やっと、いくらかは本が読めるようになってきた。本を読むのには、体力はあまりいらないが、かなり集中力がいる。猛暑の間は、コマ切れのごく短い時間で読める詩のアンソロジーみたいなものしか読めなかった(ぼくは短編小説はほとんど読む習慣がない)。
とりあえず、今年の初めに亡くなったアーシュラ・ル=グィンの作品を読み直している。「アースシー(ゲド戦記)」6巻を読んで、「西の果ての年代記」3巻を読んで、いま「ラウィーニア」を読んでいる(これは、4回目)。ル=グィンの作品でぼくが読んだのはこれで全部だ(彼女はSFをたくさん書いているが、ぼくはSFはほとんど読む習慣がない)。
「アースシー」は、以前読んだ時に大きな読み間違いをしていたことに今回気づいた。これだから、同じ本を繰り返し読むのは意味がある。
ル=グィンの作品について書くのは骨が折れる。というより、ぼくの手には余る。だから簡単に、以下のことだけ書くことにする。
読み直してみて改めて思うのは、彼女の作品がどんどん豊かになっているということだ。「アースシー」の最初の3巻と第4巻、さらに第5・6巻ではそれぞれ10年以上の間隔があいている。そのあとは、比較的短い間隔で「西の果ての年代記」3巻が書かれ、続けて「ラウィーニア」が書かれている。彼女が書き継いでくれてよかった。最初の3巻はいわゆるファンタジーであり、しかもファンタジーの最高峰とは言えない。例えば「指輪物語」や「果てしない物語」と比べたらよくわかる。
しかし「アースシー」の後半はファンタジーを書きながらファンタジーの枠を軽々と超え、人権、特に女性の権利と社会でのその充実した生き方、平和を実現するための基本的な姿勢、宗教的な考え方とその軛からの開放、人が自由であるためには何が必要か、など現代を見通せる目を獲得し、しかも物語の語り口が進化している。
「西の果て」は書き進むにつれて、物語が生まれ、語られ、記憶されること自体が重要なテーマの一つになり、「ラウィーニア」ではローマの詩人ヴェルギリウスの「アエネーイス」を下敷きに、その中に数行出て来るだけの女性を主人公に、時間と空間を全く自由に行き来して精妙な物語が紡ぎ出される。
…作品の中からどんどん引用して具体的に紹介しなければ、こんな抽象的な書き方をしても仕方がないのだが、多くの人が「ゲド戦記(アースシー)」でやめてしまうのはあまりにももったいないので、あえて書いてみた。
幸い、「西の果て」は文庫(4巻)になっている。「ラウィーニア」は単行本しか出ていないが、ぜひ、そこまでたどり着いて読んでほしい。
とりあえず、今年の初めに亡くなったアーシュラ・ル=グィンの作品を読み直している。「アースシー(ゲド戦記)」6巻を読んで、「西の果ての年代記」3巻を読んで、いま「ラウィーニア」を読んでいる(これは、4回目)。ル=グィンの作品でぼくが読んだのはこれで全部だ(彼女はSFをたくさん書いているが、ぼくはSFはほとんど読む習慣がない)。
「アースシー」は、以前読んだ時に大きな読み間違いをしていたことに今回気づいた。これだから、同じ本を繰り返し読むのは意味がある。
ル=グィンの作品について書くのは骨が折れる。というより、ぼくの手には余る。だから簡単に、以下のことだけ書くことにする。
読み直してみて改めて思うのは、彼女の作品がどんどん豊かになっているということだ。「アースシー」の最初の3巻と第4巻、さらに第5・6巻ではそれぞれ10年以上の間隔があいている。そのあとは、比較的短い間隔で「西の果ての年代記」3巻が書かれ、続けて「ラウィーニア」が書かれている。彼女が書き継いでくれてよかった。最初の3巻はいわゆるファンタジーであり、しかもファンタジーの最高峰とは言えない。例えば「指輪物語」や「果てしない物語」と比べたらよくわかる。
しかし「アースシー」の後半はファンタジーを書きながらファンタジーの枠を軽々と超え、人権、特に女性の権利と社会でのその充実した生き方、平和を実現するための基本的な姿勢、宗教的な考え方とその軛からの開放、人が自由であるためには何が必要か、など現代を見通せる目を獲得し、しかも物語の語り口が進化している。
「西の果て」は書き進むにつれて、物語が生まれ、語られ、記憶されること自体が重要なテーマの一つになり、「ラウィーニア」ではローマの詩人ヴェルギリウスの「アエネーイス」を下敷きに、その中に数行出て来るだけの女性を主人公に、時間と空間を全く自由に行き来して精妙な物語が紡ぎ出される。
…作品の中からどんどん引用して具体的に紹介しなければ、こんな抽象的な書き方をしても仕方がないのだが、多くの人が「ゲド戦記(アースシー)」でやめてしまうのはあまりにももったいないので、あえて書いてみた。
幸い、「西の果て」は文庫(4巻)になっている。「ラウィーニア」は単行本しか出ていないが、ぜひ、そこまでたどり着いて読んでほしい。
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