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今日の筆洗

2020年08月08日 | Weblog

 あるとき、<オカイコさんを見倣(なら)って生きていこう>と、心に決めたそうだ。蚕は桑の葉を旺盛に食べて純白の糸を吐く。<秀才といわれた人が、すこし赤い本を読むと、赤いことばを吐く。黒い本を読めば、吐く糸は黒である…色のついたものは、ひととき美しく思えても、やがて色あせる>(『三河の風』)▼博学、博識にして、色あせない言葉を紡ぎ続けた外山滋比古さんである。ベストセラー『思考の整理学』の著者として知られる人が九十六歳で亡くなった▼日米開戦前、白眼視もされつつ敵の言葉だった英語を学ぶ道に進んだ。戦後は一転、英語や西洋文化がもてはやされる。敵視や礼賛の一色に染まらず、旺盛に学び独自の思索を深めている▼アイデアを形にするには<頭の中の醸造所で、時間をかける…しばらく忘れるのである。“見つめるナベは煮えない”>−など。近代の思考に漬かった頭を刺激してはなるほどとうなずかせる論考の数々。『思考の整理学』や随筆で、晩年まで人を魅了した▼三河地方は愛知県寺津町、現在の西尾市に生まれた。家康を生んだ地方には、明治政府に冷遇された意識が残っていた。大きなものに頼らず、くみしない気風「三河の風」に吹かれてきたと自認する▼老境について、この先の世の中について、風にたなびく白い絹のような新鮮で色あせない言葉をもう少し聴きたかった。


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