裏一族が見る方向を、蒼子は見る。
風が吹く。
そこに、
光院。
「早いな。大将さんにでも云われたか」
「どうかな?」
「ああ、嫌だなぁ」
そう云いながらも、おもしろそうに。
その笑いは、愉快と云わんばかりに。
「光栄なんだけどねぇ」
裏一族は蒼子の腕を掴んだまま、云う。
「俺らみたいな裏もんが、一族の重役に会えると云うこと」
「それはよかった」
「あんたの弟さんにも会ったぞ」
「そう」
「怖いな、あいつ。裏に勧誘したいぐらいだ」
「伝えておくよ」
裏一族は、一歩出す。
その動きに光院は首を振る。
「ここまでって意味か?」
裏一族は、地面を指さす。
そのまま指を横に動かし、線を表す。
境界線、の意味で。
「中には入れてくれないんだな」
「それはどうかな」
「試していいのか」
「それもありだ」
「ふーん」
裏一族は、光院の横にいる狼を見る。
「でも獣がいるからなぁ」
「この子は、怖くない」
「いや、獣は友だちじゃないから。俺は」
「そうか。西一族は動物が怖いのか」
「…………」
「さあ、東一族を放してくれないか」
「…………」
「どうした、裏一族?」
瞬間
裏一族は、蒼子を突き倒す。
取り出した剣を、振り下ろす。
「やめろ!」
「きゃ、」
蒼子は顔を伏せる。
が
「!!?」
足下が光る。
「これはっ」
裏一族の足下が光る。
「何」
東一族式紋章術。
「くっ!」
あまりのまぶしさに、裏一族は目がくらむ。
蒼子も目を閉じる。
「!?」
「これはっ」
…………。
…………。
風。
何も
聞こえない。
蒼子は、顔を上げる。
目を開く。
横に、
裏一族はいない。
「これは……?」
光院を見る。
光院は頷き、指を差す。
その方向に
「安樹」
NEXT