喉飴と鞭による映画・小説・漫画論評~このブログを見る者は地獄を見るだろう~

タイトルの通り、映画、小説、漫画を観終わった後に、感想を書くだけです。コメント頂ければ幸いです。

ミッドサマー (2019) ★★★★☆

2022-11-30 23:09:56 | ホラー

Amazon Prime にて劇場公開版の字幕版を鑑賞。

監督・脚本:アリ・アスター

製作:ラース・クヌーセン、パトリック・アンデション

製作総指揮:フレドリク・ハイニヒ、ペレ・ニルソン、ベン・リマ―、フィリップ・ウェストグレン

出演:フローレンス・ビュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ヴィルヘルム・ブロングレン、ビョルン・アンドレセン

音楽:ボビー・クーリック

製作会社:スクエア・ペグ、Bリール・フィルムズ

配給:ファントム・フィルム

上映時間:147分

製作国:アメリカ、スウェーデン

 

日本では2020年に公開。『ベニスに死す』で一世を風靡した美少年のビョルン・アンドレセンが出演するということで話題になった。当時、忙しくて観に行けなかったため、今頃になって鑑賞。

おい、アンドレセン、悲惨な役どころじゃねーか!!一瞬で退場とは…

あらすじ。心理学を専攻する女子大生ダニーは、双極性障害の妹が両親を道連れにガス自殺したことにより、深い悲しみの中にいた。

彼氏のクリスチャンはそんなダニーとは倦怠期にあり、重い荷物と感じているのもあるのか本当は別れたい模様。

とある日、クリスチャンは友人のスウェーデン出身の留学生ペレに誘われ、ペレの故郷の村に行くことになる。文化人類学専攻のクリスチャンは、卒論のテーマがまだ決まっておらず、インスピレーションが湧くかもしれないという思いもあった。

村人たちは一見カルトっぽく見えるが歓迎ムード。しかしその予感は的中しているどころか…

 

ホラー映画であることを思い出させてくれる、最後は怒涛の展開なのでした。

家族を全員失ったダニーにとっては、カルトの共同体で過ごした方が、クリスチャンといるよりは確かに幸せかもしれんわな。

私の身の周りにも、心理学専攻なのにカルトに染まった女がいて、まあ心理学学んでるから耐性身につけてるわけでもないし、ダニーは、自らその道を選んだわけだ。

統一教会も叩かれてるけど、信じて満足している人もいるわけだろうし、絶対悪といっていいのか?

しかし、本作でのホルガ村は、度を越したカルト団体として描かれている。

 

冒頭の、70過ぎた老人は自殺する風習は、『PLAN75』の最終形態であるように見えた。クリスチャンだかが発した「彼らにとっては施設に入れられる方が残酷かもしれない」と言った台詞は、施設従事者の私にとっては共感できるものがあった。自殺を儀式化するのも、衝撃的ではあるが納得感もある。

まあ、村なのに医療充実してないににそんなに長生きできんのかよ?という疑問もあるが。

だが、私が覚えてしまった共感も、かき消される展開となっている。

意図的に近親交配して障碍児を産み、村の共同体の志願者まで焼死させる始末。

セックスまで薬物を使用した完全な管理下で行われる。

どこまでが実際の事例を参考にしているか分からないから怖い。

文化人類学専攻の知り合いに聞いておきたいところだ。

 

鑑賞後は、やはりカルトは悪だと再認識させられた。それでもダニーのようにカルトしか心のよりどころのない人はいるのだということも。

 

老人問題については、施設に入れるというのも、彼らから見ればカルトだ。施設に認知症の老人を集めて尊厳を大部分削り生かしているのはカルトかもしれん。

以上

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セイント・フランシス (2019) ★★★★☆

2022-11-15 23:23:03 | ドラマ

飯田橋ギンレイホールにて字幕版を鑑賞。

監督:アレックス・トンプソン

脚本:ケリー・オサリヴァン

出演:ケリー・オサリヴァン、ラモナ・エディス・ウィリアムズ、チャーリン・アルヴァレス、マックス・リプシッツ、リリー・モジェク

製作国:アメリカ

上映時間:101分

字幕翻訳:山田龍

配給:ハーク

 

飯田橋ギンレイホール…総武線沿線にあり私にとってアクセスは格段に良いのにもかかわらず、一度も足を運んだことはなかった。

このたび、移転に伴う閉館のニュースを知り、初めて足を運ぶことに。

そんな人ばかりなのか、満席の7割以上は埋まっていた。

 

まず、立地だが、駅から近いものの、絶妙に行かなそうな場所にある。

まあ、飯田橋自体来ないんですけどね(笑)

上映前に、ランチを神楽坂炒飯で食べました。サインがたくさん置かれているのは、大盛りが売りで有名なのでしょうか。

さて、ギンレイホール自体は、椅子の座り心地も悪くないし、スクリーンの大きさもまずまずといったところなのですが、居心地のいい環境ではなかったです。

それは、マスク着用を未だに極端に強いてくるから、私のような池田信夫派(=コロナは風邪とは言わんまでもほぼ風邪みたいなもん派)にとっては、コロナ脳にしか思えなかったからです。もちろん他の劇場でもマスク着用は強いられますが、特にマスク外すのを最小限に抑えろとかアナウンスがうるさかった。

とはいえ、シネコンのように喚起のための設備はなさそうですし、来場者もばばあばかりだから仕方ない。

二本立てで、もう一本『ベイビー・ブローカー』も観ようと思えば観れたのですが、そんな体力はないのでやめました。外出券とか必要でめんどくさそう。ご年配の方々も、割と1本で帰る方が多かったです。

はい、とうとう本題。

作品の内容は、攻めたものでした。ギンレイホール、あっぱれ!

大学中退30代半ばフリーターの冴えない女が、ベビーシッターの仕事を通してレズビアンのカップルと心の触れ合い成長する、みたいな話でしょうか。

女性の生理をここまで生々しく描いた作品は観たことありません。

生理中の女性とヤるとあそこまで血まみれになるものなのですね。

そして、主人公女のダメさ加減。全く子供を見守ることができず、何度も怪我させてばかり。

こんな女でも年下の私くらいの男の彼氏はいるんですね。俺もダメフリーター女でも探すか。

今、アメリカで話題になっている(アメリカでは常にでしょうが)中絶の問題についても描かれています。

私は、本作を観て保守派に傾きましたね。本作観る限り、コンドーム拒否して生じゃないと気持ち良くないから満足しない男がクソだということになってますが、胎児の命を軽く扱っていると言われても仕方ないでしょう。

終盤、公園で授乳するシーン、アメリカでもダメなんですか。

日本でも同じこと言われそうですが、宮台真司なら注意してきたママに激怒しそうですね。

クレヨンしんちゃんかなにかに、屋外で授乳してるシーンあった気がするがなー。

例によって映画の前半は少し寝てしまいました、以上。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たまねこ、たまびと(2022)★★★☆☆

2022-11-10 19:51:04 | ドキュメンタリー

ポレポレ東中野にて鑑賞。

監督・撮影・編集・製作:村上浩康

出演:小西修、小西美智子

整音:河村大

タイトル:岩淵俊彦

宣伝美術:鯰江光二

宣伝協力:きろくびと

上映時間:91分

 

やっと、シアターエイド・チケットを使うことができました!

もうポレポレ東中野には当分来ないと思います。

 

本作は多摩川に捨てられた猫たちに、写真家の小西修を通して密着するドキュメンタリーである。

保護して室内で飼えばいいじゃないかと思うが、実は小西修氏の妻・美智子氏曰く、元々室内で飼われていて虐待されていた猫をまた室内で飼うのは適切ではない場合もあるという。

多くのたまねこたちは、ホームレスにより育てられている。文だけ読むと滑稽な話のように思えるが、監督曰くホームレスも、自分が世話しないと絶たれてしまう命があることで、生きる気持ちを奮い立たせられるのではないかと。

後半は一部寝てしまいました。ショッキングな映像も多かったです。

舞台挨拶では監督自身が登壇。監督には猫を育てた経験すらないが、監督が取材を通して感じたこと・考えたことを語ってくれた。

私自身も、妹が保護猫を連れてきて、家で飼っているが、虐待されていた経験があるゆえに、人には懐かない。それでも愛情を注ぎまくるとたまに心を許してくれることもあるのだが。

村上監督の他の作品にも興味が湧いた。多摩川縛りでいくつもテーマが転がっているのだ。

以上

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミセス・ノイズィ (2020) ★★★☆☆

2022-11-02 21:28:57 | サスペンス

Amazonプライムにて高画質レンタルして鑑賞。

監督:天野千尋

脚本:天野千尋・松枝佳紀

製作:井出清美、植村泰之、高橋正弥

製作総指揮:鍋島壽夫、横山勇人

出演:篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨

音楽:田中庸介、熊谷太輔

主題歌:植田真梨恵

製作会社:ヒコーキ・フィルムズインターナショナル=メディアプルポ

配給:アークエンタテインメント

上映時間:106分

 

知り合いの映画マニアのおじさんから紹介してもらった作品だ。

サスペンス映画とあるが、ほとんどコメディに近い。

 

「ミセス・ノイズィ」とは日本では有名な騒音おばさんの海外呼である。

 

騒音おばさん事件をモデルとして社会の歪みを描いた本作だが、

私は騒音おばさん事件について詳しく知らなかった。

映像で一瞬観たことがある程度だ。

事件当時、私は小学生であったため、あまり積極的にニュースを観ていたわけではなかった。

 

本作鑑賞後、改めて当時のニュース映像を観直してみた。

面白すぎる。。

いや、言ってる中身がいちいち面白いんだよな。もちろん近隣住民にとっては迷惑以外のなにものでもない。常軌を逸している。

故・塩川正十郎議員が、騒音おばさんのことを「キチガイの顔ですわ」と一刀両断しているのが痛快だ。

私が中学生の頃、担任も何かの話で騒音おばさんを例にあげて「あれはキチガイです」と、教師が「キチガイ」と堂々と発していることに衝撃を受けたものだ。

 

問題は、周りに突如としてキチガイが現れたときにどう対処するかだ。

本作では、キチガイにも理由が実はあった、という視点が後半から描かれている。

統合失調症(明言されてはいないが)の旦那を介抱する中で必然的に起きたのが布団を叩く行為だったのは説得力があるが、

そもそも不良品をわざわざ八百屋に持っていくような点で元々ミセス・ノイジーはイカれている。

しかし、純粋である。私はスーパーで働いていたが、少し商品の期限が迫っただけですぐ廃棄。

なにがSGDsか。実は感覚的には、ノイジーの方が正常だ。

我々の方が狂気の世界に生きている。

 

そして、主人公の小説家の真紀がノイジーに謝罪して完結するが、ノイジーもかなり異常であることに変わりはない。小説の題材にしよう、ということ自体は悪くないだろう。

だが、そもそもペンネームもばれ、身バレしている状況でそれをやるのは、ノイジーより狂気であるのは確定的に明らか。

炎上芸人であるウーマンラッシュアワーの村本を彷彿とさせる編集者、炎上を仕掛ける大卒の甥っ子。

甥っ子が特に何の罪も被らずに終わるのは後味が悪い。

『ジョーカー』を観ている時のような胸糞悪さがある作品だ。

しかし、こちらはあり得ないほどのハッピーエンドで終わる。

(自殺したのは、ハッピーではないが。)

 

少し疑問なのは、子供があのくらいの年齢なら一人で出かけても問題ないのでは?ということだ。この小説の世界観が過保護に思える(今のご時世の事情は詳しくないが。)

主人公の真紀がマスコミから逃げている時に、囚人服を彷彿とさせる服装であることに気付いた。

『真木栗の穴』と設定が似ている。どちらも身の周りのトラブルを小説家である主人公が実際に描く点は同じだ。

本作の場合、そもそも編集者が事情まで把握して掲載の許可とっているわけだから、真紀は裁判になっても出版社から守られる立場にはなるはずなんだがなー。

 

「騒音おばさん」はあらゆるエンタメに影響を及ぼしている。

高見沢俊彦も、騒音おばさんをモチーフにした楽曲を発表している。

 

本作は、狂気が狂気を生む連鎖のストーリーであったが、主人の自殺という最悪な結果になる前に、もっと早い段階で大家が介入して事情説明するなりすればよかっただろ、とか突っ込みどころは割とある。

そして、吉岡の旦那の頼りなさ。こいつは常に真紀に寄り添って味方する温厚な立場の人間でありながら、ノイジーを視点を理解する柔軟さも見せている。旦那から積極的に行動することはないが、お前がもっと早くなんとかしろよと思うわ。

釈然としないので★3に留めた。

以上

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする