喉飴と鞭による映画・小説・漫画論評~このブログを見る者は地獄を見るだろう~

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ミセス・ノイズィ (2020) ★★★☆☆

2022-11-02 21:28:57 | サスペンス

Amazonプライムにて高画質レンタルして鑑賞。

監督:天野千尋

脚本:天野千尋・松枝佳紀

製作:井出清美、植村泰之、高橋正弥

製作総指揮:鍋島壽夫、横山勇人

出演:篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨

音楽:田中庸介、熊谷太輔

主題歌:植田真梨恵

製作会社:ヒコーキ・フィルムズインターナショナル=メディアプルポ

配給:アークエンタテインメント

上映時間:106分

 

知り合いの映画マニアのおじさんから紹介してもらった作品だ。

サスペンス映画とあるが、ほとんどコメディに近い。

 

「ミセス・ノイズィ」とは日本では有名な騒音おばさんの海外呼である。

 

騒音おばさん事件をモデルとして社会の歪みを描いた本作だが、

私は騒音おばさん事件について詳しく知らなかった。

映像で一瞬観たことがある程度だ。

事件当時、私は小学生であったため、あまり積極的にニュースを観ていたわけではなかった。

 

本作鑑賞後、改めて当時のニュース映像を観直してみた。

面白すぎる。。

いや、言ってる中身がいちいち面白いんだよな。もちろん近隣住民にとっては迷惑以外のなにものでもない。常軌を逸している。

故・塩川正十郎議員が、騒音おばさんのことを「キチガイの顔ですわ」と一刀両断しているのが痛快だ。

私が中学生の頃、担任も何かの話で騒音おばさんを例にあげて「あれはキチガイです」と、教師が「キチガイ」と堂々と発していることに衝撃を受けたものだ。

 

問題は、周りに突如としてキチガイが現れたときにどう対処するかだ。

本作では、キチガイにも理由が実はあった、という視点が後半から描かれている。

統合失調症(明言されてはいないが)の旦那を介抱する中で必然的に起きたのが布団を叩く行為だったのは説得力があるが、

そもそも不良品をわざわざ八百屋に持っていくような点で元々ミセス・ノイジーはイカれている。

しかし、純粋である。私はスーパーで働いていたが、少し商品の期限が迫っただけですぐ廃棄。

なにがSGDsか。実は感覚的には、ノイジーの方が正常だ。

我々の方が狂気の世界に生きている。

 

そして、主人公の小説家の真紀がノイジーに謝罪して完結するが、ノイジーもかなり異常であることに変わりはない。小説の題材にしよう、ということ自体は悪くないだろう。

だが、そもそもペンネームもばれ、身バレしている状況でそれをやるのは、ノイジーより狂気であるのは確定的に明らか。

炎上芸人であるウーマンラッシュアワーの村本を彷彿とさせる編集者、炎上を仕掛ける大卒の甥っ子。

甥っ子が特に何の罪も被らずに終わるのは後味が悪い。

『ジョーカー』を観ている時のような胸糞悪さがある作品だ。

しかし、こちらはあり得ないほどのハッピーエンドで終わる。

(自殺したのは、ハッピーではないが。)

 

少し疑問なのは、子供があのくらいの年齢なら一人で出かけても問題ないのでは?ということだ。この小説の世界観が過保護に思える(今のご時世の事情は詳しくないが。)

主人公の真紀がマスコミから逃げている時に、囚人服を彷彿とさせる服装であることに気付いた。

『真木栗の穴』と設定が似ている。どちらも身の周りのトラブルを小説家である主人公が実際に描く点は同じだ。

本作の場合、そもそも編集者が事情まで把握して掲載の許可とっているわけだから、真紀は裁判になっても出版社から守られる立場にはなるはずなんだがなー。

 

「騒音おばさん」はあらゆるエンタメに影響を及ぼしている。

高見沢俊彦も、騒音おばさんをモチーフにした楽曲を発表している。

 

本作は、狂気が狂気を生む連鎖のストーリーであったが、主人の自殺という最悪な結果になる前に、もっと早い段階で大家が介入して事情説明するなりすればよかっただろ、とか突っ込みどころは割とある。

そして、吉岡の旦那の頼りなさ。こいつは常に真紀に寄り添って味方する温厚な立場の人間でありながら、ノイジーを視点を理解する柔軟さも見せている。旦那から積極的に行動することはないが、お前がもっと早くなんとかしろよと思うわ。

釈然としないので★3に留めた。

以上

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