音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

白い暴動 (ザ・クラッシュ/1977年)

2011-07-16 | ロック (イギリス)


以前に、こう書いたことがある。70年代から80年代にかけて、一番影響を受けたのはポリスであり、一番衝撃的だったのはジャムであり、一番刺激的だったのはクラッシュであると。奇しくもこの3つのバンドが同時期に活動していたという事実。そして、私自身がこの時期にリアルタイムで彼らと接し、彼らを追いかけられたことに大いなる自負を持っている。そしてある意味でその理由として、私はあのピストルズに心酔しなかったのが大きな理由であるとも思い、今、改めて考えると、それは大変不思議であると思うが、これは、音楽は「出会い」であると共に、音楽を「自分の耳」で聴く前に余計な情報や、先入観を持ってはいけないという戒めでもある。私の場合、ピストルズはそれが多すぎたが、そのことはいずれピストルズのところで書く。

クラッシュは勿論パンク(個人的に音楽をジャンル分けするのは嫌いだが・・・)である。だが、面白いことにパンクな音を出しているのは、後にも先にもこのデビューアルバムだけである。また、この時代のパンク音楽が労働階級家庭出身が多いなかで、このバンドの中心者、ジョー・ストラマーは中産階級の出身であり、そういった部分も今後の彼らの音楽指向にも現れてくるのである。このアルバムは1977年4月に発表されたが、これはピストルズのアルバム発売より半年早い。だが、このクラッシュの作品は純粋にアルバムといえるかというと、何かの意図を持って作られたものではなく、デビュー以前からCBSが所有していたデモ・テープ等を編集したものである。なので、本人たちの意図とは裏腹に曲の順番もCBSが考案したものである。そう考えると、如何にも商業音楽っぽいのであるが、これは当時まだレコードを出していないものの、ピストルズの過激な社会行動がみられ社会問題になっていたり、一方でアメリカのパンク・シーンは既に胎動しはじめていたという点があったに違いなく、クラッシュの音楽的才能や領域広さの類まれな部分を、既に有能なプロモーターが見抜いていたとも言える。そういう時に必ず引き合いに出されるのが「ポリスとコソ泥」という曲であり、このレゲエの隠れた名曲を選んだ彼らの指向と、そのアレンジ性は、確かにこの作品の中では突出していて、これが事実、彼らの将来に繋がるのである。この曲がボブ・マーレイに認められたというのも有名な話である。そして、私が最も「刺激的」だと言ったのは、決してパンクの持つ衝動性だけでなく、クラッシュは今後、彼らがなにか動く度に常に当時の音楽界と私個人に強烈な刺激を与えてくれるからである。

この作品、1979年にはUS盤が、同名タイトルで発売されている。若干、曲の内容と順番が違うが、US盤の方がさすがにアルバムとしての構成がしっかりしている。しかし、寄せ集めのイギリスデビュー盤も中々面白く(というか、リアルタイムはこっちだし)、可能なら両方聴くことをお薦めしたいが、決して「聴き比べる」必要は無い。パンクもクラッシュも、そういう音楽ではないからだ(ちなみに、日本で後年、CMに使用され大ヒットした”I Fought The Law”はUS盤に収録されている)。


こちらから試聴できます。


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