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今日の筆洗

2024年04月03日 | Weblog
 「娘をクビにしてください」-。あるお母さん。娘が入ったばかりの会社にこんな手紙を出したそうだ。『となりの芝生』などの脚本家、橋田寿賀子さんのお母さんである。子どもの解雇を願い出る母親とは珍しい▼橋田さんは1950年、難関を突破し、松竹の脚本部に入った。ところが、お母さんが会社を気に入らない。「映画なんてやくざな世界」。橋田さんは会社側に母親の手紙を真に受けないよう頼み込んだという▼橋田さんのお母さんも入社式に参加していればこんな騒動も起きなかったかもしれぬ。新社会人がまぶしく見えるシーズンとなったが、最近の入社式は「親の同伴」が決して珍しいことではないそうだ▼ひと昔前なら奇妙な話に聞こえたが、企業側にも事情がある。大卒の新入社員のおよそ3人に1人が3年以内に会社を辞める時代といえど会社としてはせっかく採用した社員を失いたくない。入社式などで親に会社の良さを訴え、本人が退社に傾いた際に「引きとめ役」になってもらおうという狙いがあるらしい。「まず親を射よ」か▼先週、早稲田界隈(かいわい)でスーツやはかま姿の卒業生を大勢見かけた。親が入社式に出席しようとしまいとこれから山あり谷ありの道が彼らに待つ▼「どんな苦難であっても必ずや人生において意味がある」。岸田首相の新社会人に向けた言葉だそうだ。珍しく意見が合った。
 
 

 


今日の筆洗

2024年04月02日 | Weblog
 <たれとなく起きな起きなと花の朝>。花見時分の江戸川柳である。お花見が待ちきれずに皆、朝早くから起きだしたのだろう。にぎやかな雰囲気と笑い声が伝わってくる▼関東地方では6月下旬から7月上旬並みの陽気となった一昨日の日曜日。近所のサクラの名所で見かけた光景がなんとも不思議だった。たくさんのお花見客が集まっている。シートを敷いてお弁当を広げ、中には大きなテーブルを持ち出し、宴会に興じている方もいらっしゃる▼ここまでは毎年の花見風景だが、いつもと違うのはサクラが咲いていないことである。開花の遅れた今年のサクラが恨めしくもなるが、どなたも思い思いに春を楽しんでいる。花はないのにである▼はしゃいでいる子どもがいる。若い夫婦がいる。家族連れが並んでおむすびをほおばっている。こっちは飲み屋さんの常連の集まりだろうか▼「花のない花見」のにぎわい。それをながめている、こちらも穏やかな気分になる。ひょっとして花見の魅力とは花でも団子でもなく、集まっている「人」なのかもしれない▼1日で3カ月となった能登半島地震。被災地の花見はどうだろうと想像する。輪島、珠洲など被害の大きかった地域では転出者が増えていると聞く。難しい暮らしの中、別れがたき故郷から人が離れていく。見てくれる「人」を失ってしまったサクラもまた哀れである。
 
 

 


今日の筆洗

2024年04月01日 | Weblog
英国のサスペンスドラマを見ていたら、古美術商を名乗る人物がチャーチル元首相の愛用した高級腕時計が本物か、偽物かを見極めるという場面が出てきた▼どう鑑定するのかと思えば、この古美術商、腕時計に数秒触っただけで本物と断言する。「本物は冷たい」。ほんまかいな。フィクション上の話とはいえ、偽物のあふれる時代にこんな鑑識眼がほしくなる▼本物を見極める目がない以上、偽物と疑わしきものには近づかないのが賢明だろう。東京・原宿のアパレル店で人気ブランド「ステューシー」の偽ロゴの入ったパーカを所持したとして警視庁は商標法違反の容疑で店長を逮捕した▼最近、原宿では修学旅行の中高生らから偽物ブランドを強引に売りつけられたなどの相談が増えていたそうで、警視庁が警戒を強めていた▼「ステューシー」「クロムハーツ」と聞いても、小欄ぴんと来ない世代だが、偽物とはいえ中高生には安い買い物ではないのだろう。その昔、修学旅行のお土産といえば、絵はがきや観光ペナントだったが、お小遣いをはたいて買ったお土産が原宿の「偽ブランド」では悲しい▼春休みや進学で東京を訪れる若者が増える季節である。妙な客引きには警戒し、決して相手にしないことだ。四十数年前の春、上京後数日にして、新宿でインチキな映画券を売りつけられた身としては君たちが心配である。