すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

深海魚・ハエ・呼び声

2020-11-07 20:12:12 | 夢の記

(注意! 全体としては悪夢です。人によっては気持ち悪いかもしれない部分があります。)
 ヨーロッパの地主の館のようなところ。といっても、人はみな日本人。ぼくはその館の執事兼料理人だ。前の人が辞めてぼくに代わったばかりらしい。大きな宴会のような集まりがあり、料理を出さなければならないのだが、そんな料理をしかも大量に作ったことがないので、途方に暮れている。あれやこれや心配なことが多すぎて、何から始めたらいいのかも分からない。
 ぼくの部屋は母屋と離れた納屋のような建物にある。夜、重い気持ちで部屋に帰ると、板張りになった屋根裏から、くすくす笑う声と、「やあ、久しぶりだねえ」という声が聞こえてくる。放浪生活をしている友人の声だ。響きの良い明るい声ですぐそれとわかる。「やあ、君か! 来ていたのか。これは助かった!」と喜びの声を上げる。彼は何でもできてしまう男で、彼に任せれば料理の問題は解決だ。事情を話すと、あっさり「いいよ」と言う。翌日、太った人たちが大勢、母屋の食堂に集まってくる。手品のように食器が並び、料理が出てくるのをぼくは茫然と見ている。

 …ここで場面が飛び、ぼくはその友人と海岸を歩いている。屋敷のすぐ近くが海なのだ。灰色の海だ。潮が退いていて、つるつるしたすべりやすい岩の上を歩いて行く。そこここに潮だまりがあり、泥のような水の中に巨大な口を開けた深海魚のような醜悪な生き物がいろいろいて、目をそむけたくなる。友人はぼくの前を黙って歩いている。食べられる魚を探しているのだろうか? でもここには居そうもない。
 とつぜん、潮が満ちてきているのに気付く。醜悪な生き物たちも迫ってくる。慌てて引き返す。滑って水の中に落ちそうなぼくの手を友人が捕まえてくれる。潮はぼくらの後からどんどん上がってきて、それは潮というよりは泥で、屋敷の敷地の一部も飲み込まれた。さらに、館に迫ってくる。「そうだ、今日もお客様たちに食事を出さなければならないのだったな」と不意に思いだす。
 納屋はすでに泥に囲まれてしまった。母屋に行くが、「この泥まみれの靴とズボンをどうしようか?」と思う。泥の中を歩いて母屋につくと、仕方なくそのまま上がる。誰もいない。食堂を見ると大量の巻き寿司やなんかが皿に盛られて食べかけになっている。というより、ほとんど手つかずにある。泥は床まで上がってきている。みんな慌てて逃げたのだろうか?
 …また場面が変わる。友人と、ぼくの部屋の小さな竈に焚いた火を見ている。「ぼくはもうこんな生活が嫌になったよ。君のように自由に暮らしたいよ。そうだ、今度二人で山登りに行こう」と言う。「彼こそ、山で生きるのが似合う男だ」、と思う。だが彼が「ぼくは山登りになんか行く金はないよ」と静かに言う。ハッとして、「そうだ、彼はどこでもお金なんか持たずに暮らしているのだった」と、アマい自分を恥ずかしく思う。
 …また変わって、また食堂の宴会の場面だ。虫がいっぱいいる。毛虫やら昆虫やら蛆虫やらが、床を這ったり空中を飛びまわったりしている。こんなところに良く平気でいられるものだ。大柄な女の一人が、「顔にハエがたかっているわよ」とぼくに言う。慌てて顔をなでると、ハエが飛び立つ。鼻の頭に一杯たかって、払っても払っても塊りになって戻ってくる。必死に払い続ける。うっかり口を開けたらベロを噛まれた。その痛さで目が覚めた。

 …この断片的な夢の中のどこかの時点で、家の外で「樋口さーん」と呼ぶ声を聴いた。夢うつつで、「こんなに朝早く、誰だろう?」と思ったが、起きることはしなかった。後で外に出てみたし、家族に訊いてみたが、実際に誰かが呼んだ様子はなかった。してみると、これは夢の中で、しかし夢の流れの外で、誰かが(何かが)ぼくを呼んだのだ。
 このことについては、明日もう少し書きたい。

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