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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」5

2018年10月09日 | T.B.2024年

「おはよう」
「おはよう、今日もよろしく」
「私おやつ持ってきたよ」
「俺も俺も」

もう数回目の狩り。

予定より早く着いても、
お互いの顔を探して
自然とそちらに足を向ける。

律葉はどこかむず痒いような気持ちになる。

学術教室のクラス分けを
もっと小さくした感じ。

「律葉、今日は弓矢?」
「ええ」

狩りの際の武具は
数種類持ち歩くことが多い。
ほとんどが2種類。

目標が遠くに居る時に使う、小刀や弓矢の投擲器。
接近時に使うときの、殺傷力の強い
ナイフや剣・槍、力のある者は斧等の重い武器。

弓矢は好んで使う者が多い。

ほう?と、潤と響が覗き込む。

「使い込んであるな」
「譲り受けた物なのよ。
 少し大きいでしょう。
 力が要るけど飛距離が出るの」
「……なるほど~」
「使ってみたいって思っただろ」
「うんうん。
 律葉。休憩時間とか、どう?」

別にいいけど、と言いかけて
律葉は響をからかう。

「さて、どうしようかな」
「お願い。
 大事に扱うから」

ね?ね?と
響が手を合わせる。

「今日の狩りが終わったら
 きっと喉が渇いているわね」
「え?うん?」
「そうだな。
 きっと今が旬の果実のジュースが
 ぴったりだろうな」
「潤まで!?
 つまりおごれってこと??」

そうねぇ、と潤の話しに乗っかってみる。
おごりは別として、狩りの後に皆でお茶をするのも
良いのかも知れない。

「冗談よ。
 今日の狩りで落ち着いた時間があったらね」
「やった。
 ありがと律葉」
「律葉、こいつ遠慮無しにグイグイ来るから
 ちゃんと節度を持たせとけよ」

同い年で親戚なだけあって
潤は響を上手くこなしている。

「潤と、響は従兄弟だっけ?
 仲が良いのね」
「ちょっと違うけど。
 それにそんなに深い付き合いでもないよ」
「そうなの?」
「俺、他の村での生活の方が長いし」
「ああ、潤はそうだったわね」

彼は幼少期を南一族の村で過ごしている。
親は病院の医師、と
その珍しさで西一族の村に戻ってきた時は
しばらくその話題で持ちきりだった。

「俺よりは、
 響と秋葉の方が長いと思うよ」
「そうなの、秋葉?」

人の家の事はよく分からない。
振り返るが
秋葉は話しを聞いて居ないようだった。

うわあ、と
目を輝かせて律葉の弓を眺見つめている。

「持ってみる?」
「いいの?」
「いいわよ」

秋葉はまだ年相応に小さい。
成長に合わせて武器を選んでいくのだろう。

もしかしたらぐんぐんと伸びて
律葉を追い越すかも知れないが
今は妹が出来たような気持ちで居る。

「おとうさんも、
 少し大きな弓を使うの」
「そう」
「私もいつか使えたら良いな」
「練習するときは、
 私の弓を使っても良いわよ」
「本当!?
 ありがとう律葉!!」

自分にはすぐにうんと言ってくれなかったのに、と
思わない事も無かったが
響はうんうんと頷いて言う。

「女の子が仲良いのって
 良いよね」


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