北重人が『超高層に懸かる月と、骨と』で第38回オール読物推理小説新人賞を受賞したのは1999年で51歳の時であったらしい。長編デビューは『夏の椿』でそれから5年後(2004年)、第2作『蒼火』は2005年、第9回大藪晴彦賞を受賞したのが59歳の時だという。北重人は2009年8月に急逝している。
『白疾風』の主人公は、伊賀の忍びの三郎。信長の伊賀攻めで伊賀を追われ、北条滅亡の小田原攻めで仲間を失った三郎は、武蔵野の谷に落ち延びて、静かな生活を送っていたが、三郎の谷に山金が眠っているとかつの仲間が言いふらし、小田原北条の乱波・風魔党も暴れている。谷の村をめぐる攻防で、三郎は最後の忍び働きをする。その名が「白疾風」(しらはやち)なのである。時代物ではあるが、ミステリー仕立てでなかなかスリリングで面白い作品だった。