昨日、南高尾山稜を歩いてきた。
高尾駅始発の中央線の乗客の9割は登山客だった。陣馬山方面はすごい人出に違いない。ぼくは相模湖で下りてバスで大垂水峠に。バスを降りたのは5組ほど。南高尾は、高尾山や陣馬山がごった返している時でも、静かな山歩きができる。
紅葉はほとんど終わっているが、冬枯れの林には陽光が入って明るく暖かい。低山歩きには一番良い季節の始まりだ。すぐに汗をかくが、モンベルで買ったばかりの下着が比較的速く乾くので具合が良い。一か月ほど前に汗を冷やして風邪をひいたので、対策として試しに買ったものだ。近いうちに買い足しに行こう。
若い人たちに抜かれてゆくが、一か月ぶりとしては快調だ。むしろ、飛ばしすぎないように用心しながら歩く。巻き道を取らずにピークを踏んで歩いて、見晴らし台まで1h20。まだ早いのでここはコーヒーと豆大福でゆっくり丹沢山系と津久井湖の展望を楽しむ。いつもお昼を食べる“秘密の”休憩所にもよらず、小声で歌を歌いながら進む。前の日に家族と言い合いをしたのだが、そんなことxx喰らえ、だ。
ほぼ中間点の三沢峠の少し手前でお昼。このコースは、地元の山好きの人たちのボランティア活動のおかげだろう、あちこちにベンチがあるのもありがたい。こんなに休憩場所のある山は少ないのではないか。
右側に今度は城山湖が見えてくる。展望もこのコースのごちそうだ。草戸山で城山湖と別れて、ここからの下りがこのコースのしんどいところだ。小さな、ピークとも言えないような瘤の上り下りがいくつあることか。本当に道は下っているのか、それとも登っているのか? と毎度疑いたくなるのだが、それでも左手にふもとの気配が近づいてきて、「四辻」。
いつもはここから左に約15分で高尾山口駅に降りるのだが、今回はまっすぐ進んで高尾駅に出ることにする。四辻からひとつ登り返すと、目の前がぱっと開けて、まあたぶん、本日一番の展望。真東に開けているので、八王子や相模原あたり、もっと奥は東京や横浜方面だろうか。あのあたりを今コロナの瘴気が覆っているとは信じられないような明るい空の下に密集する建築群。手前、すぐ足元に見えるのはちいさな人家と墓地の連なりだが、人間はなんとちっぽけなものか、ちっぽけなんだからなおさら、くよくよ生きるのはもったいないな、と、改めて思う。風が気持ち良い。
高尾駅で一言堂のコーヒーを飲んで、電車で眠ってまた風邪をひくのは嫌だから、堀田善衛の「方丈記私記」を読みながら帰った。
今年は外出自粛で失った春の野草と新緑と高山植物と、風邪や検査で失った紅葉とを、これから陽だまりハイクで取り戻さなきゃな。