朝日新聞2020年12月28日 特派員メモ
(特派員メモ)全集中 はやぶさ2の呼吸 @豪州・ウーメラ
地球に帰還した探査機「はやぶさ2」のカプセル回収の取材で年末、オーストラリア
南部の砂漠地帯を訪れた。
未曽有の森林火災で始まり、新型コロナウイルスが続いた豪州。騒然と過ぎた1年の
終わりに、夢のあるニュースを伝えないわけにはいかない。求められたのは、大気圏
突入時の流れ星のような姿の撮影だった。
だが、私は星空の本格的な撮影は経験がない。このために東京から送られてきた最新鋭
のカメラを三脚に付けて構えたが、撮り直しがきかないだけに、かなり緊張した。
予定時刻は午前4時前。満天の星をその20分前、雲が覆い、絶望感が広がったが、10分前
に再び、すっきり晴れた。夜空に目をこらし続けると、ぽっと現れた光る物体が流れ始め、
夢中で動きを追った。
何とか撮影できた、と安堵して、滞在先のホテルへ向かうため、暗い砂漠の中の道で車を
走らせた。しばらく行ったそのとき、突然目の前に何かが飛び出してきた。カンガルーだ。
ブレーキを踏み、ハンドルを切って間一髪避けた。もう一度、今度は道端を走る姿を必死に
よけて追い抜いた。
豪州にいると、田舎道で車にひかれたカンガルーの悲しい姿を見ることは珍しくない。
多くは夜間の事故だ。安全運転を心がけてはいたが、自分も加害者になりかねなかった。
直前に夜空に向かって集中したことが「予行演習」になり、運転中も集中力を保てていた
のかも。はやぶさ2のおかげだ、と感謝している。(小暮哲夫)
「はやぶさ2」のカプセルが着陸した砂漠地帯の道路。夜間は真っ暗で視界は狭まる=12月4日、
豪南部ウーメラ近郊、小暮哲夫撮影
豪州上空で大気圏に再突入したはやぶさ2のカプセル(動画から約30秒分を合成)
=2020年12月6日午前4時(現地時間)前、豪南部グレンダンボ近郊、小暮哲夫撮影
「はやぶさ2」のカプセルが着陸した砂漠地帯では、ダチョウに似たエミューの姿も見られた
=12月4日、豪南部ウーメラ近郊、小暮哲夫撮影
「はやぶさ2」のカプセルを回収するために宇宙航空研究開発機構が拠点を置いた
オーストラリア空軍の施設の前で。回収の2日前に報道陣に公開された=12月4日、豪南部ウーメラ
★管理人は、仕事でこの地豪州・ウーメラを数度訪れている。
実験場での仕事で遅くなり夜間、一人でレンタカーを運転して宿舎(ホテル)に戻る際、
要注意だ。カンガルーが車のライトを目指し向かってくることがある。
接触しかけたこともある。
レンタカーに設置されていないが、現地の人の車に強力なバンパーが設置しているのを
何度もみている。カンガルー除けのバンパーである。
朝、ホテルから実験場に向かう際、道端に倒れている(車に接触した)カンガルーを
何度か見かけたことがある。夕方には跡形がないほど処分されている。
夜間、車から外に出ることは夜行性の野生動物がいるので厳禁といわれたが、一度だけ
車外に出て星を見たことがある。地平線まで星が見え、地平線から星が昇ってくるのだ。