リクルートという会社は、一般的には、その営業力や、社員の独立心旺盛な起業力などがとりあげられることが多いが、『部下を動かす人事戦略』(金井 壽宏 高橋俊介、PHP新書)(※1)では、新しい着眼点を投げかけている。
それは、「とにかくやらせて、フィードバックする」という社内文化で、「とにかくやらせて」という部分だけを見れば、これまでのリクルートの文脈なのだが、本書では「フィードバック」文化に主眼をおいていて、これこそが、リクルートという「組織の発達」の原動力であり、数十年も前から(意識的か無意識的かは別として)導入している同社の先見性を評価している。
これを受け、組織と人事におけるフィードバックの重要性へと論は展開する。確かに、ここ数年、日本の企業でも人事評価において「フィードバック」は導入されているが、その付け焼刃性からさまざまな形で軋轢が生じている、ということになるのだが、これは実感としてよくわかる。
問題は3つで、(1)フィードバックを行う側のスキル (2)フィードバックされる側のスキル (3)ある程度のキャリアの人間はだれからもフィードバックされない というとになるだろう。本書では、これらの問題に対し、たとえば「要するに君の問題は…」と抽象化/概念化してしまうことの打開策、受け側のいなし方など的確で具体的なアドバイスを与えている。
ここまで読んで、日経産業新聞に掲載されていたある記事を思い出した。「少人数ミーティング増やしてみたら社内意志疎通バッチリ」(2004.9.17)(※2)というものなのだが、
といった例が紹介されているのだが、これはつまりはフィードバックの発想に相違ないだろう。
だいたい、いろいろとためてしまって一気にフィードバックを行おうとすると、どうしても抽象的な話になりがちだし、抽象的な話になるがゆえ効果が生まれず先延ばしになるといった悪循環もうまれてしまう。これを断ち切り、社内文化化するには、こういったミニミーティングなど、あまり計画性のない手法(まとまっていなくてもとりあえずコミュニケートする)を、とったほうが効果的だろう。
「フィードバック」の有効性を改めて考え直し、同時に、「すぐにバックする」ということの重要性を、強く意識していきたいところだ。
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(※1)以前にも少し触れましたが、企業の組織、キャリアパスなどの問題解決について、もっとも新しく正しく効果的な方法論を展開しているお二人の共著なので、役に立つ考え方がたくさん紹介されています。これからも気づいたときにとりあげ、わたし自信の思考の枠組みを拡げて生きたいと思います。
ただ、タイトルは、とても損してます。「部下を動かす」なんて言ってしまうとうしても、教条的なこと精神論的なことが想起されてしまうし、「人事」って言ってしまうと読者をセグメントしちゃいますよね。ぜひ一度、店頭、Amazonなどで、目次を確認ください。
(※2)日経産業新聞の記事は、上記のようなミニミーティングのほか、会議事前のメールの有効性、固定席をもたないフリーアドレスオフィスの有効性、さらには社内コミュケーション度チェックリストなども紹介していて、短い記事ながら、考えさせらるところがあります。たぶん、日経テレコムなどで、検索&DLできますよね。
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それは、「とにかくやらせて、フィードバックする」という社内文化で、「とにかくやらせて」という部分だけを見れば、これまでのリクルートの文脈なのだが、本書では「フィードバック」文化に主眼をおいていて、これこそが、リクルートという「組織の発達」の原動力であり、数十年も前から(意識的か無意識的かは別として)導入している同社の先見性を評価している。
雑誌の戻りハガキを分析して編集に活かす、研修をやればその効果を必ず検証し、次の課題を見つける。そのようにビジネスから人事まで、あるいはまた従業員、顧客、株主との関係において、あらゆる部分にフィードバックの概念を持ち込み、フィードバックが当たり前のカルチャーをつくったのだ。(P94-95)ということだが、もちろんこの原点は、江副氏にあり、
(「リクルートブック」の成功の後そういったヒット商品を生み出す能力がないと悟った江副氏は)「偉大なプレーヤー」であり続けるより、リクルートという組織のそこかしこに「リーダーを生み出すリーダー」になることの必要性をかぎと(P94)り、社員に起業に機会を与えると同時にフィードバックカルチャーを浸透させたとというわけだ。
これを受け、組織と人事におけるフィードバックの重要性へと論は展開する。確かに、ここ数年、日本の企業でも人事評価において「フィードバック」は導入されているが、その付け焼刃性からさまざまな形で軋轢が生じている、ということになるのだが、これは実感としてよくわかる。
問題は3つで、(1)フィードバックを行う側のスキル (2)フィードバックされる側のスキル (3)ある程度のキャリアの人間はだれからもフィードバックされない というとになるだろう。本書では、これらの問題に対し、たとえば「要するに君の問題は…」と抽象化/概念化してしまうことの打開策、受け側のいなし方など的確で具体的なアドバイスを与えている。
ここまで読んで、日経産業新聞に掲載されていたある記事を思い出した。「少人数ミーティング増やしてみたら社内意志疎通バッチリ」(2004.9.17)(※2)というものなのだが、
(富士ゼロックスのK営業部長は)オフィス内に36ヶ所ある打ち合わせ室の様子に気を配っている。そして「他部署の人たちのミーティングでも自分の仕事に関係しそうな顔ぶれだったら飛び入り参加する」といった例や、
(富士通コンサルティング事業部の)「営業から戻ったらすぐに意見をすり合わせ、次の仕事への足場を固められる」…5-10分程度のミーティングを思いたったっときにこなす。平均すれば1日に2-3回。
といった例が紹介されているのだが、これはつまりはフィードバックの発想に相違ないだろう。
だいたい、いろいろとためてしまって一気にフィードバックを行おうとすると、どうしても抽象的な話になりがちだし、抽象的な話になるがゆえ効果が生まれず先延ばしになるといった悪循環もうまれてしまう。これを断ち切り、社内文化化するには、こういったミニミーティングなど、あまり計画性のない手法(まとまっていなくてもとりあえずコミュニケートする)を、とったほうが効果的だろう。
「フィードバック」の有効性を改めて考え直し、同時に、「すぐにバックする」ということの重要性を、強く意識していきたいところだ。
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(※1)以前にも少し触れましたが、企業の組織、キャリアパスなどの問題解決について、もっとも新しく正しく効果的な方法論を展開しているお二人の共著なので、役に立つ考え方がたくさん紹介されています。これからも気づいたときにとりあげ、わたし自信の思考の枠組みを拡げて生きたいと思います。
ただ、タイトルは、とても損してます。「部下を動かす」なんて言ってしまうとうしても、教条的なこと精神論的なことが想起されてしまうし、「人事」って言ってしまうと読者をセグメントしちゃいますよね。ぜひ一度、店頭、Amazonなどで、目次を確認ください。
(※2)日経産業新聞の記事は、上記のようなミニミーティングのほか、会議事前のメールの有効性、固定席をもたないフリーアドレスオフィスの有効性、さらには社内コミュケーション度チェックリストなども紹介していて、短い記事ながら、考えさせらるところがあります。たぶん、日経テレコムなどで、検索&DLできますよね。
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