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今日の筆洗

2017年12月04日 | Weblog

ドラマ「想い出づくり」などの演出家、鴨下信一さんが昭和の流行歌についてこんなことを書いている。一九六〇年代の後半、フォークソングは古い流行歌の世界を内側から征服し、混じり合い、新しい歌の主流を形成していった-。例として、この曲を挙げている。六九年の「風」▼「ザ・フォーク・クルセダーズ」のメンバーで解散後は、その「風」「花嫁」などのヒット曲で知られる歌手のはしだのりひこさんが亡くなった。七十二歳▼今年四月のコンサートに車いすで出演し、フォークルメンバーだったきたやまおさむさんらと「風」を歌ったのが最後のステージになったと聞けばファンは悲しくてやりきれなかろう▼当時のフォーク歌手は古い歌謡曲の歌手から嫌われていたのか、はしださんが楽屋で騒いでいたら大物歌手から茶わんを投げられたときたやまさんが語っている▼それでいて、はしださんのヒット曲は当時のアングラ(アンダーグラウンド)志向のファンには不評で、あるフォーク集会では「帰れ」と非難された。双方からにらまれつつも、間に立って橋を渡し、それがやがて流行歌の新しい波になっていったか▼フォークルの長身お二人の間で歌う小柄なお姿の白黒映像が浮かぶ。昭和は遠く平成も残り少ない。振り返っても風が吹いているだけかもしれぬが、振り返らずにはいられぬ人との別れである。