フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 4月から6月にかけてのクールのテレビドラマが始まりました。本来なら2~3回ずつ放送されたところで感想を書きたいのですが、あいかわらずの校務多忙のため、そういう余裕はなさそうです。実は1~3月期のテレビドラマ感想も「その1」だけ書いて、「その2」「その3」を結局書けませんでした。
 そういうことなので、初回を見ただけのまだ不確定な感想ですが、書けるときに少しずつでも書いておくことにしたいと思います。数字は初回視聴率(ビデオリサーチ社、関東地区)です。


コンフィデンスマンJP  (フジテレビ系、月曜21時) 9.4%

 3人の詐欺師の活躍を描く痛快コメディー。詐欺師といっても巨額の金が動くスケールの大きい事件ばかり。主演・長澤まさみの毎回違ったコスプレ、毎回だまされる豪華ゲスト…。しかし、それ以上に特徴になっているのは、『リーガル・ハイ』などを書いた古沢良太のスピーディーな脚本。あまりに破天荒な内容をリアリティがないと拒むか、そんなことを気にせずスケールの大きな詐欺を楽しむか。そこはもう好みの問題でしょう。こういう作品は、難しいこと考えながら見たらダメです。

シグナル (フジテレビ系、火曜21時) 9.7%

 刑事・警察もの、犯罪謎解きものは、近年大流行。特に1話完結ものが流行しています。しかし、私はもう一つ好きになれません。ごくごく大雑把にいえば、そこに「情念」が足りないんですよね。犯罪って、それを犯す人間も、その被害に遭う人間も、一生を棒に振るような大きなこと。それを扱うのに、焼け付くような「情念」がなかったら嘘ですよ。この『シグナル』の原作は韓国ドラマ。その「情念」の面では日本のドラマを大きく上回ります。続きものの犯罪ドラマを見続けるのはなかなかたいへんですが、その「情念」の濃さが視聴者を惹きつけ続けられるか。その点が大きな見どころです。

正義のセ (日本テレビ系、水曜22時) 11.0%

 原作は阿川佐和子の小説。主人公・竹村凛々子(吉高由里子)はまだ2年目の新米検事。頑固だがまっすぐな性格で、担当した事件で徹底的に取り組む…という話。その仕事を長くしているが故に効率を重視して細部に目をつぶってしまう人びとと、慣れていないからこそ懸命に愚直に目の前の案件だけに取り組む新人。作りに安定感があり、見終わって爽快感もありますが、『HERO』など、あまりによくある設定ともいえます。あとは『水戸黄門』のような視聴者、つまり新しさよりもマンネリでいいという視聴者を、どれだけつかめるかでしょう。

ラブリラン (日本テレビ系、木曜24時) 3.9%→2.7%

 天沢アキの原作コミックのドラマ化作品。中村アン演じる主人公・南さやかは30歳。15年間片思いの先輩がいるものの、いまだにバージン。それなのに、気づくと3か月が経っていて、片思いの先輩とは別の男性と同棲していた…。昔から記憶喪失はドラマの題材の定番ですし、近年はタイムワープする話も多くあります。そんな中で、この作品で何をしたいのか、初回を見てもその意図がわかりませんでした。2回目を見て少しだけわかってきましたが、近年の短気になった視聴者には初回が特に重要なので、もう少し早く見どころを提示してほしい気がします。

あなたには帰る家がある  

 山本文緒の小説のテレビドラマ化作品。2組の夫婦(中谷美紀と玉木宏、木村多江とユースケ・サンタマリア)を描いています。子育てが終わって仕事に復帰したら仕事内容が大きく変わっていたとか、大雑把な性格と細かいことに気になる性格が結婚生活で摩擦をおこすとか、それぞれリアリティのある場面が積み重ねられています。が、そうであるだけにややありきたりな感じがしてしまいます。ちょうど雨が降ってきたところに偶然出会って、車に乗せてあげるとか、あまりにも使い古された物語の手法すぎないでしょうか。となると、やはり最大の見どころは、木村多江の「幸薄(さちうす)女」っぷりでしょうか。なんか「雪女」を思い出して、ぞっとしてしまいました。


Missデビル (日本テレビ系、土曜22時) 

 鬼のように冷酷な人事コンサルタント椿眞子(つばきまこ=菜々緖)と、椿に振り回される社員たち。今や「ドS女」を演じたら日本一の菜々緖が、正にはまり役を演じる作品。これは、1回はどうしても見てみたくなりますね。とはいえ、初回を見てみた感想としては、少しひねりが足りないのではないかという気がします。椿の側に立ってダメ社員を切り捨てる痛快さを感じるわけでもなく、椿の奥にある複雑な事情や感情が見えてくるわけでもありません。菜々緖の美脚に見とれている間に(私は見とれていませんよ、念のために言いますけど)、これからこの作品を見続けさせてくれる見どころを示してほしいところです。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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