ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

マイケル・ムーアのSiCKOを見てきた

2007-07-24 22:34:07 | 映画
引っ越し直前で忙しいはずなのだが、最後の週である今週はシカゴを満喫するぞーと昨日ダウンタウンに出かけ、ふらふらしたついでに映画館に寄って、マイケル・ムーアのSiCKOをみてきた。私のまわりの人たちが、何人も「マイケル・ムーアの今までの作品の中で一番いい」って言うんだもの。坊主マンに着いて引っ越しのバタバタが終わった頃には上映期間が終わっていたら悲しいし、、と思ったのもある。

つくづくアメリカにいるのがイヤになる、そんな感想を抱く映画だった。アメリカの健康保険をめぐる、様々なひどいエピソードがこれでもか、これでもか、と出てくるのだ。その中でも私が一番ショックを受けたのは、LAで、保険がなく治療費が払えない貧困層の病人やけが人たちが、Keizer系列などの病院からタクシーに乗せられ、道路にあたかもゴミかを捨てるかのように落とされているシーン。アメリカの病院って、手術など麻酔を使う処置の際、たとえそれが日帰りの軽い種類の手術や、軽い入院などであっても、付き添いの大人がいないと帰らせなかったりするものだ。単に訴訟が浮「から、帰り道でなにかあったら付き添いの人の責任にしたくてそういうシステムになっているのだと思うが、、そんなの全く関係なく、病院が患者をタクシーに乗せて放り出すって、、すごすぎる。
そして、アメリカの保険会社というものが、いかに医者から政治家から総動員して、患者の保険申請を拒否することに邁進しているか、、私にもまったく人ごとではない。

私がミシガンで大学院生をしていた頃は、学生ビザだったし、大学が外国人学生用に出している比較的安価な保険を使え、ティーチングの仕事をすれば大学教員と同じようなレベルの保険がもらえた。アメリカの保険は、行く病院が限定されていたり、カバーするものとしないものが細かくわかれていたりして不便なのだが、それでも大学病院をもつ大学町で学生をしている限りは、大学のクリニックも使えたし、そこで手に余るようなら大学病院も使えたし、そう困ることはなかった。

私は大学院を卒業する直前の時期にグリーンカードをとったのだが(クジが当たった)、「永住権者」となったことで、大学発行の外国人用の保険は使えなくなった。それでも、保険つきの奨学金をちょうどその学期、大学がくれたので、とりあえず学期の間の4か月間は無事だった。だが、問題はその後、卒業してからである。とりあえず、さしあたっては、その前にはいっていた大学雇用者のための保険のCOBRA(雇用終了後、期間限定でグループレートで保険に入り続けることができる制度)でカバレージを続けることができたのだが、グループレートとはいえ、けっこうな額だ。それまで無料でもらえていたのが、突然保険料だけで月額300ドル近く飛ぶことになった。それでも、COBRAが使える期間はいい。それが終わってしまったら???その時、私は今のャXドクのャWションも決まっておらず、仕方ないのでミシガン地域で企業むけ通訳や末フバイトでもしながら、次の仕事に応募し続けるかなと思っていた。しかし正社員の仕事ではないので、保険がついてくるはずもない。COBRA切れたら、自分で保険はどうすればいいのだろう??困って、いろいろネットで調べたが、個人加盟の保険なんて少ないし、あってもひどく高かったり、、

たまたまシカゴのャXドクが決まり、COBRAが切れる前に新しい保険にはいれてラッキーだったのだが、シカゴの一年目にもらった保険は、いくつかの選択肢の中でも一番安い保険。シカゴ大学のキャンパスに毎日のように行っているのに、すぐそこにあるシカゴ大学の病院が使えない保険だったのだ。近所のファミリードクターはあっても、大きな病院はけっこう遠いところにあった。病気のときにあまり遠くの病院に行きたい気はしないし、しかもシカゴのサウスサイド。ただでさえ緊張して行かねばならないエリアに、病気のときに行くのか、、。考えるだけでくらくらした。その翌年、私の雇用ステータスが若干変更になって、健康保険が選べるようになったので、若干自己負担額が増えたが、大学病院が使えるもうちょっとよい保険に変えてもらった。

だが、歯科保険はもらえなかった。ミシガンの時は、歯学部があったので、学生のトレーニング用に比較的安価で治療を受けることができたが、シカゴにはそういったシステムもない。保険をどうしようと思っていた頃にサーチして、アメリカ人類学会のメンバー用の保険というのがあるのを発見して、それしかないかなーと思い、とりあえず歯科用プログラムに入ってみたが、ふたをあけてみれば近所の歯科医で、そのプログラムが使えるところはなかった。結局一年分お金払っただけで何も使わずじまい。シカゴの2年目から保険のチョイスができて、歯科保険2種類のうちから選ぶことができるようになったが(自己負担だが)、安いほうのにはいってみたところ、使える歯科が少なかったり、なかなか予約がとれなかったり、、やはり使えなかった。高いほうのは高すぎて、私の給料では入れなかった。

シカゴ大学でも、テニュアトラックやテニュアもちの教員は、高い保険にはいることができたりするのだろう。だが、私のようにテンャ宴梶[の人間ははいれない。このように、医療へのアクセスという面からも、階層/格差が細かく分けられているのがアメリカ社会。
そして、骨折したり熱をだしたりして、病院のemergencyに行っても、永遠にまる一日待たされたり、請求書がきてみれば本当にトンでもない額だったり、、私がアメリカの病院で日帰り手術をしたときも、使った絆創膏やガーゼ一枚から、すべて請求書に記載されていてびっくりした。

と、私も自分の経験を思わず振り返ってしまったのだが、この映画をみたアメリカ人は、よほど恵まれた状況にある限られたひとたち以外は、皆何かしら自分の経験を思い返すのではないだろうか。そして、「なぜこんな国になってしまったのだろう」とも思うのではないか、、という気がする。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。