考えるための道具箱

Thinking tool box

PR雑誌『広告』は、文房具好きが作っているか?

2005-01-08 18:11:54 | ◎使
電通が発行するPR雑誌『アドバタイジング』は以前にも少し触れたけど、たとえば「団塊マーケティング」といったかたちで、面白くはないが、マーケティングなどを考える仕事に多少なりとも役に立つ特集を提供してくれている。いっぽう博報堂の提供する『広告』はどんなもんでしょう?

自宅にあるバックナンバーを振り返ってみると、たとえば東紀浩の特集や「日本はマンガなのだ!」といった特集など、『アドバタイジング』とはずいぶん様子が違う。マーケティング・マガジンというよりは、トレンド・エンターテイメント雑誌に近い。

そして、今回の文房具特集。
『広告』はぶだんはちょっとスノッブを気取っているような人しか買わないような雑誌なんだけど、文具マニアは基本的に目ざといため、本号については、すでに相当数のWEB、BLOG上で語られているに違いない。以下の、タイトルを見る限りでは、文具好きが比較的わくわくするコンテンツにはなっている。

◎特集/文房具が教えてくれたこと
●文房具ワールド 串田孫一/●ソニーの開発者が文房具について考えた!/●パリの文房具屋さんで「シルブプレ」/●文房具ピープル 街の文房具屋さんからコレクターまで/●ノートのひみつ ジャポニカ学習帳の学習/●人類にとって理想のノートとは? 明和電機/●ロディアに学ぶ ノートのつくりかた/●To Design The Ruled Line of Notebook/●もっと楽しい手帳ライフ案内! 信頼文具舗 和田哲哉/●佐野研二郎とクオバディスの工場に行ってきました。/●クオバディス 広告オリジナル手帳 服部一成 野田凪 佐野研二郎/●このアイデアは、この文房具から生まれました(藤田晋 小石原はるか みかんぐみ 谷山雅計 斎藤賢司 石原壮一郎 疋田智 イッセー尾形)/●文房具CMに見る「ウケる技術」!/●ペンは剣より強し! 消しゴムはもっと強し!?/●この文房具のココがすごいんです!/●文房具王たちのトリビアな午後/●もうひとつの文房具の世界/●ggが選ぶ! グッドデザインな文具たち/●デザインと文房具のアートな関係 MoMAに入った文房具/●文房具、エディトリアル系/●文房具のある風景 しりあがり寿 ヒロ杉山 野村訓市 蜷川実花/●文房具コラム9/●読書の時だって文房具は私たちの想像力をはばたかせてくれます 文藝 文房具 小山奈々子 片岡義男 鹿島茂 長嶋有


たしかに、最近書店に並ぶ文房具関連の書籍・雑誌とは一味ちがう切り口にはなっていて、博報堂人脈でなければ集まらないようなラインアップでもある。まさにガジェットらしい大量のテーマが用意されているし、価格じたいもPR雑誌だけあって廉価になっているので、基本的に文具好きの人は、盲目的に購入すればいいと思う。

…なんですけど、過度な期待は抱かないほうがいいかもしれないです。なぜなら、『広告』は、トレンド・エンターテイメント雑誌であり、そうである以上、トレンドを追いかけるという点で、その記事内容は表層的であり、新しい情報は一切ない、から。
あくまで「いまなぜかブームになっている、文具というものを遊んでやろうか」という軸を超えてはいないし、それゆえに、けっして文具好きが編集したわけではないというのがみえてしまうんですね。話題だからやってみた、って感じのね。
たとえば、博報堂に所属するAE(orAP)のうちあまり優秀でない人が、得意先企業に御用聞きツールとして持参して、担当部長に「いま文房具が流行ってんですよ」「ふーん文具ねえ」「だから新春キャンペーンのプレミアムはホッチキスで」「ふーん」とやっている場面を想像していただけば、わかってもらえるかもしれない。

文具好きが知りたいのは、おおむね(1)自分が使っている文房具の新しい使い方(2)自分が知らない新しい文房具の紹介/文房具店の紹介なんですよね。たとえば、『手帳200%活用ブック』がマニアにとって興味深いのは、他人の使い方のディティールがノウハウとして吸収できるうという点で(1)であり、『デザインステーショナリー』『趣味の文具箱』『机上空間』などのエイムックでの、これでもかの物量を目を皿にして探すのは(2)にあたる。

この点で『広告』は、マニアの期待には完全には応え切れていない。と思うんですがどうでしょう。たとえば、著名なアートディレクターがノートのリフィールをデザインする「To Design The Ruled Line of Notebook」は、けっこういい線いっているんだけれど、起用したタレントが文具好きでないだろうからどうしようもないアイデアばかりで残念だ(辻村久信さん除く)。「このアイデアは、この文房具から生まれました」なんてのは、上記(1)に近いんだけど、それぞれの使い方で徹底して詳解されていないため、肩透かしの感はいなめない。

たしかに、クオバディスの工場にってオリジナル手帳を作成するという試みなどは面白い。が、そこで創造された、オリジナル手帳が希少価値以外の価値のないようなデザインにあがってしまっているので(好きな人は好きなデザインなんだろうけど)、「流石!博報堂さん、手間もヒマも金もかかっているよ!」という感想しか浮かばない。「そのオリジナル手帳をおいらに作らせてくれよ」というのが、マニアとしての率直な意見だ。

まあ、考えてみれば過去のマンガ特集なども、そうだったわけで、雑誌としてはアマチュアだからしようがないか。そういう意味では、特集とは関係ないがもっともそれらしいオリジナルの「電通VS博報堂 編集長対決」という記事がいちばん面白かったりして。

って、まただらだらとやってしまいましたよ。いずれにしても論評するほどの話ではなかったですね。文具を辿ってこられたみなさますいません。まあ、買って損はしないとは思いますが。


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