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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「律葉と秋葉と潤と響」6

2018年10月16日 | T.B.2024年

うーん、と班長の潤が首を捻る。

「今日は調子が悪いな」

狩り場に辿り着くも、
獲物を見つける事が出来ない。
そう言う日もある。

「前回の狩りから日が浅いからね。
 まだ警戒しているのかも」

響が言う。
上手く狩りが出来ない理由はいくつかあるが
今回はそれだろう。

「別の班はどうだろうね」
「あちらの山には追われた動物が逃げ込みやすいから
 向こうに赴いた
 他の班に任せるしかないな」

「でも、まだ時間はあるでしょう」

律葉が言う。
獲れなくてもいいや、ではない。
西一族は狩りの一族なのだから。

「それは、もちろん」

続けるよ、当たり前だろう、と
潤が答える。

「……少し奥まで行ってみる?」

どうかな、と
響が提案する。

「ええ」
「でも結構歩く事になるぞ」

大丈夫か?と潤が問いかけ
そうか、と、律葉は秋葉を見る。

「私は平気だよ。歩くの大好き」

でも、と
秋葉は空を見上げる。

「もしかしたら雨になるかもね」

空に雲がかかりはじめている。

「それじゃあ、2時間。
 引き返す時間もあるからな。
 獲物が獲れても獲れなくても
 2時間で帰ることにしよう」
「了解」
「はいはい」

「分かったわ」

律葉もその意見に頷く。

もちろん山の奥に行けば行くほど
獲物が増えるが、同じく危険は強まる。

「秋葉、歩くの
 きつくなったら言ってね」
「ありがとう、律葉。
 大丈夫よ」
「絶対に大きな獲物を仕留めるから」
「ふふふ。
 そうしたら持って帰るの大変だね~」

他の班の助っ人を
呼ばないといけないかもね、なんて
2人で盛り上がる。

「獲れなくても時間が来たら
 帰るからな」

後ろを歩いていた潤が
2人に声をかける。

「最初から諦めないで。
 獲れた方が良いに決まっているでしょう」
「無理するなって言っているんだよ」

そうは言うけど、と
律葉は振り返る。

「だって、狩りで成果を上げないと、
 意味が無いじゃない」
「一回ぐらいなにも獲れない時があっても
 良いじゃないか」
「……ダメよ。そんなの」

「律葉は真面目だな」

気負いすぎるなよ、と
言いながら潤は律葉を追い越して、響に声をかけに行く。

「………なっ」

潤に他意は無い。
それでも、
律葉はどこか引っかかる。

「律葉?」

きちんと狩りをしようと、言っているだけ。

昔からそう。

真面目だね、なんて、

今まで律葉に向けられた言葉は
褒め言葉ではなかった。

「………」


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