軍隊の鬼教官と訓練生の話のような音楽映画でした。緊張感が凄まじいです。この若い監督デイミアン・チャゼルという名前は覚えてほいたほうがいいかもしれない。監督自身も主人公と同じような経験をしたことがあるようで、映像に説得力がありました。演奏部分はもちろん、人間ドラマも素晴らしい緊張感をもって描かれていました。そしてやはり最後のクライマックス「キャラバン」の演奏でのフレッチャーの表情の変化だけで見せる演技はうならされます。観る者に幾通りもの解釈を可能にさせることが作品に深みを与えています。単に復讐のための嫌がらせか、最高の演奏を引き出すためのプレッシャーか。物語中にチャーリー・パーカーとジョー・ジョーンズのエピソードを引用しているところから後者の解釈をしたいところです。パンフの文章の中に原題でもあるWhiplashという言葉本来の意味は「むち打つこと」=「しごき」のダブルミーニングにもなっており、監督が仕掛けた謎かけに一層興味がそそられます。
どんな状況でも諦めず這い上がっていく力強さが、ドラミングと呼応しているようで気持ちの良い作品でした。