棚田で目立つ捕食者は蜘蛛と蟷螂だ。トンボも捕食者足りえるが蟷螂や蜘蛛にとっては満漢全席に等しい。量もたっぷりだし、個体数も多いからお好み次第だ。
今日も稲葉を渡り歩いている蟷螂を追っていたら、その先の竹竿に蟷螂がトンボを食っているのが目に付いた。近寄ってみると、既に頭部は切り離されてかぶりついているところだった。覗き込んだら、一瞬睨んだような後、顔を背けて食べている。
蜘蛛のほうがデリケートで、近寄ると餌から離れて隠れてしまった。トンボは真っ赤なショウジョウトンボが減って、オオシオカラトンボが圧倒的に多く、その中にウスバキトンボが混じっている。トンボだけ見ていると、まだ秋の風情は無いが、日が傾くと涼しさを感じるようになった。もう処暑なのだ。
ミンミンと暑き昼間も処暑なればやがて哀しきヒグラシの声
シャーシャーと時雨る盛夏もカナカナと聞けば哀しき日暮れ寂しき
生きよ森残暑厳しき今日の日も平家のごとくセミは望月
ひとけなき谷に満ちたり蒸す熱に負けじ森よりセミ時雨ふる
いくさ場へ生還ならぬ犠打で出で
石の弾投げる健児に水もなし
地獄世の健児盾ゆえ窟の露
連覇して運ぶ健児の幸ひとつ
うつせみの健児連覇で島に幸
児が運ぶ忘れた笑顔島ひとつ
「ヒェー、天国!」無口なおっさんも声を上げてしまう快適さ。呼吸するのも嫌になるくらい暑さに消耗してたどり着いた水場だ。両腕を脇の下まで水槽に入れ込んで、後頭部に落ち口の水をかけ続ける、言いようの無い快適さだ。養老の滝も実際はこんなことだったのだろう、なんて思いながら…。
まぶたを閉じていても、まぶたを伝い落ちる水の流れが紫のうろこのように眼に感じるのだ。しばし放心状態で、ようやくひと心地ついた。
予報は「一日曇り」だったが、結局は強い日差しの夏日となった。連日、32~33度程度の最高気温が続いているので、今日も午前で敵前逃亡した。
100坪以上はある棚田跡の台地の地拵えだったのだが、丸太や竹の廃棄地みたいになっていたのを、もったいないから草地から植栽地へと誘導するための手始めである。丸太は概ね片付けたが、腐食途中の竹がまだ車の進入を阻むくらいの凹凸になっている。これは涼しくなってからの作業だ。
除伐して手首かぶれた痒き夜ヌルデのたたりウルシのたたり
刈り払う排気の音は軽やかに我は息つき息つぎ払う
今日の日は仕事にならぬ下向けば眼鏡に溜まる汗で見えなき
森の中クロカワトンボちらほらと疎らに集う水筋の跡
棚田に行ったついでに「手乗りトンボ」に挑戦してみた。「挑戦」なんて言えば格好良すぎるが、何のことは無い暑くて作業を嫌っただけなのだ。
竹竿の先端に止まるオオシオカラトンボに指を近づけるも、脚に触れた段階で飛び立ってしまうことの繰り返しだった。一計を案じて、竹を握って人差し指を立ててみたが接近もしなくなった。
その間、帽子や肩に「ブブッ」と言う音と共に止まってくるので、その微妙な判断基準が理解できなかった。眼の高さに指を置いたからいけなかったのか、「自由の女神」か「誕生仏」のようにすればよかったのか、後者が正解の様な気もするが再挑戦するかどうかはわからない。なにしろ撮影できないから。
でも「ピカピカメガネ」と歌われたトンボの複眼は、オオシオカラトンボは真っ黒、ショウジョウトンボは真っ赤、オニヤンマはエメラルドグリーンだ。件のトンボは一体「何トンボ」だろうか。考えると今夜も眠れない…。熱帯夜で・・・・・。
「イッヒッヒー、やっと採ったぞー!」の気分だった。今期はタマムシの飛行を目にすることが多く、今日の昼休みにも栗の枝に止まったのに捕獲失敗していたからだ。帰路、車の走行中に案内板に止まったのが目に入って急停車、あわてた。
会友はテーブルのところに捕虫網を置いてある。さほどに今期は出現しているのだ。理由は不明だが、多少なりともエノキの植栽をしてきたから、それがプラスになっているのなら嬉しいことである。
指で掴まえようと、胴と頭部のところを摘まんだら、思い切り挟まれてしまった。危うく放り投げるところだった。仔細に見るとナイフの様に鋭利だ。痛いはずである。家で全身の接写をしようとしても動きが活発で大変だった。ガラスも陶器もプラスチックの容器もすべて這い上がって来るのだ。
ときて、食用油を塗ったらようやく這い上がりを抑えることが出来た。ヤレヤレである。しかし、滑ってひっくり返って暴れるタマムシを見て「?」。仰天動地だ、タマがない!。