フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 




 テレビ東京で放送していた韓国テレビドラマ『マイガール』を見ました。
 放送していたから録画しておいたというだけで、それほど期待していませんでした。設定も貧乏な若い女性と金持ちの御曹司の組み合わせで、それを聞いただけで「またか」と言いたくなるようなドラマです。それに交通事故やら出生の秘密やらがからむという、もう韓国ドラマの定型パターンを詰め込んだ感じのドラマで、設定だけ聞くとうんざりしそうです。ところが見てみると、けっこうこのドラマを楽しんでしまいました。
 まず面白いのは、「嘘つきな女の子」という主人公ユリンの設定です。だいたいパターンだと、「貧乏だけどけなげで可愛い女の子」が主人公なのですが、このドラマの主人公は嘘が上手くて、その嘘つきの才能のおかげで人をだましながら生きてきたという設定。ここがポイントです。
 というのは、このドラマが最初から最後までこの「嘘」をめぐって物語が展開しているのです。
          
 まず、主人公ユリンと御曹司の事業家ゴンチャンの出会いは「嘘」がきっかけです。観光ガイドをしているユリンは、客が飛行機に遅れそうだからと得意の嘘で客を間に合わせようとするのですが、それをゴンチャンに見破られてしまいます。その後もゴンチャンの空いている別荘に住もうとしたり、そこになっている蜜柑を買って売ってしまったりするユリンに対して、「こんな嘘つきの子なら使える」と考えて、ある計画にユリンを引き込むのです。つまり、ゴンチャンとユリンの出会いは、ユリンの「嘘つき」という性質がなければ成り立たなかったわけです。
〈ここから「ネタバレ」あります〉
 途中は省きますが、出だしから「嘘」で始まるドラマはその後もずっと「嘘」をめぐって展開し、やがて結末近くで一世一代の大嘘をユリンがみんなの前でつく。しかし、ゴンチャンと愛し合うようになったユリンの嘘は、前と違ってもう人をだますことができない。つまり、ゴンチャンを愛するようになったことで嘘が下手になってしまうのです。
 そして、嘘が下手になってしまったユリンは……。
 ここまで「嘘」をめぐって首尾一貫させ、最初から最後まで「嘘」をめぐって話を展開させたドラマの構成力には感心しました。
          
 なお、もう一つ面白かったのは、主人公ユリンの妄想シーンです。起源は何なのか私はわからないのですが、先日『ちりとてちん』について書いたときに『めぞん一刻』を思い出すと書いた手法です。 『めぞん一刻』では五代君がすぐに管理人さんとのラブシーンを妄想し、その度に電信柱に衝突するというのがお約束でした。
 この『マイガール』ではユリンが良いこと悪いこと、さまざまに空想をし、それが実際の映像になって描かれています。ユリンの空想内容はかなり突拍子もないものが多くて、ここもなかなか楽しめる作りになっていました。
 こんなくだらないドラマを楽しんでしまって不覚、という気がしますが、それでも面白かったことは確かでした。

 



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