ほのかな灯りが揺れる。
足元には、淡く光る魔法陣。
「トーマ」
アキラが声を出す。
「知り合いか?」
「あ、……ああ」
トーマの額から汗が流れる。
「海一族の司祭様だ」
その司祭の表情は、よく見えない。
「トーマよ。大変なことになったな」
「なぜ、ここに、」
「騒ぎを聞きつけて駆け付けたんだよ」
海一族の司祭が云う。
「儀式を守るのが私の役目だ」
「そう、ですよね……」
トーマが云う。
「表にいた裏一族は倒しました」
「よくやった」
「すべての元凶は裏一族だったのです。もう生け贄は必要ない」
「ああ」
「でも、……この魔法陣は」
「すでに発動しているよ」
司祭が手を伸ばす。
司祭の横の、大きな石。
台座。
ふたりは見る。
そこに、何かがある。
何か、が、横たわっている。
誰か、……人。
「それは、いったい……」
アキラも眉をひそめる。
ここ最近のものではない。
どれぐらい時が経ったのか。
それさえも判らない、人だった、もの。
そして、
その台座の向こうに、
「まさか、」
アキラは目を見開く。
そこに、
「マユリ!!」
動こうとしたアキラに、司祭は手を上げる。
アキラは、その足を止める。
ふたつの台座。
横たわるものと、マユリ。
「なぜ、マユリがここにいる!」
「アキラ!」
トーマもそれを制止する。
「あの子は山一族の者なのか」
「そうだ」
マユリは動く様子がない。
が、生きてはいる。
眠っているのか。
カオリと同じように。
「さあ」
司祭が云う。
「もうひとりの生け贄はどうした?」
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