TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「東一族と裏一族」16

2018年10月05日 | T.B.1997年

 裏一族が見る方向を、蒼子は見る。

 風が吹く。

 そこに、

 光院。

「早いな。大将さんにでも云われたか」

「どうかな?」

「ああ、嫌だなぁ」

 そう云いながらも、おもしろそうに。
 その笑いは、愉快と云わんばかりに。

「光栄なんだけどねぇ」

 裏一族は蒼子の腕を掴んだまま、云う。

「俺らみたいな裏もんが、一族の重役に会えると云うこと」
「それはよかった」
「あんたの弟さんにも会ったぞ」
「そう」
「怖いな、あいつ。裏に勧誘したいぐらいだ」
「伝えておくよ」

 裏一族は、一歩出す。

 その動きに光院は首を振る。

「ここまでって意味か?」

 裏一族は、地面を指さす。
 そのまま指を横に動かし、線を表す。

 境界線、の意味で。

「中には入れてくれないんだな」
「それはどうかな」
「試していいのか」
「それもありだ」
「ふーん」

 裏一族は、光院の横にいる狼を見る。

「でも獣がいるからなぁ」
「この子は、怖くない」
「いや、獣は友だちじゃないから。俺は」
「そうか。西一族は動物が怖いのか」
「…………」

「さあ、東一族を放してくれないか」

「…………」

「どうした、裏一族?」

 瞬間

 裏一族は、蒼子を突き倒す。

 取り出した剣を、振り下ろす。

「やめろ!」

「きゃ、」

 蒼子は顔を伏せる。

 が

「!!?」

 足下が光る。

「これはっ」

 裏一族の足下が光る。

「何」

 東一族式紋章術。

「くっ!」

 あまりのまぶしさに、裏一族は目がくらむ。

 蒼子も目を閉じる。

「!?」

「これはっ」

 …………。

 …………。

 風。

 何も

 聞こえない。

 蒼子は、顔を上げる。
 目を開く。

 横に、

 裏一族はいない。

「これは……?」

 光院を見る。
 光院は頷き、指を差す。

 その方向に

「安樹」



NEXT