村に入り、ふたりは広場へと向かう。
「何だ、誠治!」
「何も獲れなかったのか!」
先に戻っていた者たちが、おもしろそうに声を上げる。
「獲れてないのは、お前らも一緒だろ!」
「収穫なしかよー」
「一応、」
誠治は、先ほど涼が仕留めた鳥を見せる。
「おっ」
「いいじゃん」
誠治と彼らは談笑をはじめる。
涼には、話しかけない。
ただ、一瞥したきり。
「みんな、戻っているのか!」
今回の狩りのまとめ役が、声を上げる。
「報告を!」
いくつか、手が上がり、まとめ役は獲物を確認する。
「何だ。だらしないな」
今回は、少人数の狩りとは云え、皆、腕がある者ばかりなのに。
「食糧も底を尽きるぞ」
そこに、村長と補佐役が現れる。
「どうだった?」
「だめです。村長」
「仕方ない。時期的なものだからな」
補佐役が云う。
「ほかに何か報告は」
皆、首を振る。
と
誠治が手を上げる。
「どうした? 誠治、何かあったか?」
誠治が頷く。
「山一族がいた」
「……山?」
広場にいる者たちは、その言葉にざわつく。
「山、がいただと?」
「ああ」
「……そうか」
村長は手を叩く。
「誠治は報告を。あとの者は解散だ」
まだ、広場はざわついている。
皆、何かを云いながら、広場を去って行く。
村長は誠治に云う。
「補佐役に報告しろ」
「判った」
「涼!」
村長は涼を呼ぶ。
「お前はこっちだ」
涼は、村長の下へ近寄る。
「無事に戻ったか」
云うと、村長は歩き出す。
涼も、続く。
「この時期の狩りは、あまり期待するな」
村長が云う。
「天気が回復すれば、」
「山一族とは、何だ?」
涼は、村長の話をさえぎる。
「西と争っているのか」
「……まあ。そんなもんだ」
村長が頷く。
「だが、やつらが、西一族の村まで降りてくることはない。心配するな」
涼は、村長の背中を見る。
村長は振り返らない。
「そんなことより、お前には別の話がある」
「別の話?」
「そうだ」
「それは、東へ行くことの話か」
「違う」
村長が云う。
「話は帰ってからだ」
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