呪文をもとに魔法を発動することを、通称「魔術」
陣、つまり、魔法陣をもとに魔法を発動することを、通称「紋章術」
一族間で、呼び名は違うものの、
魔法の発動の仕方は、主にふたつ。
前者は、海一族や北一族などが得意とし、
後者は、山一族や東一族が得意とする。
「それじゃあ」
トーマの問いに、アキラは頷く。
司祭を倒しても、魔法陣の術者は司祭ではない。
この足元の魔法は、止まらない。
「……気付いたか」
司祭が云う。
「だから云っただろう。無駄なことはするなと」
魔法陣の光が、さらに強まる。
ふたりの力を削っていく。
まるで、命を吸い取るように。
「司祭様、……あなたもこのまま、死ぬつもりなのか」
魔法陣の中にいる限り、
司祭もまた、その命を奪われているはずだ。
「私は十分生きた」
司祭が云う。
「老い先短い命だが、彼女に渡せるのならそれもよい」
「…………っっ」
アキラは片膝を付く。
「まずいぞ、このままでは」
司祭はふたりに近寄る。
「トーマ。それに山一族よ。苦しんで死にたくはないだろう」
さあ、教えろ、と。
「もうひとりの娘……、生け贄はどこだ」
アキラは首を振る。
答えることは出来ない。
だが、この魔法陣のすべてが範囲となるのならば、
カオリの命も危ない。
司祭はトーマの前に立つ。
「答えないのか。……残念だ」
「ぐっ!!?」
「トーマ!!」
司祭は、地に付いたトーマの右手に、剣を突きさす。
「同じ一族のよしみで、あまり苦しませたくはないのだが」
「っっ!!」
「さあ、早く居場所を云うのだ。……次は左手か、それとも足か?」
司祭は再度、短剣を振り上げる。
「待て!!」
その瞬間、
ふ、と
魔方陣の光が消える。
「………え?」
洞窟の中に、その飛び散った光がゆっくりと降り注ぐ。
「まさか、」
「術が完成したのか?」
アキラとトーマは、顔を見合わせる。
いや、
違う。
「これは」
アキラは戸惑いながら答える。
「術が、……解除された?」
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