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フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 4~6月期のテレビドラマも、始まってそろそろ1か月。深夜枠とプライムタイム作品について一度ずつ書いているので、まだ感想を書いていなかった作品について、ここまで見てきた私の感想を書いていきましょう。


母になる  (日本テレビ系、水曜22時) 10.6%→10.7%→9.3%

 3歳の幼稚園児が誘拐され、9年後に13歳になった息子と再会する母親(沢尻エリカ)の物語(3+9=13?)。日本テレビ系水曜22時枠は「働く女性」ものが多かったのですが、今回は親子愛、家族愛を正面から問いかける、今までとは違うテーマの作品となりました。また、誘拐された子をわが子として9年間育てていた女性(小池栄子)、子育てに疑問を感じている女性(板谷由夏)も含め、3人の女性があわせて描かれているようになっており、母親とは何かを考えさせる真摯な作品になっています。沢尻エリカがあまりにも真面目でいい演技をするので、ついつい「ふれくされて〈別に〉なんて言い出さないのだろうか」と心配になってしまいますが、どうもそういう心配は不要のようです。
 以前、『はじめまして、愛しています。』を取り上げたときにも書いたように、「親子」「家族」のあり方が自明のものではなくなっている現在、そのことを問いかける作品が必要とされています。民放の連続ドラマとしてはもっと派手さや、わかりやすく目をひくような趣向を入れたいところかもしれませんが、今後もそういった奇をてらうことなく、これまでの真面目な作りを続けていってほしいと思います。


釣りバカ日誌2 (テレビ東京系、金曜20時) 6.8%

 おなじみの長寿映画シリーズのキャストを一新してテレビドラマ化。今回はその第2シリーズです。映画シリーズで西田敏行が演じていた主役・ハマちゃんを濱田岳が、三國連太郎が演じていたスーさんをその西田が演じます。濱田のハマちゃんは最初から役にピッタリはまっていますし、西田のスーさんは三國よりいいくらいです。もちろん、三國連太郎は実に味のあるいい俳優でしたが、どちらかと言えば重厚で渋い演技が持ち味。建設会社社長なのに釣りバカになってハマちゃんとコンビを組んでいくスーさんには、西田敏行の方が向いています。また、みち子を演じる広瀬アリスにとっても、この役は当たり役でしょう。妹の美少女・広瀬すずに比べるとやや「美少女オーラのない広瀬アリス」とも言われますが(そんなこと言われてないか?)、その分、田舎出身で料理上手、ちょっと怒りっぽいけど実は心やさしいみち子さんは、広瀬アリスが演じると実によく似合っていて可愛らしいです。
 見逃してもどうってことないけど、テレビがついているとつい見てしまって、そこそこ面白い。『釣りバカ日誌』はすっかりそんな存在になっているようです。
(蛇足ながら、初回放送で松平健が『暴れん坊将軍』の音楽をバックに、馬に乗って登場するシーンには笑いました。)


4号警備 (NHK、土曜20時) 7.6%→6.9%→7.0%

 警察刑事や探偵の活躍する1話完結ドラマが大流行の昨今ですが、この作品は民間警備会社の警備員の、地道で懸命の警備ぶりを描いています。ちなみに「4号警備」とは人の身辺を警護すること。「1号警備」は施設の盗難等の警備、「2号警備」は雑踏の事故防止等の警備、「3号警備」は車両による運搬中の事故等の警備、のことだそうです。
 作中では、窪田正孝と北村一輝がバディを組みます。バディを組む二人が対照的な性格というのは定型通りですが、30分という短い時間にテンポよく事件とその背景が描かれ、現代の気短かになっている視聴者には適しています。また、二人それぞれに過去をかかえていて、30分で個々の事件を解決する一方で、二人の過去と現在が少しずつ描かれていくのも興味深いところです。
 30分で解決するので、話に深みがないのは否定できません。しかし、これまで民放1時間(CMを除けば作品時間は約45分)、NHK45分というドラマ時間の定型を見直して、現代の短期な視聴者にあわせたこの30分枠の作品が、今後増加し定着していくのかもしれません。


リバース  (TBS系、金曜22時) 10.3%→6.3%

 10年前に5人の大学生が山の別荘に出かけた。しかし、1人が車の運転中に行方不明になり、半年後に死体で発見された。それから10年。残った4人の周囲に「人殺し」と書かれた紙が届けられたり、貼られたりする…。湊かなえ小説のTBSドラマ化は『夜行観覧車』 『Nのために』に続いて3作目。いつもながら、人間の心の中に潜む悪意を抉り出すような、独特のストーリーが展開します。
 何度も書いたことですが、現代の視聴者は気が短くなっています。パソコンやスマホでほしい情報が瞬時に得られる時代にあって、10週間同じドラマを見続ける忍耐力を持ち続けるのは難しくなっています。1話完結ミステリーならともかく、長編ミステリーを見続けることを視聴者に強いるためには、1回1回のストーリーによほどの魅力がなければいけません。このドラマ『リバース』は、謎解きは脇に置いておいたとしても、4人と彼らを取り巻く人間たちの物語として十分に見られますから、その点は単なるミステリーではありません。しかし、この作品を見る視聴者は、そのような人間ドラマに期待するよりは謎解きを中心に見るのでしょうから、そこに作品と視聴者のギャップが生じます。私自身は謎解きよりも人間ドラマの方が好みなので、この作品は面白く感じられますが、多くの視聴者が10週見続ける忍耐力を持っているかどうか。結末近くにまた戻ってくるかもしれませんが、中盤の視聴者離れが懸念されます。



ボク、運命の人です。  (日本テレビ系、土22時) 12.0%→9.6%

 もうすぐ30歳になる会社員・正木誠(亀梨和也)の前に「神」と名のる男(山下智久)
があらわれ、「あなたの運命の人が近くにいる」、「2人が結婚しないと未来の地球が救われない」と不思議なことを言いだす…。という設定。その運命の女性・湖月晴子(木村文乃)にアプローチするのに、晴子はまったく誠のことを取り合りません。キャストはそれぞれ魅力的ですが、私にはどうも既視感が強すぎて、それが邪魔してなりません。
 亀梨・山下コンビとなると、もちろん『野ブタをプロデュース』(2005年)を思い出してしまいますし、特異な存在があらわれて、未来から過去にさかのぼる展開は『プロポーズ大作戦』(2007年)を思い出します。しかも『プロポーズ大作戦』の主演は山下智久。ええい、どうせそこまでやるなら、いっそヒロインも『野ブタ』と同じ堀北真希にすればよかったのに。って、ホマキは結婚して引退しちゃったので、それは無理か!
 ともあれ、私の既視感を吹き飛ばすような新たな展開を、今後は期待したいと思います。



櫻子さんの足下には死体が埋まっている (フジテレビ系、日曜21時) 6.9%

 観月ありさ、祝!26年連続30作目の主演ドラマ。原作は同名のウェブ小説で、マンガにもなっています。
 今回観月が演じるのは、「三度の飯より骨が好き」という骨マニアの標本士。外見とはうらはらに口が悪いが、周囲に起こる難事件を見事な推理で解決していきます。
 変人が難事件を解決していく1話完結ミステリーは、もはや現在のドラマの定番。その意味では何ら新しさがありません。この作品はそういう見方よりも、今回の観月の変人キャラを楽しむのがいいんじゃないでしょうか。あるときはドジなナース、あるときは鬼嫁、あるときは正義の主婦。毎回極端な性格設定を見事にこなす、観月ありさの「コスプレ」ならぬ「キャラプレ」(キャラクター・プレイ)を楽しむこととしましょう。



フランケンシュタインの恋 (日本テレビ系、日曜22時) 11.2%

 綾野剛がフランケンシュタインを演じる、ロマンティックミステリー。120年の時を経てよみがえったフランケンシュタインが人間の女性に恋をする物語です。
 人間と人間ではない存在とのラブ・ストーリーは、もはや近年の一つのジャンルになっていると言ってよいでしょう。その間存在がヴァンパイアだったり、幽霊だったり、サイボーグだったりと、ヴァリエーションはさまざまありますが、映画でもドラマでも多くの作品が既に作られています。人間同士の悲恋物語は既にあらゆる型が出尽くしたのかもしれません。これらの作品に共通する設定は、人間ではないことによって新たな恋愛の障壁、ときには不可能性すら描き出していることです。
 正統派二枚目役を演じる俳優はいくらでもいます。綾野剛をそういう役に起用するのは意味がありません。、『最高の離婚』のように、女性にはモテモテなのにダメダメ男とか、アクの強い役の方が彼には似合います。そういえば『仮面ライダー』で俳優デビューをはたしたように、綾野剛は人間じゃない役の方が似合うのかも。そういえば、イケメンながら、よく見ると爬虫類っぽい顔しているような気もしますし。その強み(?)を活かして、これから間と人間のせつない恋を存分に描き出していってほしいものです。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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