そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

6月10日(木)

2010年06月10日 | 昔日記
 日付が変わったが、昨日は大学へ帰国報告書を出しに行った。その前に「志ま平」で蕎麦をたぐる。ついつい昼間から、米の汁もきこしめしてしまいましたわ。

 事務所で担当のNさんに報告書を渡した。マニュアルにはパスポートの出入国スタンプの捺されたページをコピーして添付せよとあったが、飛行機代は勤務先大学にもってもらったので、ボーディングチケットの半券も提出しなければなりませんよと言われた。それについては明日また出頭することで了解を得る。

 土産の類を同僚のメールボックに投げ込んだ。本来、在外から帰ってきてもお互い様だから、ふつう土産は不要だが、昔教務を一緒にやったなど、強い繋がりがある先生には、おしるしだけでも…ということである。

 研究室にあがると、修士課程の院生U君とK君が居た。土産を出して好きなのを選んでもらう。助教のFさんとTAさんには、オバマ・ミントを差し上げた。そのうち梅ちゃんも姿を見せたから、やはり土産を選んでもらった。そうだ先生、奨学金申請の所見を書いて捺印してくださいよ~と頼まれたから、お安い御用と用紙に書き込む。アメリカ式に褒めちぎり、こんなにも優秀な院生は過去に見たことが無い、将来は絶対に世界をリードする偉大な研究者になると確信すると、歯の浮くようなことを平気で書いた。梅ちゃん変な顔をしているから、K君にも同じように書いてやるから心配すんなと言っておく。アメリカの推薦所見は、ウソでも何でも絶賛しかせぬものだと、ついこの間学んだからな。学内奨学金なので、別に何も言われまいて…。(笑

 コース主任にご挨拶をせねばならんが、会議中でなかなかもどっておいでにならない。×××教授から学長選ではK候補をよろしくねと声を掛けられた。はいはいはい、絶対にK候補に投票いたしますから、大丈夫ですよ~と愛想笑いを浮かべてお返事申し上げた。

 学部長選挙については、誰もがそれ以外に選択肢はないと思う至極順当な候補者(ただしこの御仁が学部長になったら、教授会が倍の長さになることは火を見るより明らかだ)がお1人だけ立った旨の公報が、今朝ほど送られてきた。今回のキング・メーカーは誰ならむ?と、某教授の研究室に入り込んで裏事情の収集にあいつとめたところ、意外な話を聞かされる。この推薦人の顔ぶれならば…と私が予想した黒幕ではない方が、熱心に策動されたのだという。いやな感じだね。私らの世代は「根回し」というのが徹底的にキライである。だからDの世代は大嫌いなのだよ。

 やっとこさ会議が終ったらしい。教務室に顔を出して現学部長閣下に帰国のご挨拶をし、至極当たり前の米国チョコレートをお土産に差し上げた。教務スタッフで召し上がってくださいまし。それから、コース主任殿をコピー室でつかまえ、スモークド・サーモンをお渡しする。印鑑を預かっていただき、煩瑣な事務手続き万般をお願いしたのだから、これでは足りんくらいである。細かな話はまた明日ということにした。

 帰りに神楽坂辺をうろつく。まず「遠音」の女将さんである弥乃大夫師匠のお嬢さんに米国へ持って行った土産が好評だったとお礼を言い、「ラ・カーブ・イデアル」の逸平君(高校の教え子なのだ!)にもオバマ・ミントをあげて赤ワインを1本買った。それから「うつわや釉」をのぞいたら、前から頼んでいた金継ぎが仕上がっていたので引き取り、お茶を淹れてもらって女主人としばし外国談議に花を咲かせた。結論は、日本語には知らない者同士が気楽に交わせる言葉が無いということになった。「ハアイ」みたいな言葉は確かにない。「どうも」がそうか? 「ありがとう」は「サンキュー」とはニュアンスが違う場合があるが、「おおきに」「だんだん」は気楽に使えるのでやや英語っぽいのかも。

 地下鉄に乗ったら急にフラフラになった。前の座席の乗客が、不安そうな顔で様子をうかがっているのが分かる。家に辿り着くと、体中からエネルギーがサーッと抜けていくような幻覚に襲われた。体重計に乗ると、85㎏を切っている。げげげ、1日でが1㎏以上落ちたぞなもし! 家人が、要するに溜まりに溜まっていた疲れがどっと出たので、「大」の字になって寝るしか手立てがないと言う。私は男だから「太」の字だがねと、妙な返事をしたら殴られた。いつもは何とも思はぬ体が、けふはをかしくなつたるぞや。木曾義仲ぢゃないけれど、もう先が永くないかもしれませんな。