TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」40

2018年03月02日 | T.B.1998年

 ほのかな灯りが揺れる。

 足元には、淡く光る魔法陣。

「トーマ」

 アキラが声を出す。

「知り合いか?」
「あ、……ああ」

 トーマの額から汗が流れる。

「海一族の司祭様だ」

 その司祭の表情は、よく見えない。

「トーマよ。大変なことになったな」
「なぜ、ここに、」
「騒ぎを聞きつけて駆け付けたんだよ」
 海一族の司祭が云う。
「儀式を守るのが私の役目だ」

「そう、ですよね……」

 トーマが云う。

「表にいた裏一族は倒しました」
「よくやった」
「すべての元凶は裏一族だったのです。もう生け贄は必要ない」
「ああ」
「でも、……この魔法陣は」
「すでに発動しているよ」

 司祭が手を伸ばす。

 司祭の横の、大きな石。

 台座。

 ふたりは見る。

 そこに、何かがある。
 何か、が、横たわっている。

 誰か、……人。

「それは、いったい……」

 アキラも眉をひそめる。

 ここ最近のものではない。
 どれぐらい時が経ったのか。
 それさえも判らない、人だった、もの。

 そして、

 その台座の向こうに、

「まさか、」

 アキラは目を見開く。

 そこに、

「マユリ!!」

 動こうとしたアキラに、司祭は手を上げる。

 アキラは、その足を止める。

 ふたつの台座。

 横たわるものと、マユリ。

「なぜ、マユリがここにいる!」
「アキラ!」
 トーマもそれを制止する。
「あの子は山一族の者なのか」
「そうだ」

 マユリは動く様子がない。

 が、生きてはいる。
 眠っているのか。

 カオリと同じように。

「さあ」

 司祭が云う。

「もうひとりの生け贄はどうした?」



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