TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」4

2018年10月02日 | T.B.2024年

「狩りの班はどうだ?」

律葉の父親が尋ねる。

不規則な時間で働いている父親とは
久しぶりに一緒に食事をとる。

「結構慣れてきた」

狩りの一族とは言え
毎日狩りに出ている訳では無い。

7日あれば、そのうち
狩りに出るのは2~3日。

それも、数多くある班を当番制で回しているので
あの3人と狩りで顔を合わせるのは
10日に一度か二度ほど。

まだ数回しか
狩りをしていない、けれど。

「上手くやれていると思う」

ふぅん、と父親は少し考える。

「響に、潤、秋葉、か」
「えぇ」
「大した班だな」
「………そう、ね??」

何と、父親が具体的に言わないが
制するように律葉に告げる。

「人前では使うなよ」
「分かってる」

ごちそうさま、と
律葉は立ち上がる。

食器を流しに運び、水に浸す。

「後で洗うから
 水につけておいて」
「ん」

返事を聞きながら
壁に貼ってある紙を見る。
そこには父親の予定が書き込まれている。

「夕方に出るの?」
「ああ、夕飯は作って行く」
「良いよ。
 呼び出しがあるかもでしょう」
「今日は大丈夫だろう。
 ベーコンがあるから、ベーコンポテトだ」
「お父さん、それ好きよね」

お茶を入れ、
自室に運び、本を読みながらお茶を飲む。

「おい、食器は洗って置いたぞ」

父親が部屋に顔を出す。

「ありがと。
 ………ノックぐらいして」

もう、と一言付け足して
律葉は立ち上がる。
鏡を覗き込み
肩の所で少し跳ねている髪を
整える。

「出掛けるのか?」
「うん、ちょっと買い物」

家を出て、
村の中央地に向かい歩いて行く、
律葉の家は端の方にあるので
少し時間が掛かる。

広場を抜け、
橋を渡り、
商店が集まる通りに向かう。

小物を扱う店に入り
気になった所を眺めて回る。

「律葉?」

呼ぶ声に振り向くと
棚の向こうから秋葉が顔を出す。

「こっちだよ」

ぴょんぴょんと跳ねて手を振る。

「秋葉も買い物?」
「うん。ペンを買いに来たの。
 狩りじゃない日に会うのも良いねぇ」
「えぇ」

ふと、律葉は周りを見回す。

「潤と響は居ないの?」
「居ないよ~。
 親戚だけど、それはそれ」

それに、と
店内を見回しながら秋葉が笑う。

「こんなかわいいお店
 男の子は入りにくいよね」
「確かに」
「―――律葉は髪留め買うの?
 もうすぐ結べそうだもんね」

そうなのよ、と言いながら
律葉は棚を見回す。

「うーーん」
「良いのあった?」
「なんか、ピンと来る物がない」
「それは仕方無い」

しばらく悩んで、
他の店も回ったが
これという物が無く
結局何も買わずに家に帰る。

「ただいま」

玄関を開けるが、
家の中は暗い。

やっぱり、とため息をつき
明かりを灯す。

テーブルの上に、
呼び出しがあって出る事になった、と
父親からのメモが残されている。

「だから言ったのに」

さて、と手を洗い、
野菜庫からジャガイモを取り出す。

「私はスライスした方が
 好きなんだけどな~」

伯母がいつも届けてくれる
手作りパンを食べながら
律葉はベーコンポテトを作る。


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