フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 1~3月期のテレビドラマも放送から1か月半が過ぎました。私の感想を書く、恒例のテレビドラマ批評の3回目です。今回は、まだ書いていなかった作品と深夜枠ドラマについて書きましょう。


きみはペット (フジテレビ系 月曜深夜) 

 既に2月から放送されていた作品で、テレビドラマ放送は既に終盤。原作は、言わずと知れた小川彌生のマンガ作品。過去には日本でも韓国でもテレビドラマ化されています。日本では、小雪と松本潤のコンビでドラマ化されているので、そちらのイメージが強い人が多いかもしれません。可愛らしさでは松本潤よりも志尊淳が勝りますが、実はダンス(原作はバレエ)の世界では一流の踊り手という設定のカリスマ性は松本のイメージに合うのかもしれません。ちなみに韓国版ではあのチャン・グンソクが演じていました。今回のテレビドラマ作品の出来もなかなかですし、志尊淳の起用もあたっていると思いますが、既によく知られた内容ですし、深夜枠でもあるので、もう少し内容に冒険がほしいところです。


兄に愛されすぎて困ってます
 (日本テレビ系、水深夜) 

 夜神里奈の同名マンガのテレビドラマ化。6月末には映画化作品の公開が予定されており、映画化に先がけての先行テレビドラマ化ですから、映画の宣伝も兼ねているのでしょう。しかも、主演の土屋太鳳らキャストは、映画、テレビドラマともに同じ。ですから、テレビドラマの内容は、映画版で描かれていない裏エピソードとなるようです。
 本当は血のつながらない兄に溺愛される女子高生、突然おとずれたモテ期…と、内容はこれまでにも繰り返されてきたよくある設定。その分、何かの新しさや刺激がほしいところですが、それが実年齢22歳になった土屋太鳳のセーラー服でしょうか。22歳で高校生役をするのはけっしておかしくありません。しかし、知名度、演技力など、何をとっても他のキャストより群を抜いている土屋太鳳が、周囲に比べて一人だけ大人に見えてしまうのは私だけでしょうか。

100万円の女たち  (テレビ東京系、木曜深夜) 

 青野春秋の原作マンガのテレビドラマ化作品で、ラドウインプスの野田洋次郎が主演することで話題の深夜ドラマ。設定はとにかくミステリアス。売れない小説家の主人公のもとに、5人の女性たちがやってきて同居することに。しかも、5人がそれぞれ100万円を毎月主人公に支払うとのこと。いったいこれからどうなるのか、興味がつもります。
 ただ、初回は謎の設定を提示しただけですので、これだけでは何とも言えません。今後にどんな展開となるのか期待は持てるので、録画し続けるとは思いますが、あまり謎解きを引っ張られすぎるとついていけなくなるので、毎回それなりに楽しませてくれるかがカギになりそうです。


恋がヘタでも生きてます  (日本テレビ系、木曜23時)

 原作は藤原晶の同名マンガ作品。恋愛ドラマが視聴者に支持されない時代ということがしばしば言われていて、私もマスコミからそういう質問を受けることがよくあります。それに対して、「以前のような恋愛ドラマは受けないものの、現代には現代なりの恋愛ドラマはある」と答えることにしています。そのひとつの形が「恋愛苦手な人の恋愛」というテーマであり、これまでも『デート』『世界一難しい恋』などの作品が生まれてきました。
 その方向に沿った作品ということは言えますが、もとはマンガ作品ということもあり、王子様役の男性像が典型的すぎるのが、私には少し物足りないところです。ただ、強気のキャリアウーマンを演じる高梨臨と、ゆるふわな雰囲気を醸し出す土村芳の対照的な取り合わせは見どころですし、朝ドラでどちらも主役の脇を固めた二人が、今度は深夜枠で中心をどのように演じるかも興味深いところです。


孤独のグルメ6 (テレビ東京系、金曜深夜) 

 既にシーズン6と、もう説明の必要のない深夜ドラマ。「夜食テロ」と言われる深夜のグルメ番組ブームの先がけとも言える定番ドラマです。松重豊がひたすら一人で食べまくるドラマで、私もタイトルをパクらせていただいて、「孤独のグルメ」というタイトルのブログを何度も書いています。
 シーズン6のこれまで放送された2回見たところ、基本的にはこれまでと変わりませんし、変わらないところがいいところでもあります。初回は大阪に出張し、2種類の店を紹介して特別版ふうでしたが、2回目からは通常通りに戻りました。シーズン1など初期の頃は主演の松重豊以外はほとんど無名の俳優さんばかり出演していたのに、回を追うごとに出演者が豪華になってきました。近頃は、少し映るだけのチョイ役に有名俳優を起用するなど、すっかり俳優陣をぜいたくに使う番組になりました。俳優陣は豪華になっても食べる料理はあいかわらず庶民的。フレンチレストランで気どって食べる井の頭五郎を見たいとは思わないので、この構図は今後も変わらずにいってほしいところです。 


マッサージ探偵ジョー  (テレビ東京系、土曜深夜)

 深夜ドラマは、肩のこらない気楽に楽しめる普通っぽい作品と、実験的冒険的ないわゆる「とがった」作品とに大きく分かれます。この作品は明らかに前者の典型。しかも、作品冒頭に、これまで数ある「変わった探偵もの」のひとつだと、自分から宣言しているところも、変にとりつくろっていなくて潔いです。

 主人公の中丸雄一は対人恐怖があって、普段は人と喋るのが苦手。それなのに、マッサージしただけですべてわかってしまうという超人的能力を発揮します。その人物設定も面白いのですが、さわっただけでわかってしまうので、謎解きがあまりにも簡単すぎます。30分番組という放送時間が短い中のドラマなのでしかたありませんが、超人的な主人公ゆえに簡単に謎が解けてしまいすぎるというジレンマが生じるのが、少し物足りないところです。


書ききれなかった作品もありますが、それはまたに機会に。今回はこのくらいにしておきます。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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