずに済む▼

▼たった5mlの血液で7種類のがんリスクを判定する「アミノ酸濃度」▼

 「バーチャル内視鏡」も「アミノ酸濃度」もがん死亡の予防効果エビデンスが無い。がん検診のエビデンスの証明には、ランダム化比較対照試験が必要である。それも無しに勧めるのはミス記事。また、偽陽性ケースでは、追加の侵襲的検査による合併症のリスクがあり、無用な心理的ストレスをもたらす。

▼完璧に胃がんを探し出せるのは「胃カメラ」か「バリウム」か▼

 いずれの検査法でも胃がん検診にもRCTは無い。バリウム検査では放射線被ばくの問題があり、胃カメラでは誤嚥や静脈麻酔に伴う合併症リスクもある。

▼遺伝性「乳がん」「大腸がん」のリスクを計算する「DNA検査」のお値段▼

 遺伝子検査は、遺伝カウンセリングを受けたうえで行うべきである。遺伝性のがんは、がん全体のうち数%のみ。無用な心理的ストレスを作るだけのことが多い。

▼5年生存率わずか1%!「すい臓がん」に10万円PETと職人エコー▼

 PETによる偽陽性や偽陰性のリスクはよく知られている。PET検診を行っているのは世界で日本のみである。また、世界中どこを探しても、膵臓がんの検診を行っている国はない。膵臓がんと紛らわしい嚢胞性疾患をみつけると、その後は医療機関で頻回フォローを要することが多い。参考サイトは下記。

http://annals.org/article.aspx?articleid=2212328

▼一滴の尿の匂いで発見率96%は体長1ミリの線虫「C・エレガンス」▼

 基礎医学での発見が実用化される割合は少ない。RCTを行ったうえで検査特性を測定すべきである。基礎医学研究の逸話的結果で再検される前のデータを出して、勧めるような記事は不適切である。

 有名人ががんで死亡すると、一般の人々の恐怖心をあおって、このような記事を書いて販売数を伸ばそうとしているのであろう。このような記事を読んで、エビデンスのない検診をどんどん受けて、偽陽性結果にともなう有害事象(追加の侵襲的検査による合併症や心理的ストレス)が起きるようなことが増えないことを望む。

 今回は以上です、話変わって、女子サッカーW杯カナダ大会は日本代表なでしこジャパンは苦しんだ末、何とか勝てました、ベテラン安藤選手の捨て身の攻撃で相手スイスのゴールキーパーのミスを誘い、PKを獲得、それをキャプテン宮間選手が決めて、勝ち点3を取りました、次の試合も選手の皆さん頑張って下さい、では次回に。

 臨床推論の総論ルールがたった1時間で楽しく完全理解できる、

「マンガ臨床推論~めざせスーパージェネラリスト~」も宜しくお願いします。

こんなとき、フィジカル: 超実践的! 身体診察のアプローチ
徳田安春
金原出版

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