TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」41

2018年03月09日 | T.B.1998年

 アキラとトーマは顔を見合わせる。

 生け贄。

 司祭は、カオリのことを云っているのだ。

「この者と、もうひとりの生け贄」

 そして

「お前たちが倒した裏一族」

「司祭様!」

 トーマが声を出す。

「生け贄はもう必要ない。先ほど、そう云った!」

「いや、必要なのだ」

「司祭様……」

 トーマが首を振る。

「騒ぎを聞いてここへ来たにしては、あなたは早すぎる」
「だから、何だ」

「まさかとは思うが、……」

 ふたりは息をのむ。

「あなたも、紛れ込んだ裏一族なのか」
「紛れ込んだ……?」

 その言葉に、司祭は笑い出す。

「紛れ込んだ、とは!」
「…………?」
「私はもともと海一族だよ」

「なら、」

「自分の一族に嫌気がさして、裏へと渡ったがね!」

 再度、司祭は手を差し出す。

「さあ。生け贄を」
「それは出来ない」

 アキラが云う。

「その生け贄をどうするつもりだ」
「山一族よ」
 司祭が云う。
「何も聞くな。年長者に従うのがお前らの一族だろう」
「断る」

 アキラは、弓を持つ。
 トーマも短剣を取り出す。

「やめなさい」

 司祭は余裕の表情。

「ここは、我々の魔法陣の中だ」

 勝ち目はない。

「ほかの裏一族も云っていただろう。お前たちの命も使ってやる」
「司祭様……」

 ふたりは、はっとする。

 足元の魔法陣が光りだす。

「これだけの命があれば、彼女も」

「…………?」

「感謝するがよい。お前たちの命は、彼女のために使われるのだ」



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