喉飴と鞭による映画・小説・漫画論評~このブログを見る者は地獄を見るだろう~

タイトルの通り、映画、小説、漫画を観終わった後に、感想を書くだけです。コメント頂ければ幸いです。

ほどけそうな息 (2022) ★★★★☆

2022-09-16 12:58:59 | シリアス

ポレポレ東中野にて鑑賞。

 

監督・脚本:小澤雅人

企画・製作:佐藤剛

プロデューサー:木滝和幸

音楽:samayuzame

撮影協力:東京都福祉保健局少子化対策部

制作・配給:マグネタイズ

製作:Foster Care Promotion Project マグネタイズ

上映時間:44分

 

新人の児童福祉司の葛藤と、それを乗り越えるまでを描いた短編。

「ミニシアター・エイド・チケット」を使うために本作を観に行くつもりが、誤っていつもの癖でWEBからクレジット決済で予約してしまうという失態を犯した。もうWEB予約のできない映画のチケットなぞ二度と入手せん。

まあ、そもそも本作は連日満員でどうやら当日予約は不可能に近い作品だったからよい。年内にまた中野行かねばなあ

で、内容。

とても良かった。

同じ福祉職に就いてる私としても、担当となる対象の人間と対峙する上で暴れられたり、担当を変えてくれと言われたりすることはあることである。

それでも担当を変えずに成長を見届ける上司には、この新人ならもう少し踏ん張れる、という見込みというよりは、対象の母親と新人なら打ち解けることができるという確信がどこかにあっただろう。大したものである。

別に新人はミラクルを起こすわけではなく、割と教科書的なやり方で対峙していくことでうまくいく。しかし相当しんどさは伝わってくる。

そして、本作に不満があるとすれば薄っぺらい彼氏の存在。

カスミは仕事に打開策を見いだせず困っているのに、仕事をやめてもいいとか仕事のことは忘れろとか言い出したあげく最終的に逆切れする始末。

どうしてほしいか言ってくれないと困るつーけど、それが分からんから悩んでいるのである。なのに最後にはカスミからヨリを戻そうとするし。

まあ、しんどくて仕事やめたわしにとっては、カスミには頭が上がりませんわ。

カスミの「私がいなくなったらもっと事業所が大変になる」というのは完全に間違いなんですけどね。組織だから代わりはすぐ補充されるのだよ。

劇場で隣に座ってた人、結構涙ぐんでたな。

以上

 

 

同時上映につき同監督の短編作『一瞬の楽園 (2020) 』★★★☆☆』も鑑賞。

監督・脚本:小澤雅人

製作:田中紀子

プロデューサー:木滝和幸

出演:入江海斗、ブー・トゥ・ザン

上映時間:27分

 

ギャンブル依存症と外国人労働者問題を交錯させた面白い作品。

主人公屑すぎて笑う。

依存症かつストーカーじゃねえかw

英語教えるシーンは笑ったが。

これでベトナム人が一人暮らしだったら即プレイみたいな展開になったのか。

ラスト、結局クビにはならず済んだのか。

大切な友人を得たおかげで、ギャンブル依存症は克服できたってことでいいんですかね…?

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PLAN 75 (2022)★★☆☆☆

2022-07-10 01:22:44 | シリアス

まず冒頭に、安倍元総理がトラヴィスのような頭のおかしい犯人に銃殺されるという事件が起こりました。

事件は職場で休憩時間に知った。職場のテレビで助かるかどうか懸命に見守ったが、退勤直後、死亡のニュースを知った。

安倍さんを熱烈に支持していたわけではありませんが、外交は間違いなく超一流であったといって良いでしょう。

そして、戦後初めて元総理が暗殺されるという事態に直面し、とうとう戦前に戻ったかという絶望感に包まれています。

二・二六事件で高橋是清・斎藤実が暗殺されて以来です。高橋是清は財政論かなにかの講義で必ず出てくるので知っていたが、斎藤実は知らなかった。

五一五事件や二二六事件は、陸軍の犯行だが、今回は一般人によって殺された。原敬も頭のおかしい奴に刺殺されている。

総理経験者としては、7人目の犠牲者となった。

だが、トラヴィスが世界中にいることは周知の事実である。

今回ショックだったのは、安倍さんレベルの要人に対して、SPが1人しか付いていなかったということ。

SPは現役の閣僚に主に付くだろうから、人員が足りなかったのか。SPの人員配置は増やすしかない。

遠くからライフルで狙撃されたとかなら責められないが、国家公安委員長、警察庁長官、奈良県警本部長の辞任を求めます。

安倍さんは自民党最大派閥の長であり、実質最高権力者であった。それゆえに狙われやすいのは当然のこと。

今回の事件で安倍一強の自民党、特に安倍派は苦境に立たされるだろう。

日本にとっても強力な外交カードを失った。世界にとって大きな損失だ。

 

安倍さんが狙われた動機は統一教会絡みだというが、安倍さんを狙う動機としては意味不明であり、本当は教団幹部を狙っていたというのだから巻き添えもいいとこだ。安倍さん以外にも統一教会絡みの議員なんているのだから、ただ有名=最高権力者だから狙ったに過ぎない。

一強のリスクは、突然暗殺されたときに起きる。昨日で日本の未来は大きく変わったことは間違いないだろう。

ショックで昨日はなにもできなかったが、これは犯人の凶行のせいで日本の未来が変えられてしまったというショックだ。

 

私自身は、総理経験者は細川、小泉のように即引退するのがあるべき姿だと思っている。安倍、麻生のように総理退任後も派閥の長に居座るのは、再登板を狙っているかに他ならない。後継者が育たなくなるのだ。

原則、国の舵取りは一度切りにしないと、自分の党のクビを絞めることになる。今日の参院選では自民に同情票が集まっても、長期的には野党が有利になるかもしれない。

安倍さん自身の命も、引退して権力放棄すれば狙われにくかったはずだ。

だから私は安倍さんには引退してほしかったが、それは選挙で引退に追い込みたかったということであり、この凶行はすべての民主主義者を否定するものだ。

いずれにせよ、冥福を祈る。奇しくも安倍慎太郎と同じ67歳没。

PLAN75までまだまだ時間があったのに無念だろう。

そして、私も頑張り続けます。では本題。

 

親友が観たというので鑑賞。

 

監督・脚本:早川千絵

製作:水野詠子
   Jason Gray
   Frédéric Corvez
   Maéva Savinien

製作総指揮:小西啓介、水野詠子、etc

出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン

音楽:Rémi Boubal

制作:ローデッド・フィルムズ

配給:ハピネットファントム・スタジオ

上映時間:112分

 

シネスイッチ銀座にて鑑賞。シネスイッチ銀座は初来訪。

チケットをオンラインで購入したのだが、日付を誤って購入するという大馬鹿ミスを犯し1800円をドブに捨てた。こんなことは初めてだ。

これは、TGCグループのインターフェースがやや不親切であったことに尽きる。

銀座というだけあって、ばばあ多すぎワロタ。

館内はビールも気軽に買えるし、最高やん。

 

スクリーンは小さい。ばばあは紙袋をごそごそして手も何度もぶつけてくるし、やかましい。

あまり集中して観ることはできず、最初の一時間は半分寝ていた。

 

なんというか、静かな映画なのである。

音楽もほとんどかからないし、DOMMUNEで柳下毅一郎も言っていたが、淡々としすぎているのである。だから寝るのも無理はない。

そして、本作だからばばあじじいが多かったのだ、ということも理解できた。あ、ちょっと口が悪すぎましたね。前期高齢者と言い換えます。

結構、自分事だと思って観に来るんですね。

 

本作はやまゆり園の事件を彷彿とするシーンから始まる。

あれは障害者が標的にされたが、映画では高齢者施設。

 

75過ぎたら安楽死という。スーパーのパートも75歳まで働ける社会になった。高橋ヨシキが言うように、本当にレジ打ちはシニアばかりだ。

つまり、働けなくなったら死ぬことを推奨される社会が到来すると。

だがこれは既に起こっていて、年金が受給されるのは年々後ろ倒しになっている。それを映画ではストレートに表現しているだけ。

結局、倍賞千恵子演じる角谷は、最終的にPLAN75から離脱するが、その動機が弱い気もする。

岡部は選択する。

高齢者施設で働く自分にとっては、安楽死を迫られるのって、もっと非生産的な人なんじゃないかという気がする。

岡部も角谷も、元気な方の老人でしっかりしている。

年齢だけで社会にとって害と区切られるのは違和感がある。

映画でも、選択制ではあるのだが。

 

 

柳下が角谷が最後、自然と調和して生きようと決意するのは弱いと語る。

成宮との交流がきっかけで生きることにしたい、という風にはならなかったのか。

以上。

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スーパーノヴァ (2021) ★★★★☆

2022-05-11 02:12:20 | シリアス

TSUTAYAで借りてきて鑑賞。準新作のため500円近くした、高い…

 

監督・脚本:ハリー・マックイーン

出演:コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ、ジェームズ・ドレイファス

音楽:キートン・ヘンソン

製作:BBCフィルムズ

配給:ギャガ

上映時間:95分

 

認知症を題材にした作品ということで早くから目を付けていた。

監督はスティーブ・マックイーンの息子ではない。

 

ゲイカップルの片方が認知症を患い、そのことに二人で向き合っていくドラマ。

ゲイだということについては主題がおかれておらず、ゲイだから差別されるといった描写はない。

二人はともに作家とピアニストであり芸術家という設定もあるゆえ、ゲイでも自然であるというのもあるのだろう。

『ファーザー』が認知症が進行していく過程を描いているのに対して、

本作では認知症が進行する前の受容期の段階を描いているといえる。

認知症にかかったスタンリー・トゥッチ演じるタスカ―本人は、自殺を図ろうとするものの、自分の現実を割と受け入れている。相方は受け入れられない。介護施設のことをファッキンホームと呼び、週一回面会に行けばいいのか?最後まで俺が世話してやると感情的になる。

 

週刊文春のインタビューによれば、監督は介護施設で実際に働くことを通して認知症への理解を深めたという。

初めて、監督に会ってみたいという衝動が沸き起こってる。

映像も含めて、本当に美しい作品であった。

 

 

 

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ファーザー (2020) ★★★★★

2022-01-18 23:45:38 | シリアス

Amazonプライムビデオにて鑑賞。

監督・原作:フローリアン・ゼレール

脚本:フローリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン

出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ

音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

製作:F・コム・フィルム、トレードマーク・フィルムズCine@

配給:ショウゲート

上映時間:97分

 

去年のアカデミー賞主演賞受賞作品であり、当然観なければならないと思ってたが、介護の仕事をしている際は、プライベートでは介護の話題にはなるべく遠ざかろうとしていた(疲れるため。)

ようやく心に余裕が出てきたため鑑賞。

 

認知症の当事者から観た視点で常に描いているため、序盤はアンソニーに苛立ちを覚えるが、次第にアンソニーに感情移入できる作りになっている。

これまで観た介護を題材にした映画は全然面白くないものばかりであったが、本作は映画という特性を最大に生かした、認知症との相性が抜群な作品に仕上がっている。

あの時点で、アンソニーにどう接しているのが正解だったのか?と考えてしまう。しかしアンソニーのように認知症の混乱期の人に対してその時点での最適解を見つけるのは容易ではない。

本作に何か答えを期待していた自分がいたが、本作の結末は悲しすぎるものであった。

だが、毎度お馴染み宇多丸の評論を聴いて、少し考えが変わった。

 

とうとう老人ホームに入ったアンソニー。認知症が進行し人格が崩壊したからだ。感情失禁して映画は終わる。だが宇多丸は介護者である娘には安らぎが訪れたことに気づく。アンソニーにとってもさらに認知症が進行し、混乱期を過ぎれば安らぎが訪れることだろう。

 

本作は最も介護者にとって深刻な状態である混乱期を描いた作品であることが肝だ。

本作を観た後なら、認知症の方に対して接し方を少しでも向上できるだろうか?

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魂のゆくえ (2017) ★★★★☆

2020-02-29 11:25:29 | シリアス

TSUTAYAで借りてきて鑑賞。

 

 

監督・脚本:ポール・シュレイダー

出演:イーサン・ホーク、アマンダ・サイフリッド

音楽:ラストモード

製作:キラー・フィルムズ

配給:トランスフォーマー

上映時間:113分

 

赤坂見附の映画バー「ニュー・シネマ・パラダイス」にて、カウンターで居合わせた常連のおじ様にお薦めして頂いた作品。

というのも私が好きな作品を聞かれ、『タクシー・ドライバー』と答えたからである。私が来店したのも夜も深く23時過ぎとかだったので、そのあとからおじさまはもう完全に酔っぱらっていた。そのため、4時間くらいなぜ若者のくせにタクシードライバーが好きなのか詰められたのであった。

結果、まともに答えられなかった。やはり童貞映画だからじゃないですかねぇ。

で、本作はタクシードライバーで脚本を書いたポール・シュレイダーが監督を務めている。私は恥ずかしながらポール・シュレイダーが誰かすら知らなかった。

イーサン・ホークはガタカを観たので知っていた。常に真顔なイメージの好きな俳優である。

まあ、観た感想としては、タクシードライバーみたいな作品だなあと笑

 

しかしタクシードライバーよりだいぶ地味である。まあ最後に酒に溺れた男が最期にでかいことして死のうとするという点では本当に共通している。

本作では、実行に移そうとするも最終的にメアリーの愛の力で未遂に終わる。タクシードライバーも大統領暗殺は未遂で終わったが、ヤクザは殺した。こちらはとうとう何も成さず、ただ自分の身体を傷つけただけだ。

 

監督は親日家のようで、唐突に刺身が出てくるのが面白い。刺身はご馳走のようだ。

 

本作はけど童貞映画ではない。トラ―は息子を結果的に殺したことを後悔し、孤独な日々を田舎で過ごしている。マイケルと出会ったことで地球環境問題を1人で抱え、自らがキリストになろうとする。

テーマがとても現代的である。グレタを思い起こさせる。

 

地球温暖化が進む今日においての教会の役割は何なのか突きつけた作品。

突き詰めるとマイケルのように文明の中で生きる人間の存在を否定し自殺せざるを得なくなる。

地球環境のことを考えるなら、老人施設も潰すべきだろう。毎日出る汚染されたパットやオムツ類の量たるや。

答えは出ない。

驚いたことに、2020年の現在の世界ではウイルスが蔓延し、工場は閉鎖を余儀なくされており、結果大気汚染は和らいだそうだ。環境問題も自然の力で自浄するかもしれない。

 

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